マーケティングにまつわる理論を理解することで、自社の戦略にも役立てられます。
ですが、いざマーケティング関連の書籍を開いても、内容が難解でなかなか手を付けられていないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、マーケティングに関連した学者3名とその功績を紹介します。
ブランド論の第一人者であるデービッド・アーカー氏やランチェスター理論を提唱したフレデリック・ランチェスター氏など、マーケティングに関連した著名な研究者は数多くいます。
こういった人物と理論を結びつけることで、より深い理解が進むでしょう。

1.マイケル・ポーター(Michael E. Porter)

マイケル・ポーター氏は1947年生まれの経営学者で、ハーバード大学教授を勤めています。
企業が他社との競争の中で勝ち抜いていくための競争戦略理論の提唱者として、名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。

ポーター氏は、市場全体の規模や、他社の動向、収益性といった業界分析を行い、業界や市場の動きを見極めることで競争に勝ち抜けると提唱しました。

そういった業界分析を行う上でおさえておきたいのが、ポーター氏が提唱した*「ファイブフォース(5つの脅威)」*という考え方です。

ファイブフォース(5つの脅威)とは

ファイブフォースとは業界で競争が起こる要因を5つに分類したもので、ファイブフォース分析(5F分析)を行うことで自社が所属している業界の構造や収益性を明らかにできます。
ファイブフォースは以下の5つの要素で構成されています。

1.新規参入者の脅威
2.代替品の脅威
3.買い手の交渉力
4.売り手の交渉力
5.既存競合他社

1.新規参入者の脅威

市場に新規参入してくる企業の脅威です。
例えば、宅食事業を展開しているワタミでは参入当初は好調に業績を伸ばしてきましたが、食品メーカーなどの競合他社が参入してきたことにより、苦戦を強いられています。

市場を独占していたとしても、新規参入者の脅威は恐るべきものでしょう。

参考:
ワタミ、身売り話も飛び出した三重苦の実態

2.代替品の脅威

提供している商品やサービスに成り替わる商品が登場する脅威を指しています。

例えば、本屋の場合、地域の他の書店以外にも電子書籍の配信サービスや図書館が代替品として利用される可能性があるでしょう。

3.買い手の交渉力

顧客の交渉力を指します。
BtoBのような顧客と一対一で向き合う必要があるビジネスだけでなく、BtoCであっても顧客から安い価格や高い品質が求められる商品やサービスは多いでしょう。

そういった顧客からの交渉も1つの脅威となります。

4.売り手の交渉力

原材料などの供給業者の交渉力を指します。
例えば、製造業であれば原材料の他にも燃料や電気といった要素によっても左右されるでしょう。

5.既存競合他社

自社と似た商品・サービスを提供している競合他社を指します。
当然、競争戦略の中で意識すべき相手でしょう。

参考:
5F分析
競争戦略の世界|マイケルポーターが提唱する業界内に潜む5つの脅威と3つの基本戦略
【3分でわかる】ファイブフォース分析

2.デービッド・アーカー(David Aaker)

デービッド・アーカー氏は、1938年に生まれ、UCB(カリフォルニア大学バークレー校)の大学院で教鞭をとっています。

ブランドは企業に収益をもたらすものであり、資産となり得るという価値観を社会に定着させたことが彼の功績としてあげられるでしょう。

現在では、企業買収時に行うデューデリデンス(第三者による企業価値の算出)においても、企業や商品のブランド名を算定して計上することが定着しています。
また、日本国内においても商品や製品だけでなく「動き」や「色彩」「音声」など、様々な商標が認められることになった背景には、ブランドそのものに価値があるというアーカー氏の主張があるでしょう。

参考:
デービッド・アーカー博士とブランド論を辿ってみれば
商標とは|特許庁*(2020年8月6日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)*

3.フレデリック・ランチェスター(Frederick William Lanchester)

フレデリック・ランチェスター氏は1868年生まれで、第二次世界大戦時に活躍した航空工学のエンジニアです。
学者ではありませんが、マーケティング理論を理解する上でおさえておきたい人物でしょう。

彼の名前が用いられている*「ランチェスター理論」*を知っている方も多いかもしれません。
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦時にランチェスター氏が編み出した「ランチェスターの法則」と、第二次世界大戦時にランチェスターの法則から進化した「ランチェスター戦略方程式」をミックスした戦略であり、数学に基づいた戦闘力の計算式を軸としています。

ランチェスターの法則には第1法則と第2法則があり、それぞれ一対一での戦闘と一対多数の戦闘を見込んだものとなっています。

【第1法則(一対一の戦闘を想定)】
戦闘力=武器効率(質)× 兵力数(量)
【第2法則(一対多数の戦闘を想定)】
戦闘力=武器効率(質)× 兵力数の二乗(量)

このように第1法則では、兵力だけでなく武器の効率をあげることで戦闘力が増します。
一方、一対多数では、兵力の数が戦闘力に直結するでしょう。

これは経済活動においても同様のことが言えます。
例えば中小企業であれば、一つの分野に特化することで効率をあげ、少ない兵力でも大きな戦闘力を持つことができるでしょう。

ランチェスターの法則に関して、こちらの記事で詳細を解説しています。よかったら合わせて参照してください。
参照記事:ランチェスターの法則とは?強者に立ち向かう差別化戦略の実践方法

参考:
[3分でわかる『ランチェスターの法則』「科学的な数理モデルで“弱くても勝つ”」 ]
(http://diamond.jp/articles/-/58178)

まとめ

マーケティングというとフィリップコトラー氏やT.レビット氏の名前が思い浮かぶ方も多いかもしれません。ですが、今回紹介したように経営学や航空工学を専門としている研究者の中には、のちにマーケティングにも利用されることとなる理論を提唱した人もいます。

特にデービットアーカー氏は現在にもつながるブランドの考え方を提唱しており、マーケティング担当者にとってもおさえておきたい人物と言えるでしょう。

また、今回紹介した人物の多くは存命であり、今後も新たな理論やフレームワークが発表されるかもしれません。ぜひ新しい理論を積極的に学べるよう、アンテナを高くして学習して行きましょう。