2017年3月3日の銀行法改正によって、FinTech(フィンテック)は次のステージに進むこととなりました。
今回の閣議決定により、銀行にはAPIを準備することを求め、APIに接続するスタートアップには登録制を導入するといった内容です。

ビットコインをはじめとする暗号通貨の登場、Suicaをはじめとする電子マネーの普及に加えて、今回の銀行法改正によってあらゆる銀行がAPIを提供することになれば、長い間*「現金主義」だった日本が現金主義を脱却することになり、Webマーケターとしても新しいビジネスを模索するきっかけ*になります。
そして、スタートアップの中でも、このAPIをどのように「料理」すればいいのか、その使い方に注目が集まっています。

今回は、銀行が公開するAPIとは何なのか、それによってどんな可能性が生まれるのかをご紹介します。

銀行が公開するAPIとは?

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FinTech(フィンテック)分野で注目されているテーマの中でも、今一番ホットな話題の中のひとつが、銀行によるAPIの公開です。

APIとは*「Application Programing Interface」の略です。
本来的にはプログラミングの際に使用できる命令や関数などの集合を意味する言葉で、要するに
ソフトウェアのプログラミングコードの一部をWebで公開することで、誰でも外部から利用できるような機能*と言えます。

誰でも簡単に外部から操作できるように、API公開時には通常*「仕様書」や「リファレンス」と呼ばれる取扱説明書も一緒に公開されます。
開発者は、この取扱説明書を見ながら自分のサービスにAPIを組み込む
「マッシュアップ」(Mushup)*と呼ばれる作業を行います。

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APIの中でも最も広く使われているものは*「GoogleマップAPI」でしょう。
Googleは他のアプリケーションやWebサイトでもマップを簡単に表示できるような
仕組みと説明書*を提供しています。
これにより、開発者は自ら地図を作らなくても、簡単に自分のソフトやサービスにGoogleマップを組み込むことができるのです。

同じように銀行がAPIを提供することで、いったいどのようなことが起きるのでしょうか。
例えば口座の残高を照会したり、明細を確認したり、振込や振替といったことも、銀行のサービスとは異なる外部のサービスを使って実現できるようになります。
スタートアップ企業や大手ネット企業がこうした銀行系APIを自社サービスにマッシュアップすることで、利便性の高いサービスが次々と生まれる可能性があるのです。

銀行APIによってどんなサービスが生まれているの?

通常のAPIと違って、銀行系APIやクレジットカード決済のAPIは「お金」を取り扱っているので、誰でも取り扱えるものではなく、ほとんどが登録した事業者にのみAPIを扱えるキーを発行する*「登録制」*を採用しています。

実際に、今回の銀行法改正によって、銀行APIに接続する企業は「電子決済等代行業者」として登録することがグランドルールになります。
FinTechでは利用者の資産情報をやりとりするので、クローズドにすることでミスや事故が起きないようにリスクヘッジをしているのです。

その上で、ネットベンチャーが銀行系APIを活用している事例がすでにいくつか存在します。

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例えば、みずほ銀行とLINEの提携によって生まれた*「LINEでかんたん残高照会」*というサービスがあります。
みずほ銀行のLINE公式アカウント上で、「入出金教えて!」「残高いくら?」などの専用スタンプを送ることで、その場で口座残高や直近の取引などを確認することができます。
暗証番号や照会番号などを入力する必要もなく、使用頻度の高いサービスをLINE上で簡単にやりとりできるようになり利便性が飛躍的に向上しました。

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また、マネーフォワードマネーツリーといったアプリでは、さまざまな銀行の情報を事前に入力しておくことで、アプリを立ち上げるだけで利用明細や残高などが自動的に同期されます。

スマートフォンだけでなくApple Watchなどのスマートウォッチで残高を確認することができるものもあり、また株や投資信託などの資産全体を一括管理してポートフォリオごとに表示し、資産の推移を確認することができるサービスも提供されています。

まだ払拭しきれていない問題点とは?

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銀行法改正を受けて、三菱東京UFJ銀行も*「MUFG{APIs}」*を公開することを発表し、これからも続々と銀行によるAPI実装が加速的に進んでいくことが予想されます。
銀行がAPIを公開すれば便利なサービスが生まれ、ユーザーの利便性はますます高まります。

しかしながら、セキュリティに関してはまだ課題が多く、万が一の際の責任の所在を明確にするための法的な整備も十分に整っているとは言えません。
そのために、まだ多くの企業がAPIの利用に対して慎重であることも事実です。

一歩進んでいるクレジットカード決済API

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一方、同じFinTechの分野でも、すでに一歩進んでいる分野があります。
それが、クレジットカード決済のAPIです。

従来、クレジットカード決済システムを利用するには、専門の業者による高額なコンサルティングを受けた上で、毎月の利用料を支払う必要がありました。

ところが、クレジットカード決済APIを提供する業者が参入してきたことで、景色がガラリと変わります。

APIの利用料は圧倒的に低いか登録料は無料で、月々の利用料もなく、決済の数%を手数料として支払うだけでよいというところがほとんどです。
これにより、簡単なプログラミングの知識さえあれば、誰でもクレジットカードによる決済を導入することができるようになったのです。

もちろん、リスクヘッジできるような体制はすでに用意されています。
例えば、実際にマッシュアップする際に決済ミスが起きないように、事前に開発環境でテストをしてから本番環境に移行できるようにしています。
開発環境専用のAPIキーは誰でも発行することができ、実装を確認した上で*「登記簿謄本」「開業届」*を提出すれば本番環境のAPIキーを発行することができます。

参考:
意外と知らないオンライン決済プラットフォームの7つの導入メリットとツール7選

銀行APIもこうした体制を導入することで、リスクを抑えることができそうです。

まとめ

実際に銀行のプラットフォームを介すことなく残高確認や送金などができれば、近い将来現金を持ち歩くことなく生活する日も近いのかもしれません。

銀行APIはFinTechの一翼を担うものですが、広い目で見れば他にも私たちの生活に密着しているファイナンス系サービスは多く存在します。
Web担当者の皆様はぜひ自社サービスにどう取り入れられそうか考えてみてください。

参考:
続々と参入!ファイナンス系Webサービス24選