ナッジの活用事例:納税通知書への周辺住民の納税率を記載することで納税率アップ

では、実際にナッジを用いて、消費者の誘導に成功した事例にはどういったものがあるのでしょうか。代表的な例である、イギリス歳入関税局での事例を紹介しましょう。

ナッジを政策に活用するための設立されたイギリスの専門チーム「BIT(the Behavioural Insights Team)」では、税金の滞納者への通知に同じ地域に住む住民の納税率を記載することで、納税率に変化が現れるかの社会実験を行いました。
結果として、同じ地域に住む住民の納税率を記載した通知書は通常の通知書よりも高い納税率を実現し、年間3000万ポンドもの滞納金の回収を実現しています。

このように、行政においてもナッジは活用されています。
実際に、イギリスだけでなく、アメリカにおいても2015年にナッジを活用するようオバマ元大統領による大統領令が発令されています。また、日本国内においても2017年4月低炭素型社会の実現のため、国民一人一人が自発的に行動を起こすよう促すことを目的としたナッジ活用の特別チームが環境省内に設立されました。

参考:
ナッジ|株式会社日立総合計画研究所

ナッジを考えるために覚えておきたい4つのテクニック

「ナッジがどういったものかはわかったけど、自分の状況に合わせたナッジは思いつかない」という方もいるかもしれません。
そういった方はナッジの基本的なテクニックを学び、自社の運営へ落とし込むといいでしょう。

1.デフォルト(初期設定)

デフォルト(初期設定)とは、とってほしい選択を最初から設定しておくことで、異なる選択をとる可能性を低くするテクニックです。

例えば、Amazonではプライム会員の加入を促すために無料期間を設けています。無料期間中に加入した人はいつでも解約できますが、そのまま継続してしまう人もいるでしょう。このように会員となっている状態がデフォルトになってしまうと、解約するには手間がかかります。例えそれが簡単に解約できる内容であっても、なんとなく続けてしまう人は多いでしょう。

2.フィードバック

フィードバックとは、特定の行動を起こしたらすぐに反応が返ってくる仕組みを作ることで、自発的に行動を起こすよう誘導するテクニックを指します。

例えばネットショップの会員登録を行う入力フォーム上で、電話番号を全角で入力していたら画面上に「半角で入力してください」と出てきたとします。その結果から学んで、住所を入力する時は最初から半角数字で入力を行うでしょう。

3.インセンティブ(動機)

インセンティブとは、特定の行動をとった際にメリットを与えることで、再度その行動を促すテクニックを指します。例えば、飲食店のポイントカードもインセンティブの1つでしょう。

4.選択肢の構造化

選択肢の構造化は、複雑な選択肢をわかりやすくすることで、特定の選択肢に導くテクニックです。例えば、ファミリーレストランのメニューには「店長オススメ」や「期間限定メニュー」といった文字が掲載されているでしょう。こういった案内があることで、大量にあるメニューから選ぶべきメニューが絞られ、消費者にとって選択しやすくなります。

参考:
情報を用いた誘導への一視座 : 行動経済学,ナッジ,行政法|R-Cube
他人を巧妙に誘導する〜ナッジの技術|福岡県中小企業団体中央会
行動経済学の“選択アーキテクチャ”をSEOやサイトCROに応用する(前編) | Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報 | Web担当者Forum