1年前の常識すら通用しなくなっているテック業界の中で、最も注目を浴びている技術のひとつが*VR(バーチャルリアリティ)*です。
昨年だけでも、新しいデバイスの登場、スタートアップの勃興、プラットフォームの誕生で、さまざまなイノベーションが起こった分野です。

VR技術について話すと、まだまだ解像度が十分に高くなかったり、そのために処理を行う装置が整っていなかったり、重いヘッドセットをつけなければならないなど、課題が山積していると感じている人に出会います。
確かに、解決すべきことはたくさんありますが、一方でそれはVRがまだまだ進化する余地が残っていることを意味しています。

今回は、2020年までに起こるかもしれないVRに関する5つの予測についてご紹介します。
この数年でさまざまな技術が次々と進化を遂げていることを考えると、3年はVRの市場でも変化を起こすのに十分な長さです。
どんなことが起こるか、ぜひ想像力を働かせながら読んでみてください。

次の3年の間に起こるかもしれないVRに関する5つの予測

1. VRのコントローラーとして手を使うようになる

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スマートフォンが登場する10年も前に、PDAと呼ばれる画面にタッチペンを使って情報を入力するデバイスは存在していました。
しかし、スマートフォンが画期的だったのは、入力するためにタッチペンではなく指を使って操作することにあります。
できるだけ媒介するものを取り除いて気軽に扱えるようになることが普及の鍵だったのです。

VRにおいても同じような境遇が待っているかもしれません。
つまり、目をヘッドセットで覆った状態で気軽に操作できるようになるためには、手を使うのが一番手取り早いのです。
手の使い方なら、どんなひとでも知っているでしょうし、さまざまなジェスチャーやインタラクションによってVRに命令を下すこともそれほど困難には見えません。

ところが、ハンドトラッキング技術はここ数年で大きく進歩しています。
その代表格であるLeap Motionは2017年にバージョン2を発表し、モバイルVR端末において初めて180度視野の正確なハンドトラッキング技術を実装しました。
加えて、Microsoft社のHoloLensやMagic Leapのような*MR(Mixed Reality・複合現実)*のデバイスも操作を行うための最も基本的な手段として手を使うことが標準的になるでしょう。

しかし、これによって物理コントローラーが永久になくなるというわけではありません。
例えば任天堂のWiiのようなコントローラーはゲームに没頭するのに未だに大きな役割を果たしています。
ただし、ハンドトラッキング技術の発展や操作デバイスとしての手の便利さが浸透していくことで、物理コントローラーよりも手を使うのが標準になるのは、もう目の前のことです。

2. 目の動きをトラッキングするのが標準化する

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この2年の間で、本当にたくさんのVRヘッドセットが似たような機能を携えて登場しました。
しかし昨年、東京に拠点を構えるスタートアップのFOVEが初めてアイトラッキング技術を搭載したVRヘッドセット「FOVE 0」を発売しました(価格は599USD/2017年4月現在)。
FOVEのデベロッパーキットが発表されてから数ヶ月後、今度はVR大手Oculusがアイトラッキング技術のスタートアップを買収し、ハイエンドVRメーカーHTC Viveもデベロッパーキットを開発しました。
TechCrunchによればGoogleもこうした技術を開発する企業を買収済みです。

こうしたアイトラッキング技術が発展すれば、2つの点で普及に向けた動きが加速するでしょう。
ひとつは、ユーザーが向けている視界が識別できれば、今見ている方向だけにシステムリソースを割くことができるので、低解像度の問題も解決の一歩となるという点です。
そしてもうひとつは、ゲーム性が向上して没入感も高まり、目の動きを利用したエキサイティングなゲームやアプリケーションも生まれる可能性があるという点です。

ユーザビリティや没入感の点ではアイトラッキング技術というのは小さなことかもしれませんが、2020年にはあらゆるデバイスに標準装備されているかもしれません。

3. 特徴的な物理コントローラーとの組み合わせ

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VRやMRはバーチャルの世界と現実の世界を新しい形で融合する斬新な技術です。
没入感や操作性、ブランディングの観点で言えば、ゲームに合わせた物理コントローラーとVRを組み合わせることで無限の可能性が広がり、さらに没頭してしまうほどのことが体験できそうです。

