BtoBビジネスにおけるマーケターの役割とはなんでしょうか。それは企業業績を向上させることです。そのためにWeb上はもちろん、展示会やイベントへの出展などを含めて多くの企業や担当者と接触し、リードを獲得し、見込み客を増加させる施策を数多く実施します。

しかしリードを多く獲得することだけに忙殺され、本来の役割である企業業績の向上に直結した仕事ができているのかが不安になることもあるかと思います。

本記事ではマーケティングオートメーション6年連続シェアNo1の株式会社シャノンの監修を受け、今後のマーケターに必要なKPIの持ち方、さらには有効な商談を創出するための「アカウントベースドマーケティング」という考え方について解説します。

マーケターの本来の役割は企業業績の向上

2016年1月に株式会社シャノンが実施した「国内BtoBマーケティングの現状と課題に関するアンケート調査」によると、マーケティングKPIとして最も設定されている指標は「獲得したリード数」です。

現在、採用しているKPI.png

BtoBにおけるリードとはユーザーデータを取得する初回接触ポイントを指すことが多く、主に「ホワイトペーパーのダウンロード」、「セミナー参加」「展示会での名刺交換」などが挙げられます。
企業として業績を向上していくために、自社と接点を持つユーザーをまず増やし、見込み客を獲得するという流れがBtoBマーケティングの一般的な流れとなりつつあります。

しかし、同調査によるとBtoBマーケティングに従事する方の課題感として最も多い回答は「販促、マーケティング活動の効果が見えない」という意見でした。

現在、抱えている課題.png

「獲得したリード数」という定量的なKPIを設定する企業が多いなか、「マーケティング活動の効果が見えない」と感じる背景として、「リード数は達成しつつも、商談、売上に寄与したリード」の計測には至っていないことが挙げられます。
Web広告コンテンツマーケティングを中心としたユーザーとの継続的な接触により、リードを獲得するイメージが湧く企業は多いため、KPIとしてリード数を設定するものの、なかなか収益という形で効果が計測できていないことが予想されます。

現状としてマーケターの活動はリードを獲得することが中心となっていますが、本来マーケターが追うべきは企業業績の向上です。

リード中心ではなく、商談創出中心に

企業業績の向上を達成するためには、設定するKPIを「獲得したリード数」から「商談数」や「獲得したリード数からの商談発生率」に移行する必要があります。

先述の調査でも今後設定すべきKPIとして「獲得したリード数からの商談発生率」を挙げる企業が最も多くなっています。

今後、採用を考えているKPI.png

とにかくリード数を増やし、ナーチャリング活動を行っていくことも重要です。しかし、マーケターにとっては企業業績を向上させるために「いかに商談を創出するか」がより重要なテーマとなります。

特にマーケティングオートメーションを導入している場合は、その機能を有効に活用し、リード獲得単価、有効リード数、リードのスコア数値などを分析して、リードの質を高めることも重要となってきます。

特に導入までのリードタイムが長い商材、リプレイスのタイミングが限られている商材、受注金額が高額な商材などの場合はターゲット企業に対して組織的、計画的なマーケティングも求められます。最近ではマーケティングツールなどのSaaSサービスベンダーでも大企業向けに営業やマーケティングを行う専門チームを立ち上げるケースが増えています。

リード至上主義を脱却し、企業業績を向上させるために必要となる考え方が「アカウントベースドマーケティング」です。

良質な商談を創出するための「アカウントベースドマーケティング」

アカウントベースドマーケティングとは「自社のターゲット企業に対して、顧客理解に基づいた戦略的な組織的アプローチをするマーケティング手法」のことです。
狙うべき企業や市場が明確に決まっている場合、市場に対して広く網を張るようにマーケティングを行ったとしてもターゲット外のリードや商談が発生してしまい、営業担当の工数を無駄に発生させてしまったり、広告費もなかなか低減しないということがあります。

そこでアカウントベースドマーケティングという考え方においては、ターゲットとなる企業(アカウント)をベースにマーケティング施策を実行し、情報を収集し、個別最適なアプローチをとることが求められます。

最近ではアカウントベースドマーケティングを実行するための機能がマーケティングオートメーションの一部では実装されはじめ、今後利用するケースが増えるかもしれません。

具体的には、ターゲットとなるアカウントごとに自社サイト上で表示させるコンテンツ(LP、バナー、CTAなど)を最適化させたり、オフラインでの接触履歴を記録しておくことでチーム内で共通認識を持つようにするなど、アカウントをベースとして様々な施策を打つことで大規模な商談を成功に繋げる可能性を高めることができます。

しかし、アカウントベースドマーケティング自体は決して新しい概念ではなく、予てからトップセールスマンが行っていたことを組織的に、計画的に実行しようということなんです。

なぜ今アカウントベースドマーケティングなのか

アカウントベースドマーケティングを組織的、計画的に実行する必要が発生してきた背景には次の2点が挙げられます。

顧客の購買行動に変化が起きている

対象となるアカウントである顧客や、見込み客は多くの場合で企業のWebサイトを参考に発注先を検討しています。顧客は自らWeb上で情報を収集し、比較し、発注先を検討しています。そのためターゲット企業が自社のWebサイトに来訪している情報を取得し、適切なアプローチを取ることで、タイミングを逃さないようにする必要があります。

