アブダクション

アブダクションの基本的な論理展開

アブダクションとは、仮説形成とも訳されるもので結果から原因を推測し、観測事実に対して説明を見つける手法です。アメリカの哲学者であるチャールズ・パースが、アリストテレスの論理学を基にして提唱した論理展開法で、起きた現象に対して仮説を構築して論理的に説明していく論法として唱えました。

まず以下の例文を見てください。

例:朝起きると庭の芝生が濡れていた。雨が降ると芝生は濡れる。だから昨晩は雨が降ったのだろう。

この文章をアブダクションに沿って分解すると、以下のようになります。

朝起きると庭の芝生が濡れていた→目の前の現象
雨が降ると芝生は濡れる→普遍的事象
だから昨晩は雨が降ったのだろう→仮説

芝生が濡れていた理由は、雨が降ったこと以外にも「朝早くに誰かが水をまいた」「夜露で濡れた」など複数考えられます。そのため「普遍的事象」が正しくても「仮説」に何を当てはめるのかは推論者自身の閃きにかかっていると言えます。

これまでにご紹介した帰納法・演繹法とは異なり想像力が必要となる論法ですが、ある事象をもとに複数のアイデアを出してプレゼンなどの資料にまとめる際には有効な手段です。
  

アブダクションを使いこなすには

アブダクションを使いこなすためには、何よりも想像力が必要となります。帰納法・演繹法とは異なり非線型の思考法であるため、始めのうちは習得がなかなか難しいこともあります。

しかし、例えばある企画に対して突然思い付いた案を如何に説得力を持たせて説明するか、がベースとなっている推論法です。あまり肩肘を張らずに「そもそもどこからこの案を思い付いたのか」「似た事例はないか」「案を支える普遍的事象がないか」などを探し、先にご紹介した例文のように文章を組み立ててみましょう。
  

論理的思考を高めるためには

これまで説明してきた帰納法・演繹法・アブダクションは、論理的思考の基礎です。これらの論理展開を1つ論理的思考としてまとめ上げるためには、いくつか意識するべきことや覚えておくべきことがあります。

事実と意見の違いを意識する

論理的思考を身に付けるためには、事実と意見を明確にわけて、意見がどのような事実から支えられているか意識する必要があります。帰納法・演繹法・アブダクションというのは、いずれも事実と意見のつながり方を説明したものです。

単純な例ですが、「○○の開発の進捗率が70%なので、全体の進捗に3日ほど影響が出そうです」といった場合、「全体の進捗に3日ほど影響が出そうです」が意見であり、「○○の開発の進捗率が70%」というのが事実です。

こうして事実と意見を明確にすることで、議論の検証が容易になります。上記の事例ですと、そもそも進捗率70%が正しいのかどうか、あるいは進捗率70%が本当に(1日や2日ではなく)3日の遅れにつながるのか、といったことを検証することで、意見が正しいかどうかを証明することが可能です。もし事実がなければ、まず意見の根拠を掘り起こすことから始めなければならず、議論の生産性が落ちてしまいます。

こうした観点からも、事実と意見の区分が重要と分かります。

参考:
悪文と良文から学ぶロジカル・ライティング - 事実と推測を区別する|ITpro
  

MECEを意識する

事実や意見を細分化する時は、「MECE(ミーシー)」を意識するべきです。MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「漏れなくダブりなく」という意味です。事実に重複や抜け漏れが生じないようにすることがMECEの眼目です。

MECEとは論理的思考における基本的な思考ツールであり、抜け漏れや重複を防いで物事の全体像を把握するための概念です。MECEを意識することで、論理的思考能力が格段に向上します。

参考:
MECEって?ロジカルシンキングの基本的考え方を理解して思考の抜け漏れを防ごう|ferret
  

ロジックツリーを使いこなす

MECEを使って思考を整理するためのツールが「ロジックツリー」です。MECEに基づいて事実や意見を細分化すると、大項目が中項目にわかれ、中項目が小項目にわかれ……といった形で、ツリー上の図を描くことができます。これがロジックツリーです。

ロジックツリーを用いて各項目を細分化することにより、問題の本質や解決策を絞り込みます。また、他人に意見を伝える際にもロジックツリーを意識することで、意見が導き出される過程を明らかにし、結論に明快さと説得力を与えることができます。

参考:
ロジックツリーとは|ferretマーケティング用語時点
  

フレームワークを活用する

MECEに基づいた問題の切り分け方には、いくつかのパターンがあります。最も一般的なのが「5W1H」と言われるものです。出来事を説明する際に「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「なぜ(Why)」「何を(What)」「どのように(How)」を情報として加えるとわかりやすい、という経験則です。

問題の切り分け方のパターンのいくつかは、方法論として確立されています。これらの方法論を「フレームワーク」と呼びます。以下のページで、ビジネスシーンに役立つ思考のフレームワークをいくつかご紹介しています。

参考:
フレームワークとは〜思考時間を短縮して成果を上げるビジネスフレームワーク9選|ferret

こちらのタイトルにいみじくも表現されているとおり、フレームワークは論理的思考の生産性を上げる手段です。数学の公式のようなものですので、ぜひ覚えておきましょう。
  

論理的思考力を訓練するおすすめ本

フレームワークという概念が示しているとおり、論理的思考を身に着けるためには既存のパターンを理解しておくことです。そうした意味でも、論理的思考について説明された本を読むことは必要でしょう。

MECEやロジックツリーについても、紹介されている書籍の中でケーススタディとともに詳しく説明されています。もちろん、こうした名著を読んで満足するだけではなく、自分の仕事の中で実践してください。

参考:
論理的思考力を鍛えたい時に読んでおきたい書籍まとめ|ferret