TwitterやFacebook、インスタグラムといった主要なSNSだけでなく、食事投稿アプリの「Meal」やニュースコメントアプリの「NewsPicks」など、さまざまなところで個人が自由な発言を行えるようになった反面、個人の影響力があらわになってきています。

以前であればマーケティングとは企業の広報活動が行うものであり、個人には関係がないものでしたが、現在では組織に属している・属していないに関わらず、個人の影響力は少なからず見られています。

実際、SNSを中心に価値を測定し、株式のようなものを発行してトレードを行うVALUや個人の時間を取引するTimebankなど、組織ではなく個人を主体とした経済システムも登場しています。

それらのシステムにおいては有名企業で働いているからとか、ある界隈では有名といったことは一切関係なく、いかに個人の価値を高め、最大限伝えていくか、ということが重要となり、パーソナルブランディングがうまくいけば本業でもチャンスが広がる可能性があります。

今回は、2017年下半期以降の「個人中心経済」(Person-Centered Economy)で勝ち残っていくための、パーソナルブランディングに必要な5つの要素をご紹介します。

これからは「Marketing Yourself」の時代に

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DIY(Do It Yourself)は聞いたことがあるかもしれませんが、近年*「Marketing Yourself」*(自分自身をマーケティングしよう)という言葉が注目を集めています。

実際、YouTubeやインスタグラムなどを中心として、これまでの経歴や学歴とは一切関係なく、多くのフォロワーを獲得しているYouTuberやインスタグラマーが多数存在しています。
彼らは単に写真や動画をアップロードしているわけではなく、何らかの方向性やテーマを持って自分自身をブランディングしていることが分かります。

「才能」という言葉で一蹴するのは簡単ですが、「名もなき個人」(Anonymous)がゼロから影響力を増やすための強力な武器が、*「マーケティング」*の知識なのです。

それでは、「名もなき個人」が影響力を増やしていくには、何をしていけばいいのでしょうか。

パーソナルブランディングの成功に必要な5つの要素

1. ポートフォリオを作る

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パーソナルブランド構築の足がかりとして、まずはポートフォリオを作成しましょう。

ポートフォリオとは、もともと書類をひとまとめにして持ち運ぶ書類ケースのことで、英語のPortfolioはイタリア語のPortafoglio(ポルタフォリオ、porta「運ぶ」+foglio「紙」)が由来だと言われています。
ポートフォリオは、さまざまな業界で使われている言葉です。

金融業界では現金や預金、株式や不動産などの金融商品の一覧やその内容を指しており、教育業界では生徒たちが学習過程で残したレポートや写真などをファイルにひとまとめにして評価する方式を指します。
一方、クリエイティブ業界では、自身の「作品集」として、自分の過去の実績や力量を評価してもらうために作成する資料のことをポートフォリオと呼びます。

どの業界にしても、過去の軌跡をまとめて現在の立ち位置を示すために、ポートフォリオは役に立ちます。

ポートフォリオは、過去のキャリアの棚卸として使うこともできますし、自分が過去に生み出してきたことをいつでも他者に参照できるようにしておいてもいいでしょう。
HTMLCSSなどのコーディングスキルがなくともポートフォリオサイトを作ることができる便利なツールもあるので、利用してみるのもおすすめです。

参考:
意外と重要!クリエイターがポートフォリオサイトを作る時のポイントと役立つツール5選
世界で活躍するデザイナーから学ぶ!ポートフォリオサイトをより効果的にみせるアイデア7選

2. USPを知り、マーケットを定める

USPという言葉は「Unique Selling Proposition」または「Unique Selling Point」の略とされるマーケティング用語で、しばしば「自己の強み」「自分の売り」と訳されます。
しかしそれは正確ではなく、実際には*「他者にはない唯一無二の」自己の強みや自分の売り*のことです。

例えば、単に「英語ができる」人材というのは山ほどいますが、*「英語とロシア語とタガログ語が話せる」*方はそうそういないでしょう。
「世界一」「業界一」の実績を持っていると話は早いですが、そうでなくとも上記の例のように掛け算で独自性を表現するのも1つの手です。
USPを発見する手がかりとして、先ほど紐解いたポートフォリオも一つの材料となるでしょう。

また、自身のマーケット(市場)やターゲットオーディエンス(想定フォロワー)も定めていくことが重要です。
芸能人は別として、一般的なユーザーがオーディエンス(フォロワー)を獲得するには、テーマ性を持つことが重要になります。

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スクリーンショット:Instagram (2017年8月)

例えば、インスタグラマーのHalno Kujiraokaさんのインスタグラムアカウントはほうきに乗った写真と旅がテーマになっており、その「ほうきおじさん」のカテゴリが「唯一無二」であるとも考えることができます。
2017年8月現在のフォロワーは27万4千人で、旅行好き、インスタジェニック好きにフォローされる傾向にあるようです。

3. 少しの個性を出す

USPやターゲットが決まっても、発信者の顔が想像できなければ、愛着を持つことはできません。
一般的には、ある程度の「キャラ」を持っていた方が、愛着が湧きやすい傾向にあります。

このあたりは、企業キャラクターやご当地キャラのキャラ作りが非常に参考になるでしょう。

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スクリーンショット:Twitter (2017年8月)

例えば、*高知県須崎市のご当地キャラクター「しんじょうくん」*は下記のようなキャラクターが設定されています。

須崎市の新荘川で、最後に確認されたニホンカワウソ。残念ながら絶滅種指定されてしまいましたが、しんじょう君は今日も絶滅してしまったカワウソの友達たちを探しに旅をしています。

経歴が非常にユニークであるとともに発言にんは、*「おいでおいでー☆」*と、かならず語尾に「☆」マークが付くという、首尾一貫したキャラクター設定になっています。

これはあくまで一例ですが、自慢話よりも失敗談を話したり、相手の長所を褒めたりして、意外な一面を見せることで、堅苦しくなく柔らかい印象を与えることができます。

4. わかりやすい言葉で語る

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ターゲットオーディエンスにもよりますが、専門用語ばかりを語るのは、専門家にばかり好かれ、一般の方が寄ってこなくなってしまうことがあります。
というのも、難しい言葉が目に(あるいは耳に)飛び込んでしまうと、*「私には関係ない」*という心理的な作用が働き、ラポール(心理的な信頼関係)が築きにくくなってしまうからです。

YouTubeを視聴している層として無視できないのが小学生ですが、YouTuberのHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんが小学生に人気なのは、難しい言葉を使わず、誰にでもわかりやすい言葉で話しかけているのが一つの要因と言えるでしょう。

弁護士や経済アナリストなど、専門性の高い職業の方が自己のマーケティングを行う際には、ターゲットオーディエンスを明確にしつつも、できるだけ分かりやすい、やさしく理解しやすい言葉で語った方が、裾野が広がるでしょう。

5. 継続的に発信し続ける

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最後に重要なのが、継続的に発信し続けることです。

1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスは、*「はじめのうちは興味がなかったり、苦手だったりしても、何度も見たり聞いたりして繰り返し接触することで好感度や印象が高まる」*とする論文を発表しました。
これは「単純接触効果」や「ザイアンス効果」と言われていますが、自己のマーケティングでは内容やコンテンツの長さ以上に多産であることが求められます。

露出が多いほど単純接触効果が起きるので、広告やCMもこの効果を狙って露出を増やします。
SNSでは、1つのメディアに縛られず、ブログも含めてさまざまなプラットフォームで多産に発信をすることが重要だと言えそうです。