規模や業種問わず商売を行う上で、お客様がどのような人かという情報は常に押さえておいたほうがいいでしょう。
町の八百屋さんでも「○○さん家の奥さんは、先週にんじんを買ってくれた」という顧客情報をもとに、次の来店時にはおまけをつけたり、毎度ありがとうございますと声をかけるものです。

インターネットが普及するまでは、顧客の情報は帳簿であったり、個人の記憶であったり、人の力に頼る管理方法がとられていました。
そのようなアナログの管理では検索するのに手間と時間がかかるだけではなく、帳簿の喪失や特定の人が死んでしまって情報が失われてしまうという欠点がありました。
現在では、PCのシステムを利用して、検索しやすく、また情報を半永久的に保存できる顧客管理システム(CRM)が浸透しています。

今回は「CRMを導入したいけど、どこから手をつけていいのかわからない」「大きな買い物だし、失敗したくないけど何に気をつけたらいいの?」という方へ、CRMを導入するポイントをステップに合わせて説明します

CRMとは

そもそもCRMとはどのようなものなのでしょうか。

CRMは「Customer Relationship Management」の略で、直訳すると「顧客関係管理」となります。
顧客との接点を統合的に管理する手法を指します。

CRMでは、顧客の氏名、年齢、住所だけでなく、購入・利用の履歴や問い合わせの内容などのデータを収集し、管理を行います。

製造業であれば、納品先がいつもどの時期にいくつ商品を購入しているかをCRMで管理すれば、次回の購入の時期に合わせた準備や営業を行うことができます。
実店舗を経営している場合、ほとんどの従業員は期間をおいて来店したユーザーのことは忘れてしまいますが、CRMで管理しておけば、たとえ数年ぶりの来店でも以前の来店情報を踏まえた対応が行えるはずです。

顧客対応の属人化をなくすために有用なCRMですが、実際に導入しようと思っても、どれを選べばいいのかわからない方が多いのではないでしょうか。
現在、多数のCRMツールがリリースされており、高機能なものも豊富です。
ですが実は機能性よりも「社内の仕組みと共存できるかどうか」がCRM導入成功のポイントなのです。

社内の仕組みと共存できなければ、CRMを導入しても活用できる可能性は低い

CRMは顧客サービスを向上させ、業績を伸ばすのに一役買うツールです。
しかし、実際導入してみたら、「いちいち顧客とのやり取りを記入するのが 面倒くさくなって情報自体が集まらなかった」「高いツールを入れたわりには効果が見えなかった」というように、運用にのらない場合も少なくありません。

運用にのらない理由は「会社に合わなかった」の一言に尽きます。
CRMを運用に乗せるには、まず自社の状況を確認し、整理することが大切です。

CRM以外でも顧客情報の収集・管理はできる?

お客様と取引している企業であれば、何かしらの方法で、顧客情報の記録、管理はされているでしょう。
請求書の送付には顧客の住所が必要ですし、営業マンはお客様の連絡先を知っておかなければいけません。

CRMでなくても、顧客情報を収集・管理するシステムをすでに社内で利用していないでしょうか。
以下より、顧客情報の収集・管理に使えるシステムの例を挙げてみます。

SFA(営業支援システム)

営業が「何を」したのかを記録するツールでスケジュールの管理や日報の作成が行えます。顧客との接点のひとつである営業マンの行動内容を記録するのでCRMと混同されがちですが、CRMが顧客へのサービスの向上を目的とするのに対してSFAは営業活動の効率化を目的としています。

例:SalesCloud(セールスフォース)、Dynamics(Microsoft)
※どちらもCRMとSFAの両面を持ったツールです

名刺管理システム

顧客や取引先の名刺をスマートフォンで撮影し、データ化して管理するシステムです。

例:Sansan(Sansan株式会社)、SmartVisca(株式会社サンブリッジ)

POSシステム

POSはPoint of saleの略で物品販売の売上実績を単品単位で集計すること。アパレルやスーパーマーケットの多くはPOSシステムの入ったレジを利用して、商品の売り上げ管理を行っています。

例:WILLPOSシリーズ(東芝テック)、TWINPOSシリーズ(NECインフロンティア)

ERPなどの基幹業務システム

ERPとは企業のヒト・モノ・カネの動きを管理するシステムです。生産管理を効率化される目的で使われることが多く、製造業や物流など多くの業種で導入しています。他にも運送業であれば、TMS(輸配送向け物流システム)を利用しているなど、業種や企業によって独自の基幹システムを運用しているかもしれません。

CTIシステム

電話とコンピュータの統合システムです。 電話がかかってきた際に顧客の情報をパソコン上に表示させるものです。

例:Genesys、CTstage(OKI)

ホームページ

インターネット上で公開しているWebサイトのことです。ホームページによっては問い合わせフォームや見積もりフォームなどで顧客情報を得ることがあります。

SNS

ソーシャルネットワーキングサービスの略。コミュニティ型のネットワークサービスで、コメントなどで顧客ともコミュニケーションを行う場合もあります。

例:Facebook、LINE、Twitter、

FAQサイト

ユーザーからの質問に答えるサイトで、過去にあった質問を閲覧することが可能です。メーカーが設置している場合が多く、顧客からFAQサイトで商品に関する質問を受け付けます。
このシステムを導入する上で注意したい点は、CRMを導入することで逆に顧客管理に重複や漏れができないかという部分です。

紹介した例は全て、顧客との接点を持ち、データを管理できる機能を持ちます。
POSシステムは顧客の売り上げ履歴を記録していますし、ERPであれば、顧客ごとの商品の納入履歴を管理しています。

それらの情報とCRMを別に管理してしまうと、同じ情報を2ヵ所で入力しなければならなかったり、片方の情報だけ古いままで業務に支障が出たりしてしまいます。
また、ホームページやSNSで収集した情報が個別に管理されてしまって、CRMを利用した顧客へのサービスから抜けてしまう場合があります。

これらのサービスとCRMをマッチングさせるのに重要なポイントは3つです。

1.社内のシステムで顧客情報を管理していないか
2.もし管理しているなら、その顧客情報は何にために利用しているか
3.CRMに社内のシステムと連携(データを同期する)する機能があるか、連携でもともと利用していた用途に不都合は生じないか

この点を押さえてCRMを選択しましょう。すでに社内で挿入しているシステムと連携することで、さらにサービスの質を充実させることもできます。

【CRMと連携させることでできるサービスの例】
・顧客の情報を見ながらSFAで営業が提案する内容を顧客に合わせたものに変更。顧客に合わせた営業活動で受注率アップ。
・POSの売り上げデータと顧客情報を連携させ、常連客を抽出。常連客のみにダイレクトメールを配送して、さらなるリピートを狙う。 
・CTIシステムと連動して、コミュニケーター(オペレーター)が顧客の購入情報を見ながら対応。顧客満足度を向上。