例えば、ゾンビを撃つようなシューティングゲームであればマシンガンの形をしたガンコントローラーを持っていたほうが臨場感がありますし、釣りであれば釣竿をコントローラーにしてもいいでしょう。
スターウォーズの世界を体験できるなら、ライトセーバー型のコントローラーがあっても面白いかもしれません。

しかし、ここで浮上するのは、案の定技術的な問題です。
VRに関して言えば、コントローラーをトラッキングする、精確で安価なデバイス
MRでは、さまざまな3Dオブジェクトを認識できるような高性能なトラッキング用のカメラが必要です。

ところが、こちらの技術に関しても急速に進歩しつづけています。
Viveが発表した周辺機器Vive Trackerはあらゆる物体に取り付けることができ、カメラに取り付ければセルフィーMRビデオを撮ることも可能です。
また、Vuforiaのように3Dオブジェクトをトラッキングするツールも開発され、Microsoft社のHoloLensもサポートし、すでに利用可能です。

AR/VR/MRの技術的なイノベーションは、日々起こり続けています。
次の数年で3Dプリンターの普及によって物理コントローラーが簡単に作成できるようになれば、VRの世界はさらに広がるでしょう。

4. AIによる会話型UIがVRにもやってくる

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VRやMRの次の課題は、他のテクノロジーとどのようにして融合を図っていくかという点です。
現在もAI(人工知能)や機械学習、ディープラーニングなどの分野が日々進歩を遂げていますが、VRの世界でもAIは重要な役割を担うでしょう。
現在コンピューターやスマートフォンで行われていることとの境界線がだんだんとなくなってくる可能性もあります。

AmazonのAlexaやAppleのSiriなどを見れば分かるように、言語解析の技術も日々進化しているので、会話型のUIがVRにもやってくる可能性は十分にあります。
デスクトップやモバイルのブラウザで操作しているボタンやメニューなどの2DのUIは、何らかの会話に置き換えることができます(例えばFacebookアプリのアイコンをクリックするのは「Facebookアプリを開く」で置き換えられます)。

あらゆる操作がもっと直感的になれば、VRはさらに加速的に普及していくでしょう。
結局のところ、「手の動き」や「視線」「声」などの人間の基本的な機能に関係するものこそが最強のインターフェイスなのです。

現在のところ、PlayStation VRにヘッドホンが付属していることからも分かるように、ヘッドセット+マイク付きヘッドホン、という形でVRデバイスはオーディオとビジュアルに分離しています(TVからも音声出力可能です)。
しかし、技術が進んでいけば、ヘッドセットだけで音を聞いたり声を拾ったりする日が来るのも近いかもしれません。

5. MRデバイスはもっと小型化する

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2012年に登場し、プライバシーの観点から一般消費者向けの発売が頓挫したGoogle Glassですが、現在ではGoogle X Labで自動運転や無人自動車などの技術でも活用されています。
Google Glassはそのミニマリズム的外観もあって非常に人気でしたが、技術的にはMRデバイスはそれくらいに小さくすることはすでに可能です。

MRはARをもう少し広げたもので、他の技術ほど注目している人が少ないかもしれません。
UX上の点から言っても、没頭できるような体験にはなっていないという人もいます。

しかし、次の3年こそが重要です。
HoloLensは2019年にバージョン3をリリースすることが決まっており、ソフトウェアおよびハードウェアの両方の改善が期待できます。
一方、Galaxy Gear VRを発表しているSumsungは正式にMRのフラッグシップモデルを開発中であることを公式に発表しており、AppleやGoogleも水面下でさまざまな特許を取得したり、さまざまな企業と連携を始めています。

参考:
期待大。AppleがAR/MRメガネでカール・ツァイスと連携との噂|ギズモード・ジャパン