営業とマーケティングが協業できるテクノロジーの進歩

マーケティングオートメーションの台頭により、営業とマーケティングの2つの機能は密接になりつつあります。マーケティングの担当領域としては商談を創出し、営業が提案やクロージンブを行うのが通常でした。現在ではマーケティングオートメーションを有効に機能させることで、営業担当が持つ情報をもとにマーケティング施策を検討することが可能です。

特にトップセールスマンの売り方や商談を行う時期などのシナリオをマーケティングオートメーション上でも実現することにより、営業とマーケティングの2つの機能が協業して、一つのアカウントを狙い撃ちすることができるようになっています。

アカウントベースドマーケティングで行うべきこと

アカウントベースドマーケティングで行うべきことは様々あります。ここでは代表的な事項をまとめます。

ターゲット企業の選定

まずはターゲットとなる企業を選定する必要があります。そもそもアカウントベースドマーケティングを実施するターゲット企業として適切なのは「大規模な商談となりえるかどうか」です。例えば、SaaS系のサービスベンダーであれば、一挙に1,000アカウントの導入をしてもらうなどの大規模な商談です。また人材系の企業であれば、年間採用人数が100名を超えるような契約だったり、1件あたりの発注額の大きい製造メーカーなどであればすでにターゲットの企業が選定されているケースが多いですよね。

反対に販売単価が低く、まずは多くの商談を創出する必要があるという場合は無理にアカウントベースドマーケティングを実施する必要はありませんが、自社のターゲット企業が市場にどれくらい存在しているのかを把握すること自体は重要です。もちろん、同じ商材で大企業向けの専門チームを持つ場合は検討すべきでしょう。

ターゲット企業ごとの情報整備

次に、自社内外で持ち得るターゲット企業に関する情報を整備します。決済のタイミングや稟議の流れはもちろん、社内で持つ名刺を集め、マーケティングオートメーションなどのツールに登録し、個人ごとにアプローチできるようにしておきましょう。また過去の資料ダウンロード客やお問い合わせ客のデータと突合し、ユーザーごとのアクション履歴も整理しておきます。

abp.png

Web来訪者へのフォロー

多くのマーケティングオートメーションツールではWebサイトに来訪したユーザーに対してCookieを付与し、ユーザーのトラッキング情報(行動履歴)を取得することができます。またアカウントベースドマーケティングではどの企業が来訪しているかを把握する必要があるため、ユーザーのIPアドレスから企業名を取得することも必要となります。

ユーザーの行動履歴と企業名のデータを掛け合わせて、Web来訪者に対して最適なコンテンツを表示させることにより、Web上であってもアカウントに対して最適なフォローを実践することができます。

例えば自社のターゲットとするアカウントであり、事例紹介ページや価格ページを閲覧し、過去に資料請求をしているユーザーは確度が高いと言えます。こういったユーザーに対してはユーザー会への招待を促すバナーポップアップを表示させ、オフラインでの接触に誘導するなど、確度をさらに高める施策をとることができます。

アウトバウンドフォロー

BtoBの場合、顧客の意思決定プロセスは異なります。そのため、適切なタイミングで担当営業による電話やメール、商談機会設定などのアウトバウンドのフォローが必要となります。

この時に重要なことは顧客のストーリーを中心にアウトバウンドを実施することです。
アウトバウンドのフォロー、つまり電話やメールはプッシュ型の施策となるため、顧客の意図しないタイミングで実施すると顧客のストレスとなる場合があります。

そのためにマーケティングオートメーションなどのツールを用い、アカウントごとの情報を整備し、顧客のストーリーを設計し、マーケティング担当と営業担当が連携して行動することが重要となります。

企業、業種、役職に応じたコンテンツの露出

ターゲットなる企業の業種や役職に応じて、各種コンテンツを露出します。例えば、リターゲティング広告として表示すべきクリエイティブやコピー、または訴求コンテンツは業種や役職によって様々な分類ができます。ここではクリック数を追い求めるよりも、ユーザーに対して最適な広告を表示させることにより、自社のことを忘れないように、または関心や興味を冷やさないようにします。

まとめ

獲得するリード数をKPIに設定し、達成し続けたとしても企業の業績向上に直結するとは限りません。リードという「プロセス」ではなく、企業業績という「目的」から発想をスタートさせた施策を実施することが今後のマーケティングには求められるのかもしれません。

またアカウントベースドマーケティングという考え方や手法を用いる場合は、自社の論理に顧客の動きを紐づけるのではなく、顧客の論理に合わせたシナリオを設計する必要があります。顧客の情報を取得し、整理し、最適な施策を実施することで良質な商談や案件を獲得する可能性が高まります。

大規模な商談を獲得する必要があるマーケティングの担当の方は、ぜひ一度アカウントベースドマーケティングの考え方や手法を導入してみてはいかがでしょうか。

アカウントベースドマーケティングならシャノン

本記事を監修いただいた株式会社シャノンの「SHANON MARKTING PLATFORM」では、アカウントベースドマーケティングに必要な機能が網羅されています。

function01.png

ターゲットとなる企業ごとの情報を整備する必要があるアカウントベースドマーケティングを円滑に進めるため、企業単位でリードカバレッジ、行動、認知状況を一目で把握することが可能です。

また名刺のデジタル化を通した担当者情報の把握、Web来訪者のIPアドレスを元にした企業名の取得、ターゲット企業がWeb上に来訪した際に担当営業へのプッシュ通知機能など、アカウントベースドマーケティングに必要な機能が網羅されています。

アカウントベースドマーケティングについて詳しく知りたい方は以下のリンク先よりご確認下さい。

>>>シャノンのアカウントベースドマーケティング機能を見てみる