もし、まだ正式リリース前のプログラムを使うことができたら、わくわくしませんか?

実は、Appleでは次のバージョンのOSを開発者向けに公開している「Betaソフトウェアプログラム」と呼ばれるものがあります。

開発者を中心に、正式リリース前にOSを使ってもらうことで、社内では予知できないようなバグや不具合を事前に収拾することで、正式リリースを万全の状態で迎えることができるのです。

同じく、世界中で多くのユーザーが使っているFirefoxの開発団体Mozillaでも、新機能をいち早く体感できる「テストパイロットプログラム」を始めました。

「所詮はブラウザでしょ」と過小評価するのは簡単ですが、実際に触ってみると分かるように、Mozilla Firefoxの新バージョンでは多くの新しい機能が実装されているようです。

そうした機能を誰よりも早く体感することができるのは「テストパイロット」だけです。

今回は、Firefoxの「テストパイロットプログラム」の概要や参加の仕方、注目機能をまとめました。
Test Pilotは現在、英語版のみ提供されていますが、対応言語は2017年度中に随時追加される予定です。
ぜひ、いち早く新機能を体感してみましょう。

Firefox「Test Pilot Program」とは?

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Screenshot on Firefox Test Pilot Program

Mozillaはもともと、旧ネットスケープが次世代のインターネットスイートを開発するために設立されたオープンソースプロジェクトです。
現在は、世界中で広く使われているブラウザ「Firefox」や電子メールソフト「Thunderbird」などを開発・リリースしています。

Mozillaは「すべのひとにオープンでアクセシブルなインターネットを」(an open, accecible Internet for all)をミッションに掲げていますが、一方でこのミッションを達成するためにインターネットブラウザ業界でイノベーティブなことをするのが非常に困難だと感じていたようです。
そこでMozillaが行き着いた大胆な発想が、この「テストパイロットプログラム」なのです。

実際、テストパイロットであれば、ユーザー体験を邪魔することなく斬新で革新的なアイデアを試すこともできますし、手を挙げたユーザーに使ってみてもらうことでどんな変化が起きるのかを観察することもできます。

このプログラムはオプトイン方式を採用しているので、ユーザーは体験してみたい機能だけを試すことができ、一方でユーザーはMozillaがそれぞれの試用に対して収拾しているデータをいつでも参照できます。

革新的な機能は随時追加されるので、世界中にいる1億人のユーザーに正式に利用してもらう前に、好きな機能を試してみることができるのです。

テストパイロットの仕組み

どんなに小さな新機能を盛り込むにしても、デザインやコーディングには慎重なので、多大な時間と労力をつぎ込みます。

プロダクトのローンチを行うには、その後プロトタイプを作成し、Mozilla内でテストを行うのですが、実際のところリアルなフィードバックを受け取ることができないという問題点もあります。
それを可能にするのが、テストパイロットの仕組みです。

Step1. プロトタイプと検証

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画像引用元:pexels.com

最初に、テストパイロットチームは問題点を定義し、それを吟味して、新しい機能として組み込むべきかを確認します。

実際にその機能が既存の問題の解決策となるのであれば、スケッチをしたり簡単なプロトタイプを作成し始めます。
もちろん紙上に殴り書きをすることもあれば、Photoshopのようなソフトでプロトタイプを作成することもあります。

このプログラムでは、作成したプロトタイプをユーザーに診てもらい、アイデア自体を評価してもらう仕組みを導入しています。
もちろん最初のステップで落ちてしまうアイデアもありますが、それはそれでよいと考えています。
この段階でユーザーに評価してもらえるかどうかが分かるのは、実は重要なことなのです。

Step2. デザインと構築

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画像引用元:pexels.com

デザインが評価されたら、実際にテストパイロットのために制作に取り掛かります。
プロトタイプ評価で受けたフィードバックも織り込みながら、必要な機能を形にしていきます。

実際に動くモックアップが完成したら、プレローンチミーティングを法務チーム(新機能がユーザーのプライバシーを守るかどうかを検証するため)やマーケティング・データサイエンスチーム(機能の価値を正確に伝えるため)と行います。
全ての準備が整ったら、次のフェーズに進みます。

Step3. ローンチとフィードバック

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画像引用元:pexels.com

機能をテストパイロットとしてユーザーに使ってもらいます。
その際、Mozillaの開発チームは機能が正常に作動しているかモニターし、ユーザーからのフィードバックを受けます。
「実験」が進むにつれ、問題点を修復し、改良を重ね、フィードバックがどのように変化するかを観察していきます。

場合によってはこの「実験」がうまく機能しないこともありますが、その際はこのフェーズで開発を打ち切ります。
リリースすること自体が重要なのではなく、ユーザーにとって役立つ、満足のいく機能だけをリリースすることが大事だからです。

Step4. 正式リリースに向けて

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画像引用元:pexels.com

もしこの「実験」がテストパイロットから離れるに値するものであれば、最終試練に送り込まれます。
それが、ランダムに選ばれたオプトインのトライアルプログラムです。

ここで初めて「実験」が多くのFirefoxユーザーの前で披露され、うまくいけばFirefoxの標準機能として盛り込まれます。
一方で、賛否両論あれば、基本的にはアドオンとしてリリースされることになります。

新機能についての方向性がMozilla内で決まると、テストパイロットサイトにてユーザーに知らされ、実験の経過も報告されることになっています。
そうして、無事にその機能が正式リリースされるようになるのです。