直近2,3年で技術が急速に進化し、注目を集めているVR(仮想現実)技術。
Oculus RiftやPlaystationVRが発売される2016年は、いよいよVRが消費者に受け入れられ、本格的に普及するとみられています。

とはいえまだまだ黎明期であり、発展途上にあるVRは、今後どのように進化し、私たちの生活をどう変えていくのでしょうか。

6月25日、26日の二日間にわたり、天王洲アイルにて開催されたサムライイキュベート主催「SAMURAI ISLAND EXPO'16」にて、日本国内のVR市場の最前線で活躍する3社による「VRの未来」をテーマとしたトークセッションが開催されました。
今回はその様子をお届けします。

登壇者紹介

DOKIDOKIInc 井口尊人氏(モデレーター)

立命館大学卒業後、1996年にジャストシステムに入社。1999年に独立してデジタオを設立。2008年7月から2012年11月5日まで頓智ドットCEO。2012年12月1日から2014年5月までTelepathy最高経営責任者。2014年6月からTelepathyフェロー。2014年7月からDOKI DOKI, INC.最高経営責任者。

クラスター株式会社 加藤直人

「引きこもりを加速する」をコンセプトとした、VR対応のバーチャル集会アプリ「cluster.」を開発するクラスター株式会社Founder & CEO。 京都大学理学部卒業、同大学院中退。デザインおよびフロントエンドプログラミングを担当。

株式会社コロプラネクスト 山上慎太郎

ベンチャー支援を行う株式会社コロプラネクストCEO。
2015年12月には世界最大級のVR専門ファンドとなる「Colopl VR Fund」を設立。

Mydearest株式会社 千田翔太郎氏

VRコンテンツを制作するMydearest株式会社COO。

VRの本命プラットフォームは?

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DOKIDOKIInc 井口尊人氏

井口氏:
そもそもVRとは何なのか、どういうプレイヤーがいて、どういうアプリが流行っている教えてください。

千田氏:
VRというのは今の段階ではヘッドセットで仮想世界にとんでいただくものです。
今は視覚聴覚だけですが、触覚とか嗅覚とか、第六感まで含めることができます。

今メインなのはオキュラスですね。あとはPlaystationVRです。
ローエンドだと、段ボールで作るハコスコっていうのがありますね。

井口氏:どういうハードが勝ち組になるのでしょうか?

山上氏:いや・・・わからないですね。ハイエンドのヘッドセットはオキュラス、HTC Vive、PSVRです。
3月時点ではオキュラスなんですが、今はHTCがガンガン出荷されていて逆転するんじゃないかなと。

HTC、SONYはハードを作る経験がありますが、Facebookはないですからね。

井口氏:スマホを利用するVRはどうなんでしょうか?

千田氏:素人目には格段に違うことはないと思うんですが、細かいユーザー体験としてはオキュラスの方が断然上ですね。

井口氏:大事なのはハードじゃなくてソフトやOSの部分だとも言われていますが、プラットフォーム的にはどこが勝つんでしょう?加藤さん。

加藤氏:VRは、ハイエンド、ミドルエンド、ローエンドの3つに分けて考えた方がいいと思います。
ハイエンド(オキュラス、HTC、PSVR)は高性能なゲーム用のPCを使ったデバイスですね。
ハイエンドのデバイスって実は3社そんなに大差ないんですよね。
となると、結局どういうコンテンツがあるかで消費者は選びますよね。
その点では、オキュラスが苦戦を強いられているなと思います。

HTCVIveはHTCとバルブ社と組んでいるバルブ社はPCゲームの最大プラットフォーム「スチーム」を持ってますし、SONYもパブリッシャーを抱えてますよね。
ゲーム業界で一番成功したと言われているPS2が1億5,000万台売れていて、PS4はPS2を上回る速度で売れていて、年内で5,000万台はいくと予想されています。
その5,000万台のうちの1割だけが買ったとしても500万台。

年内だと、HTCとオキュラスは100万台いかないと言われていますが、PSVRは500万台いけば、結構なプラットフォームになるかなと。

VRのキラーアプリはあるのか?

