企業がマーケティングを行う上で、社会や消費の動向の変化は無視できません。

そして今、世の中の変化の1つとして認識しておきたいのが「単独世帯(単身世帯)」の増加です。
単独世帯とはひとり暮らしの世帯を指し、1995年には1123万世帯だったのに対して2015年には1841万世帯まで拡大しています。
このような社会の変化に合わせて、多くの「おひとりさま向けビジネス」が登場しているのをご存知でしょうか?

今回は、一人客向けのビジネス事例をご紹介します。
単独世帯の増加は今までファミリー向けに展開していた企業にとっては危機であると同時に、新たな需要に向き合うチャンスでしょう。

参考:
[第3次おひとりさまブーム 「私の時間が必要」は9割 日経BPヒット総合研究所 佐藤珠希|NIKKEI STYLE]
(http://style.nikkei.com/article/DGXMZO91164810R30C15A8000000?channel=DF210220171918&style=1)

「おひとり様」ビジネスが注目されている背景

近年ニュースでも聞く「おひとりさま」という言葉、なぜ今注目を浴びているのでしょうか。

注目を浴びている理由の1つとして、単独世帯の増加が挙げられます。
2015年に総務省統計局が行った国勢調査によると、単独世帯と呼ばれる1人だけの世帯は1841万世帯となり、世帯構成の中でもっとも多い結果となりました。

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*引用:*http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/kihon1/pdf/gaiyou1.pdf

1995年以降、調査年ごとに増加の傾向を見せており、1995年の1123万世帯と比べて2015年は*164%*も増加している計算となります。

一方で、4人以上の世帯は毎年減少傾向にあり、単身者や夫婦のみの世帯が増えていることがわかるでしょう。

さらに都道府県によってはさらに顕著な数値が現れます。
東京都では2015年時点で全世帯のうち、単独世帯が占める割合は47%なのに対して、山梨県では30%弱に留まっています。

このように単独世帯が増加して一人で時間を過ごす人が増えていることが、「おひとりさまビジネス」が台頭してきた1つの要因として挙げられます。

スクリーンショット_2017-05-12_17.09.51.png
*引用:*http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/kihon1/pdf/gaiyou1.pdf

また、単独世帯の年齢層の変化にも注意したいところです。
上記のグラフを見てもわかる通り、平成12年(2000年)以降、単独世帯に占める20~29歳の割合は男女ともに減少し、それ以外の年齢層が増加傾向にあります。

特に男性では60歳以上は調査年ごとに増加し、女性でも80歳以降は増加傾向にあります。
「一人暮らし」と聞くと若い世代を想像してしまう人もいるかもしれませんが、こういった高齢者の一人暮らしも増えていることを認識しておきましょう。

参考:
「ぼっち席」が京大で人気 おひとりさま消費の今|HUFF POST LINESTYLE
[3年で大きく変わった、30~40代女性の消費意識|NIKKEI STYLE]
(http://style.nikkei.com/article/DGXMZO98397450U6A310C1000000?channel=DF130120166018)
平成27年国勢調査|総務省統計局
[第2章 人口・世帯  2-10 家族類型別一般世帯数|総務省統計局]
(http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm)

一人客向けのビジネス事例

ファミリーを対象にしていた商品やサービスの中には、一人で暮らしている単独世帯の増加に合わせて、一人客向けのビジネスを展開し始めたものがあります。
それぞれのサービスの特徴を見ながら、どういった需要に応えているのか考えてみましょう。

カラオケ

ワンカラ|ひとりカラオケ専門店.png
https://1kara.jp/

ワンカラは、一人客向けのカラオケ店で2017年5月現在12店舗を展開しています。

従来は大勢で楽しむことの多かったカラオケに対して*「誰にも気兼ねなく自分1人で好きな歌を好きなだけ歌いたい」*という顧客のニーズに合わせ、運営されています。

レコーディングが行える本格的な音響設備を備えているだけでなく、オートロック付きの部屋やドリンクバーによる飲み物の提供など、一人客に合わせた仕様が特徴的でしょう。

現在では、店舗内でオンライン形式の英語学習が行えるサービスも展開しています。

ウェディング

ソロ_ウエディング(ひとりウェディング)~恋するドレス~|株式会社チェルカトラベル.png
http://cerca-travel.co.jp/solowedding/

株式会社チェルカトラベルでは、独身の女性向けに1人でも利用できるフォトウェディングサービスを提供しています。

こういったウェディングサービスは*「ソロウェディング」*と呼ばれ、カメラスタジオなどでもサービスに取り入れられています。
「たとえ結婚していなくても、ドレスは着てみたい」という需要にマッチしたサービスと言えるでしょう。

参考:
[女性の「1人ウエディング」 自分にご褒美のドレス|日本経済新聞]
(http://www.nikkei.com/article/DGKKZO79901160Z11C14A1EAC000/)

焼肉

yakiniku.png

鉄板を囲みながら食べる焼肉にも、一人客に対応した店舗が登場しています。

店内には鉄板を備えた一人席を複数用意し、他の人を意識せずに自分の好きなタイミングで食べやすい作りとなっています。

なかには一人焼肉だけに特化した店舗もあり*「一人であっても焼肉を楽しみたい」*という需要に応えています。

まとめ

ひとり暮らしの世帯は、1995年の1123万世帯と比べて2015年には1841万世帯にも増加しています。
こういった社会の変化に合わせ、一人客に特化したサービスが数多く登場しました。

企業としては、新たなるビジネスチャンスとしても認識しておきたいところでしょう。
一人カラオケや一人焼肉など、今までの業態のまま席や施設を工夫することで一人客へ特化したサービスを提供しています。
ニッチなビジネスながら、現在ではSNSなどの中心に話題となることで集客が見込めるでしょう。

大手旅行代理店の日本旅行では、ホームページ上で一人で旅行をする人向けに利用しやすい旅行プランを紹介しています。このようにサービス自体を変えなくても、複数人しか利用できなかったプランを一人からでも利用できるようにする方法もあります。

ひとり暮らし世帯の増加に合わせて、自社ではどういった対応方法をとるのか、あるいは対応しないままでいるのか改めて考えてみましょう。

参考:
一人旅におすすめ旅行特集|日本旅行