自信を持って発売した自社の新サービスが、なかなか認知されず売上に繋がらない。そんな悔しい思いをしたことはありませんか?
どんなに画期的で斬新なサービスでも、それが一気に世の中に浸透することはありません。新しいサービスが世の中に生み出され、人々から徐々に受け入れられていく段階を理論化したものに、「イノベーター理論」があります。

イノベーター理論を理解することで、サービスに対する消費者の反応を予測し、状況を見ながら対策を打つことが可能です。この理論の事例として、iPhoneがよく取り上げられます。
今回は、iPhoneが世の中に発売され浸透するまでの流れを例に、イノベーター理論について具体的に解説します。

イノベーター理論とは

Untitled.png

イノベーター理論とは、新しいサービスが市場や顧客に浸透していく過程をまとめた理論です。新しいサービスに対する消費者の反応は、「イノベーター(Innovators)」「アーリーアダプター(Early Adopters)」「アーリーマジョリティ(Early Majority)」「レイトマジョリティ(Late Majority)」「ラガード(Laggards)」の5つのグループに分かれます。そして上図のように、「イノベーター(Innovators)」から順番に浸透していくとされています。

この例えとして分かりやすいのが、新型iPhoneに対する消費者の反応です。
今巷では、iPhone8の発表が噂され、話題になっています。常にインターネットで情報を収集し、今か今かと待ちわびている人や、「またテレビが盛り上がるんだろうな」とぼんやり思っている方もいるでしょう。ここで初めてこの話題を知った人も中にはいるかもしれません。

このような新型iPhone発売に対する反応も、イノベーター理論に当てはめて分析することができます。それでは、一緒にみていきましょう。

イノベーター(Innovators)

イノベーターは、常に新しいものや革新的なものを求めています。
性能やサービスではなく、誰もまだ持っていない、世の中に浸透していない新しいものをいち早く手にすることにメリットを見出しています。

iPhoneの新シリーズ発売日は、毎回店頭に行列ができてメディアを賑わせます。2016年の9月、「iPhone 7/7 Plus」と「Apple Watch Series 2」の発売に合わせ、Apple表参道には200人以上の行列ができました。中には2日前の夜から並んでいた方もいたようです。

参考:
アップルストア表参道に行列 iPhone_7発売日の様子|ITmedia PC USER

イノベーターに向けてアプローチするときは、いかにそのサービスが最新で最先端であるかを強調することがポイントです。発売前も大々的に広報することで、期待値と熱量を上げることもできるでしょう。

アーリーアダプター(Early Adopters)

アーリーアダプターは、流行に敏感で積極的に情報収集をしています。
新サービスは事前にチェックはしているものの、すぐに購入に動くことはありません。イノベーターなどの反応を見て機能やデザインをチェックし、気に入ってから行動を起こします。

iPhone発売日の翌日〜数日後に購入に動く層です。購入後は自らが発信源となり、メディアやSNSでファンやフォロワーに感想を共有します。彼らは流行の最先端をいく芸能人やインフルエンサーなどに多く、消費者に大きな影響を与えることもあります。そのため、「オピニオンリーダー」と呼ばれることもあります。

アーリーアダプターは流行の先取りが好きです。これから流行するかもしれない期待感や、従来のサービスとは違うメリットをアピールしましょう。

アーリーマジョリティ(Early Majority)

アーリーマジョリティは、新しいものに興味は持つものの、比較的慎重です。
購入する前に、まずはアーリーアダプターの動きを探ります。彼らの反応がいいと、ようやく前向きに検討する気になってきます。

iPhone発売後は、メディアやSNSで好きな芸能人やフォロワー数の多いユーザーをチェックします。流行の最先端にいる人への憧れが強く、新型iPhoneを持っていることがおしゃれ、かっこいいと思われることがわかると、欲しくなってきます。そこで値段や機能性も調べ、自分自身にもメリットがあると判断すると、購入します。

世の中への浸透を阻む「キャズム」

アーリーアダプターからアーリーマジョリティに商品が浸透していくかどうかが、イノベーター理論の中では大きなポイントです。このアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある壁のことを「キャズム」といいます。

アーリーマジョリティは前述の通り、流行には敏感なものの、リスクは取りたがりません。そのため、一定以上の人が購入して満足している状態が確認できないうちは、腰をあげてくれないのです。この壁を乗り越えられるかどうかで、新しいサービスが普及するかが決まってくると言っても過言ではありません。

これまでは、サービスが最新で最先端であることや、流行の兆しをアピールすることで購入してもらっていました。しかし、アーリーマジョリティ以降の消費者に対しては、一転してみんなが持っている安心感や、従来のサービスより良くなる確信を持ってもらうようなアピールが必要となってきます。

レイトマジョリティ(Late Majority)

レイトマジョリティは、流行に対して用心深くとても慎重です。新サービスに対しても懐疑的で、すぐに情報収集することもありません。しかし、しばらく経って世の中でそのサービスが当たり前になってくると、自分だけ持っていないことを不安に感じるようになります。

iPhoneも、発売日にかかわらず、周りに持っている人が増えてきた頃に気になり始めます。次の機種変更のタイミングでiPhoneに変えてみようかと検討する人がレイトマジョリティです。

みんなが使っている安心感を伝えると同時に、「持っていない方が少数派である」ことをほのめかすことで、逆に不安感を煽るアピール方法も有効です。

ラガード(Laggards)

ラガードは、保守的で流行にもあまり関心がありません。
今のサービスでなんの不自由もなく満足しているため、わざわざ未知のものに変えようと思わないのです。

iPhone発売のニュースを耳にしても、全く興味がありません。そもそも、スマートフォンですらないかもしれません。スマートフォンが浸透し、友人たちがLINEグループで連絡を取り合うようになると、自分にだけ連絡が遅れるといった弊害が生まれ始めます。そうなってようやく、不便を感じて機種を変えることにします。

ラガードは最後の砦です。サービスを浸透させるには、もはや「新しい」と感じられなくなるほど一般化させることが重要です。

まとめ

人は基本的に、変化には慎重な生き物です。そのため、新しいサービスが世の中に与える変化が大きければ大きいほど浸透は難しくなり、キャズムはさらに高い壁となって立ちはだかってきます。

しかし、今回例にあげたiPhoneをはじめ、世の中で爆発的にヒットし、今では当たり前になっているサービスも、全てこのイノベーター理論の流れに沿って浸透してきました。
イノベーターを惹きつけ、キャズムを乗り越え、ラガードに受け入れてもらうためには、サービスに対する消費者の反応を常にチェックすることが大切です。状況に応じて、適切なアプローチを行っていきましょう。