オフショア開発を活用する企業のCTO6名が語る「オフショア開発が失敗する理由」(DMM城倉氏・ランサーズ横井氏他)
IT企業の方であれば「オフショア開発」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「オフショア(Offshore)」は、直訳すると「岸(shore) から離れる(off)」となり、IT界隈ではシステムやアプリ開発などプログラミング業務を海外の開発会社に委託することを指す言葉として使われています。
日本は世界から見ても「人材不足」が大きな課題となっており、特にエンジニア不足は深刻なようですです。
エンジニア採用に頭を抱えている採用担当者も少なくないのではないでしょうか。
参考
人手不足な職種、日本1位は「エンジニア」 - 世界では? | マイナビニュース
そこで、海外の開発会社に開発を依頼する企業が増えつつあります。
日本国内ではオフショア開発市場は2011年以降から1,000億円規模で推移しており、中国への依頼が大半を占めています。
ただ、ここ数年は、ベトナムやミャンマーなど成長著しい東南アジア諸国への依頼が増えています。
人材不足でサービス開発が進まない、という課題を抱えている企業こそオフショア開発を活用できればいいのですが、言語や地域の壁があるため、なかなか踏み出しにくいでしょう。
今回は、yenta主催の「日本のグローバル化について考える会
」にて、ベトナムやミャンマーの開発会社にオフショア依頼しているベンチャー企業6社のCTO(最高技術責任者)が、オフショア開発に関わる失敗や成功、採用方法やマネジメントについて語ったパネルディスカッションの様子をお届けします。
登壇者紹介
JapanTaxi株式会社 CTO 岩田 和宏氏
東京工業大学大学院を卒業後、大手セキュリティ会社で画像センサーの開発、外資系ベンチャー、スマホ系ベンチャー、mixi、ストリートアカデミーCTOを経て、JapanTaxiのCTOに就任。アプリ関連のサービス全般の開発業務を担当し、技術およびチーム基盤を構築している。
株式会社DMM.comラボ取締役 兼 CTO システム本部長 城倉 和孝氏
高校卒業後、ミュージシャンを経て、プログラマーに転身。SIerにてプロダクト開発や事業開発など多岐にわたり従事。その後、自身が立ち上げた事業での分社化を実現。ソフトウェア、エンジニアリングのバックボーンとマネジメント・経営における実績を評価されDMM.comラボにCTOとして就任。現在に至る。
ランサーズ株式会社 CTO 横井 聡氏
1985年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学商学部を卒業後、ウェブデザイナーとしてベンチャー企業に入社。その後、複数の会社でバックエンドのエンジニア、フロントエンドの開発、新規ウェブサービスの企画、開発、運用などを経験。15年6月、ランサーズに入社、同年9月にCTOに就任。現在に至る。
株式会社ユーザベース グローバルSPEEDA 開発責任者 宮内 匠氏
青山学院大学理工学部物理学科卒業後、IT系コンサルティングファーム2社を経てユーザベースに入社。前職では、主に小売・外食チェーンの全社システム戦略立案・プログラム計画策定・システム構築、買収後のシステム統合マネジメント等に従事。
株式会社ベーシック 開発部長 兼 CMT 斎藤 幸士氏
情報通信系研究所でプログラマとして勤務の後、独立行政法人情報処理推進機構の突出したIT人材を発掘・育成する「未踏ソフトウェア創造事業」に採択。スタートアップの立ち上げを経て株式会社ベーシックに入社、現在に至る。
モデレーター:テモナ株式会社 取締役 CTO 中野 賀通氏
中学及び工業高校の教員を経て、ベンチャー企業にて事業の立ち上げや国内大手企業のマーケティング基盤構築のプロジェクトに数多く従事。現在はシステム開発統括業務を軸に、社内インフラ整備から採用・教育まで幅広い分野で活動する。
(プロフィールは http://make-japan-awesome-again-1.peatix.com/ より引用)
オフショア開発をするなら「品質担保」と「コミュニケーション」に注意
中野氏:
