カスタマーをファンに変える仕事

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ソーシャルエディターとして活動するにあたり、ソーシャルメディアに投稿するテキストをどう作成していたのでしょうか。山崎さんは*「言葉のプライオリティーが大事なんです」*と語ります。

「ソーシャルポストを作成する際、私は一番伝えたい単語をできるだけ前に持ってくるようにしています。始めたばかりの頃は、ストーリーを作ろうとするあまり、時に言葉が後ろに押されてしまった。それでは、ユーザーに届けたいはずの大切な言葉の力が弱まってしまいます。一番大切な言葉は何かを考え、その言葉のイメージを大切にする。そして、そこからどう文章を続けるのかが我々の腕の見せ所です(山崎さん)」

では、大事な言葉はどう選ぶのか。そのためには、プロダクトや会社自体への理解を深めること、そしてプロダクトや会社のファンへの理解を深めることが重要だと山崎さんは説明します。

会社の「中の人」として外部に向けて伝えていくのと、「外の人」として関わるのでは当然軸が変化します。

「ライターの仕事をしていた時は、自分の目線で書いていました。メディアの立ち位置を理解した上で客観的な立場で書くわけです。一方、企業の中でエディターとして活動する場合、その企業に誰よりも強い関心を持って惹かれなければいい仕事はできません。ほぼ一心同体になるようなつもりでいましたね(山崎さん)」

企業に寄り添い、その企業への理解を深めた上で、カスタマーにも寄り添うわけです。

「ソーシャルエディターは、カスタマーが何を知りたいのかを推測しなければなりません。それを教わった出来事があります。ある日、AKQAで"スニーカーヘッズ"と呼ばれるスニーカーのコアファンユーザーの取材に行った時のことです。そこで、熱心に商品への思い入れや、ストーリーを語るファンとふれあう機会がありました。自分のスニーカーへの情熱と愛を滔々と語る様子を直接目の当たりにしたことで初めて、コアなファンの感覚を知ることができ、自分もファンになることができたのです(山崎さん)」

熱心なファンの気持ちに寄り添うこと、情報を調べる際に企業や商品の良いところを着目し、ファンになるつもりで見ていくこと。そうすることで、ファンの視点を獲得していきます。

エモーショナルな側面を大事にする一方で、数字的に物事を見ていくことももちろん必要です。限られたコアなファンだけではなく、より多くのファンの動向を知るためには数字をチェックしなければなりません。

*「企業に入って数字を追いかけ始めると、数字しか見えなくなってしまいます。誰のために発信しているのか、というファンの人たちの顔を忘れないことが大切なんです」*−−そう山崎さんは語ります。
  

市場を牽引 "ソートリーダーシップ(Thought Leadership)"という考え方

「Workdayで、コンテンツマーケティングをしていた時は、"ソートリーダーシップ(Thought Leadership)"に基づいて、会社のミッションや先進性を発信し、潜在的なユーザーに広めていきました(山崎さん)」

山崎さんが語るソートリーダーシップとは、特定のセグメントや分野において将来を先取りしたテーマやソリューションを示して、オピニオンリーダーとして業界を牽引していく活動のことを指します。

市場の伸びが鈍化しているケースや、新たな市場を切り開く必要がある場合に、このソートリーダーシップを戦略として採用するケースがあります。米国の企業ではこの考え方でコンテンツマーケティングを行うところが少なくないようです。

「Workdayでは、CEO、CFO、COOなど、経営に関わる"C-suite"と呼ばれる人々に向けて情報を発信していきました。それ以外の人たちには、プロダクトの最終的な購入権限がない場合が多いからです。ターゲットをきっちりと絞って、そこに刺さるコンテンツをつくる。ただ、ターゲットと言っても流石にC-suiteなので、その人達を説得するためにはコンテンツも作り込まなければないりません。そのため、コンテンツを作る際の文体や執筆ルールなどのガイドラインや海外のカウンターパートとのディスカッションももちろんありました(山崎さん)」

市場そのものを牽引するような情報発信を行い、潜在的なユーザーにリーチさせる、ターゲットを絞り、そこに届くようにコンテンツのガイドラインを作成する。コンテンツマーケティングを行う上でのヒントとなりそうです。