井口氏:とにかくいろいろあって消費者にはわかりづらいなというのがあります。
では、VRのキラーアプリはあるんでしょうか?
もしないんなら、どういうものをやるべきなんでしょうか?

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Mydearest 株式会社 千田翔太郎氏

千田:キラーアプリは、スチームにある、blushというアプリじゃないですかね。
3D空間上に絵を描けるんです。
自分で作った物理法則を無視した世界を歩き回れるっていうのはVRならではだと思います。

山上氏:
今のところはゲーマーが多いので、ゲーム系コンテンツですね。FPSやマリオなど、なにかしら面白いゲームが出てきたらいいですね。
いまは早いかもしれませんが、ソーシャルも面白いんじゃないかなと思います。

加藤氏:
新しいプラットフォームって便利じゃないと使われないと思うんですよね。
皆さんVR高いから、もう少し値段が下がったら履けるんじゃないかとか言いますけど、5,000円でも売ってても買わない人は買わないですよね。
iPhoneが8万円でもみんな買うのは便利だからです。

VRにおいて、便利というのであれば、VR上での物作りというのは結構あると思います。
あとは山上さんも話されていたソーシャルに関してですが、弊社はバーチャル空間上で人と会うっていうのを開発しています。
画面越しではなく、距離感を再現して体験できるのはVRならではで、それがくる時代があるかなと僕は信じています。

歴代のプラットフォームの広がりに寄与したのって、ソーシャルだと思うんですよね。
人とつながるために広がってきた。VRもその一環として広がっていくのではないかなと。

日本のVRクリエイターが世界で戦うには?

井口氏:
グローバルに視点を置いたとき、日本のスタートアップやクリエイターはどう戦っていけばいいんでしょうか?

千田氏:
日本のコンテンツって独特なんですよね。
日本が活路を見出すとき、現実の3D空間とかそういうのではなくて、思いっきりアニメ系のコンテンツを突き詰めて、オタク系に振り切った方が突き刺さると思いますね。

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クラスター株式会社 加藤直人

加藤氏:
海外の人たちがつくるVRコンテンツっておおざっぱだと思うんですよね。すごい派手でクールというかおおざっぱなものが多い。
スマホのコンテンツでいわれているのは、欧米はクールで、日本はキュート系、アイドルのコラボで売れる場合が多いんですよね。

弊社もバーチャル上でイベントやった時に、オキュラスのCEOが参加していて同じ質問をしてみたんですよ。そしたら、「日本には日本にしか作れないものがある、わかるだろう?」と言われました(笑)

あとは、シニア向けのサービスも台頭しているので、日本国内で貯めたノウハウを世界にもっていくのはアリだなと思います。

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株式会社コロプラネクスト

2020年のVRは?

井口氏:普段はスマホを使ってアプリを利用していますが、今後はネットワークも無線になって、デバイスそのものもサングラスつけているみたいになった時、我々はどうなっているんでしょうか。

千田氏:本当に、マジックリープ(ARのコンテンツ制作を行う企業)の動き次第っていうのはあると思っています。
日本のエンジニアってクレイジーなコンテンツいっぱいいるんですよね。
もし網膜に直接投影できるようになると、やばいことかんがえる人とか出てきますよね(笑)

オリンピックイヤーになると、観光客はARが投影するグラスをつけていたり、車のガラスにもナビが表示されていたり、テクノロジーが日常に溶け込んでいて人がテクノロジーと意識しないようになっていくと思いますね。

加藤氏:
VR、AR、MRの違いって、「目に入ってくる情報をどれだけハックしているか」というところなんですよ。
目に入ってくる情報を100%ハックするのがVR、それを50%におさえて現実と混ぜ合わせるのがAR、MR。
ただ、現実の世界に合わせるのって結構大変でVRより難しいんですよね。

2020年には、入力インタフェースに関しては「ボイス」がくると思います。
ボイスが入力の基本になっていく未来は近いうちにくるかなと思います。

あと、現状のVRのめんどくさいところって、動かなきゃいけないところなんですよね。
ほとんどのVRが手を動かさないといけなくて。
手の動きとかシャットアウトして、脳に直接ハックできるようになる世界が30年後にはくるかもしれないなと思っています。