オフショア開発でよく聞く失敗、または、自分自身がやらかしたことを教えてください。
斎藤氏:
丸3年、オフショアのラボ(※)を利用しているんですが、何回か失敗はしています。
立ち上げの時がそうでした。
最初プログラマを3人アサインしました。
思ったより成長のスピードが早く、プルリクエスト(※)がバンバンとんでくるんですよ。
※ラボ:ラボ型契約。プロジェクト単位ではなく、依頼企業専属のエンジニアをつける契約形態。長期的にチームを育成できるので生産性が上がりやすい。緊急案件が発生した場合でも対応できる。
※プルリクエスト:管理者に、開発したソースコードをリポジトリに取り込んでもらうためにリクエストすること。
僕一人でレビューするのが大変で、最終的にコードの品質の低下やバグが多くなってしまいました。
その後、フランジアのQA(品質保証)チームを入れたら、品質の低下を防げるようになりました。
最初の失敗は、フランジアのQAチームを入れずにスタートしたことですね。
城倉氏:
弊社はフィリピンとベトナムでオフショアをやってますが、やはりコミュニケーションロスによる失敗はありましたね。
うちは「DMM Okan(おかん)」という家事代行サービスをやっているんですが、それをベトナムのオフショアで開発しました。
おかんとお客さんがマッチングしたあと、質問を投げられるチャット機能があるんですが、一問一答形式ですぐに終わる仕様のはずが、LINEのようなチャットUIができあがってきてしまった。
他にも細かいミスはあるんですが、根本的に、コミュニケーションロスは解決しなきゃいけない。
文化的な違いが原因で認識が異なるということが起こるかなとは思ったが、うちの場合はあまり関係なかったですね。
皆さん技術力は確かなので、しっかり仕様を伝えれば大丈夫かなと。
図で解説したり、振り返りをまめにやったりすることで解決していけるかなと思います。
成功するためには、先駆者の話をとにかくよく聞くこと
中野氏:
開発の工夫、これだけはやっておけって思うことはあります?
宮内氏:
私は、チームに入った人がすぐ抜けないかがすごく心配で。
ユーザベースはアジャイル開発をやっていてその仕組みをそのまま実現したいと考えました。
工夫としてしたのは、せっかく覚えてもらったことがチームからなくならないようにペアプログラミング(※)をしています。
ペアプロをしていると、人が抜けても誰かはコードの内容を知っている状態を作れるんです。
これはやってみてうまくいったなと思います。
品質担保にも役たちますしね。
ペアプロで、品質担保と属人化問題は結構解決されたかなと。
※ペアプログラミング:エンジニアが2人で1台のワークステーションを使って、共同で開発を行うこと。
中野氏:
ペアプロってなかなかレベル高くて取り組むの難しいですよね。
宮内氏:
最初は二人だけで、慣れたら人を増やしていきました。
できるようになるまでは急ぎませんでしたね。コミットラインをひくと時間に追われるので、品質を重視してじっくり取り組みました。
横井氏:
僕らが始めたのは去年の10月からで、後発勢ということを利用してひたすら先行者にヒアリングをしましたね。
それこそDMMさんやユーザベースにコツをいろいろ聞きました。
なので、最初から向こうにメインエンジニアを置いて、1〜2ヶ月常駐させてチームビルディングに全力を注げたのはよかったですね。
中野氏:
なるほど、最初にメインエンジニアを置くのが成功のメソッドなんですね。
横井氏:
そうですね。向こうにも、こちらの本気度が伝わりますしね。
日本ならではの仕様を理解してもらうためには、日本文化を知ってもらうところから始めるのが◎
中野氏:
スキル・品質評価または採用条件と手法について質問しますね。
日本交通さんは結構レガシーな環境だと思うんですが、そこで国内、オフショアでエンジニアはどう採用してるんでしょう?
Tipsみたいなのがあれば教えていただきたいです。
岩田氏:
オフショアはまず、テストコード書けるかどうかを一番重視しています。
コードの品質まで意識がいっているかどうかもわかりますしね。
僕たちは「スキルよりもWill」っていってるんですけど、タクシー業界を変えたいっていう思いを持っている人を採用するようにしています。
中野氏:
タクシー運転手さんのITリテラシーって・・・?
