社内で完結させられる内製(インハウス)が良いのか―
社外のリソースを活用する外注(アウトソース)が良いのか―
  
社内組織としてカスタマーサポート(以下CS)を運営している企業であれば、きっと一度は上記のような課題に直面したことがあるはずです。タイミングとしては、おそらくCSの組織を立ち上げる際や拡大させようとする時期が多いのではないでしょうか。

2017年2月28日に公開した記事、「成長企業は知っている!CS(カスタマーサポート)はプロダクトを支える生命線」にてカスタマーサポートチームの持ち方としてインハウス、アウトソースそれぞれのメリット・デメリットという内容について一部触れましたが、今回はその点について掘り下げていきます。

その中でも元々インハウスでサポートを行っていたテモナ株式会社(以下テモナ)が、アウトソースへの切り替えを試みてわかったこと、さらにはどういった判断軸によって今インハウスに落ち着いたのか、という点について、テモナの事業推進グループエグゼクティブマネージャーの栄(さかえ)が弊社のケーススタディをもとにご説明します。

ぜひ皆さんの業務のお役に立てれば幸いです。
  

CSとは?その役割とは?

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製品マニュアルや電話・メールでの問い合わせ窓口など、世の中にあるほとんどのサービスにCSは存在します。また、昨今ではTwitterなどのSNSやチャット、人工知能などを活用したサポートも目にする機会が増えてきました。

これらを自社のリソースで行うのが「インハウス」、社外のリソースで行うのがと「アウトソース」です。
  

インハウスとは

設備やオペーレーターなどを自社で用意し管理・運用することをインハウスと言います。

・メリット:
会社の理念や社風にあった社員を採用、教育し、自社独自の文化を体現することが可能です。また、お客様の声を直接聞くことができるため早いスピードで製品力を向上させることができます。

・デメリット:
オペレーターの採用、教育、設備準備など必要コストはその規模と比例して発生します。

  

アウトソースとは

設備やオペレーターを外部の企業に委託し運営することをアウトソースと言います。

・メリット:
オペレーターの採用、教育、設備に関しては全てアウトソース先の会社が用意しているため、自前で用意するよりも比較的コストを抑えることが可能です。

・デメリット:
委託先の会社と協働してお客様の対応にあたるため、インハウスとは異なり柔軟なルール改訂や配置変更は難しくなります。

  

テモナがインハウスとアウトソースを体験した話

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テモナは、BtoBの基幹システムを提供しています。CSチームでは製品の使い方はもちろんのこと、事業運営に合わせた最適な活用方法の提案を絶対に欠かせないサポートポリシーとしています。そのため、お客様の意図を汲み取り、その提案によって業務効率化や業績拡大につなげることが目指すべきゴールとなります。

テモナは、サービス提供開始時からインハウスでCSチームを運営してきました。契約数が順調に伸び、お問い合わせも1日平均150件程度まで増え、社内にノウハウが蓄積してきた段階で、業務効率化の観点からアウトソースへの切り替えを試みることにしました。

費用対効果、立地などの条件からアウトソース先の企業を決定し、何度も打ち合わせを重ねてオペレーター向けの研修スケジュールを組んだ後、実際にアウトソースのプレ運用がスタートしました。

ここで最初の課題として挙がったのは、弊社社員をエスカレーション担当としてアウトソース先企業に常駐させることで滞りなく運用をまわすことができるのか、でした。

テモナのサービスは企業の日常業務と密接に関わるシステムであり、緊急事案発生時は1分1秒でも早い解決を求められます。オペレーターだけで解決できない場合は開発担当との連携も重要となるため、アウトソース先企業への常駐ではなく、テモナへ出向という形でオペレーターの方々に来ていただき、私たちと一緒に働く中で知識を積んでいただきつつ仕組みを整えることとしました。

しかし、実際に運用を進めていくと、そのほかにも様々な課題に直面しました。

そして、その課題について触れる前に、今一度、下記内容を頭の片隅に置いておいてください。それが何かと申しますと、テモナのカスタマーサポートチームが業務を遂行する上で大切にしている内容となります。その上で、課題1~4に目をとおしてください。

テモナは、BtoBの基幹システムを提供しています。CSチームでは製品の使い方はもちろんのこと、事業運営に合わせた最適な活用方法の提案を絶対に欠かせないサポートポリシーとしています。そのため、お客様の意図を汲み取り、その提案によって業務効率化や業績拡大につなげることが目指すべきゴールとなります。

  

課題1:プラスαの提案が必要だと再認識

アウトソースを開始して、お客様から私の元に連絡がくるようになりました。

「最近聞いたことにしか回答してくれなくなりましたよね」
「希望を伝えるとできませんだけの回答をされてしまう」

これは弊社社員でも発生しうることなので、アウトソースだからという課題ではありません。

ただ、先述したとおり弊社のCSではお客様のお悩みや希望の本質を汲み取り提案をすることで、業務効率化および業績拡大につなげることを重要ミッションとして置いています。そのため、システム上できない場合であっても、その本質を把握して社内で蓄積しているノウハウを活用することで代替案を生み出し、提案する必要があります。

この重要ミッションを如何に自分事として捉えて頂くか、体現できるようにするにはどうしたら良いのか、教育の難しさを改めて実感しました。
  

課題2:自社サービスだからこそ生まれる「当事者意識」

テモナのCSはサービス立ち上げ当初から存在しているチームで、何かトラブルが発生した時は"最後まで責任をもって対応する"ことを大切にしています。会社の売上やリスクに直結するという意識はもちろん、契約店舗の業務、売上、場合によってはブランディングに対しても影響を及ぼしてしまう可能性があることを十分に理解しています。

アウトソース先の社員が受けた問い合わせで重要事案が発生した際、お客様の事業内容を理解していないことから「たくさんある中での1つの事象」という捉え方をしてしまった時があり、初動が遅れて危うく大事故になる事象も発生していました。
  

課題3:人が定着することの難しさを実感

アウトソース先の方をこちらで差配することは難しい場合もあります。私たちがお願いしていた時は経験年数の長いスーパーバイザー(以下、SV)に入って頂いていたため、そのSVの方と頻繁にコミュニケーションをとり改善を繰り返していました。しかし、SV以外の方はアルバイトや派遣の方も多かったため、サービス説明や知識教育時点で離脱されてしまう方も少なくありませんでした。

BtoCのサポートとは異なり、なかなか触れたことの無い業務でもあるため、少なからず抵抗はあるだろうと想定していました。ただ10名に教育して残るのは3名という現実に頭を抱えていました。
  

課題4:フレキシブルな運用変更が重要

CSチームでは現状のサポート対応に留まらず、業務効率化を目的とした課題解決やお客様へさらなる価値を届けるための企画立案などを普段から行っています。

例えば、CSチームのメンバー各々が現状について改善すべきポイントがないかを考え、チーム全体で実行・改善しています。新たな企画を生み出し、それを実行するとなると現状の業務量に+αで業務が増えてしまいます。そのため、都度状況に応じて利用するツールや仕組みの改善を図っています。

しかし、オペレーターの方々はアウトソース先企業の所属となるため、こちらが提案するツールを利用頂けない場合も……。その際はアウトソース先の営業担当の方へお願いをしますが、会社の規則などで定められている場合はやはり難しいため、弊社社員・アウトソース先オペレーターとで使うツールが異なったり、後から管理側で調整するなど管理側の工数が増えてしまうケースも何度かありました。