ネットショップや課金制のWebサービスを運営している場合、トップページや商品ページのデザインや利便性だけでなく、決済がどれくらいスムーズに行われるのかも重要です。

実際、せっかく買い物かごに入れても、決済まで行われずにページを離脱して、いわゆる「かご落ち」状態になってしまうのは、非常にもったいないことです。

今回は、決済をどのように行えば売上が上がるのかをデザインする効果的な*「ペイメントデザイン」*について考えてみたいと思います。

ペイメントデザインとは?

*「ペイメントデザイン」とは実のところ広く使われている言葉ではありませんが、広義では決済画面への到着から決済完了までのカスタマージャーニー、狭義では決済画面自体のUIやデザインを指し、「チェックアウトデザイン」*とも呼ばれています。

「決済」は、Webサイトの中でもユーザーがあなたのもとにお金を運ぶための特に重要なパートであるので、ユーザーが少しでも感じている不安を払拭したり、選択肢が多すぎることでユーザーが抱いてしまう選択麻痺を少なくすることが重要になります。

まずはチェックアウトのタイミングを考えよう

実は、ペイメントデザインを考えるときに最も大切なことは、決済(チェックアウト)とサービスの利用や商品の消費(コンシューム)の適切なタイミングを決めていくことです。
なぜなら、支払いとは基本的にユーザーにとって痛みを伴うものだからです。
そのため、ペイメントデザインを行う際にはできるだけユーザーに痛みを感じさせることなくシームレスに決済を行うようにします。

一般的には、チェックアウトとコンシュームのタイミングに関して言えば、次の3つの場面が想定できます。

  1. チェックアウトとコンシュームが同時に発生する場合
  2. 先にサービスを利用し、後からチェックアウトを行う場合
  3. 先にチェックアウトを行い、後からサービスを利用する場合

それでは、これらのチェックアウトとコンシュームの関係は、ユーザーの感情とどのように結びついているのでしょうか。
ここでは3つの場面を具体的に見ていくことにしましょう。

1. チェックアウトとコンシュームが同時

このパターンは、タクシーに乗車するときなどに発生します。
タクシーに乗車したら、他の誰かが料金を支払うということがない限りは、基本的にはタクシーメーターに注意が向くのではないでしょうか。

大抵の場合、タクシーに乗車している人は、あまり気分よくタクシーに乗れないのではないでしょうか。
タクシー料金とタクシーに乗ったときに感じる「体験」は、切り離せないことが多いのです。
実際、Oxford Journalsによれば、何かを支払わなければならない場合、人の脳はそれを「痛み」と感じてしまいます。
総額がどれくらいになるかがわからない間は、人々は苦痛を強いられているようになるからです。

Amazonのクラウドストレージは、使ったぶんだけの支払いになるので、どれくらい支払わなければいけないかが最初は不透明です。
そこで、最初の数ヶ月間は無料で使うことができるようにし、ユーザーに毎月の支払い総額をイメージさせやすくするような工夫がなされています。

2. 先にサービスを利用し、後から支払う場合

最近では、現金を持ち歩かずにクレジットカードやモバイルデバイスなどで支払う人々が多くなってきました。
こうした状況によって支払いのタイミングが後にずれることで、人々は気軽にネットショッピングを楽しんだり、サービスを利用することができるようになりました。
Zozotownが始めた「ツケ払い」決済などは、こうした人々の心理状況を利用したものです。

しかし、私たちはできるだけ先に商品やサービスを消費したいと考える一方で、できるだけ支払いを先延ばしにしたいと考える傾向があります。
これでは、一時的に「痛み」を取り除くことができますが、場合によってはかなり浪費したり借金を増やしたりすることにもなります。
どんどんとサービス利用が促進される反面、資金の回収が困難になるケースもあるのです。

3. 先に支払い、後からサービスを利用する場合

こちらは、ホテルや飛行機の予約サイトのような場合です。
この場合、サービスを受ける時の体験は最も記憶に残りやすいと言われています。

「痛み」を先に経験している、というのが大きな理由のひとつです。
先に支払いを済ませておくと、サービスを利用するまでの期間で期待感を醸成させることができます。
また、旅行のオールインワンパッケージなどの場合、実際に旅行中もこれ以上料金を支払わなくていいので、実際に予算を気にすることなく目の前の「体験」に没頭できるのです。

いくつかのマーケティング心理学との組み合わせ

こうしたチェックアウトとコンシュームのタイミングによって、ユーザーの消費体験も変化していくことがわかります。
また、こうしたタイミングに加えて、次のような心理学的な効果を組み合わせることで、売上に結びつけることができます。

1. 希少性

eBayやBooking.comなどが行っている施策として、「3つのザイン席が残っています」という通知が表示されるようになっています。
「このチャンスを逃したらもう終わり」「なかなか手に入りにくい」というものは、在庫切れになってしまうという恐怖や商品の人気を知ることができることから、購入する可能性を高くします。

2. 限定キャンペーン

AmazonやZozotownなどでは毎日タイムセールが行われています。
年中セールを行ってしまうと、場合によってはブランド価値を傷つけてしまうことがあります。
しかし、正しく期間を設定することで、ユーザーは特別なキャンペーンに出会うことができたという幸福感を得ることができます。

キャンペーンの期間は長すぎると希少性が薄くなってしまいます。
24〜48時間限定セールが、一番効果があると言われており、3日以上のセール期間になってしまうと競合サイトと比べるような時間の隙を作ってしまいます。

3. シンプルでシームレスな手続き

チェックアウトの手続きは、できるだけシンプルで迅速に行う必要があります。

購入確定に至るまで、何度もページ遷移が必要な場合は、ユーザーは煩わしく思ってしまうので、「かご落ち」する可能性が非常に高くなります。
Amazonのように、一度支払ったクレジットカード情報を保管し、次回は数クリックで購入手続きが完了するようなシームレスな対応は、購買の可能性をぐっと高めます。

まとめ

単に支払いの方法をひとつ取っても、タイミングや販促に至るまでの道筋など、考えるべきことは山ほどあります。
展開するサービスやビジネスの種類によってもペイメントデザインの設計方法は変わると思います。
A/Bテストなどを繰り返しながら、ぜひ最高のコンバージョンを実現できる設計にしていきましょう。