岩田氏:
低い方が多いですよね。
乗務員さんが使うアプリケーションもオフショアで開発しているんですが、(オフショアを依頼している)ベトナムは、日本の交通事情とまったく違うので、そもそも日本の交通事情に合ったアプリの設計が理解されないこともあって。そこを理解せずに、運転手さんにもわかりやすい設計をすることはかなり難しい。
なので、ベトナムのエンジニアに日本に来てもらって、日本交通のタクシーに乗ってもらったり、国内を回ってもらってたりして理解を深めてもらいました。
それ以降、オフショア側の意識がかなり変わりましたね。
中野氏:
そこまでやるんですね!技術だけでなく、文化も理解していると方がいいと。
グローバルな開発組織を持つ企業が描くビジョンは?
中野氏:
最後に、皆さんの将来のビジョンを教えてください。
**横井氏:**
僕たちは去年の10月からオフショアを始めていて、同じタイミングでチェコ人のエンジニアを雇いました。
彼、全く日本語がわからなくて、良く聞いたら英語もわからなかったんですよ(笑)
でもエンジニアチームでなんとかそいつを受け入れなきゃってみんなで英語を頑張って勉強していて、自発的に言語の壁を取り払おうとしています。
やっぱり言語の壁とか住んでいる場所とか、そういうの関係なく働ける環境にしていきたいですね。
岩田氏:
まずは、タクシー業界を導いて行きたいです。
移動で人を幸せにしたいとうビジョンがあるので、タクシーに限らず、いろんなテクノロジーを駆使して人の移動手段をもっと良くしていきたいですね。
城倉氏:
日本は人口が減っているのでマーケットは縮小していくし、しかも海外のアプリが日本に来ています。
そういう状況はわかってるけど、なかなか外に出ていけないエンジニアが結構いるんですよね。
僕たちで、グローバルなエンジニアとどんどん触れ合える環境を作っていきたいですね。
プログラミング言語は共通言語ですし、国を超えたエンジニアのコミュニティができるといいなと思っています。
斎藤氏:
僕たちは会社のビジョンとして「Webマーケティングの大衆化」を掲げています。
それをかなえるために、もっと多くの優秀な人材がほしいんです。
色々見てきましたが、人材のTOP of TOPのレベルはどこの国も一緒なんですよ。
国内だけに固執せず、ワールドワイドに人材を採用していこうと考えています。
優秀な人材を採用して、少しでも早くビジョンを達成したいですね。
宮内氏:
ユーザベースは「経済情報で世界を変える」というビジョンを掲げています。
そのなかでもテクノロジーが果たす役割はすごく大きい。なのでエンジニアの存在は重要です。
今、エンジニアチームは東京にいますが、今後海外売り上げ比率をぐっとあげていく予定なので、国関係なく、多様な人材が僕たちと一緒に働けるような環境を作りたいですね。
中野氏:
日本の人口減少は深刻です。なので、どんどん海外の方を採用して、多様化を許容する文化を作っていかなきゃと思います。
あと、外貨を稼がないと日本は弱体化する一方なので、海外マネジメントやビジネスのTipsをどんどんシェアして、会社とか立場とか関係なく共有していきたいです。
そうして、元気な日本を取り戻したいですね。
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- アプリ
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- コンサルティング
- ビジネスはより高度化し専門的になっています。そこで、事業者のみならず専門家を呼び、彼らからアドバイスを受けながら、日々の活動を確認したり、長期の戦略を考えたりします。その諸々のアドバイスをする行為自体をコンサルティングといい、それを行う人をコンサルタントと言います。特別な資格は必要ありませんが、実績が問われる業種です。
- マーケティング
- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
- UI
- UIとは、ユーザーインターフェイス(User Interface)の略で、ユーザー(使い手)とデバイスとのインターフェイス(接点)のことを意味します。
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
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- マーケティング
- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
- シェア
- シェアとは、インターネット上で自分が見つけて気に入ったホームページやブログ、あるいは、Facebookなど自分自身が会員登録しているSNSで自分以外の友達が投稿した写真、動画、リンクなどのコンテンツを自分の友達にも共有して広めたいという目的をもって、SNSで自分自身の投稿としてコンテンツを引用し、拡散していくことをいいます。
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