Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeなど数多くのソーシャルメディアが存在しますが、各ツールを有効活用できているNPOは多くありません。

活用できれば効果があるとわかりつつも、どのように運用すればいいのかわからない団体も少なくないはずです。

今回は、ソーシャルメディアの中でも日本でユーザー数が多いプラットフォームである、FacebookとTwitter、Instagram、YouTubeを利用してる事例を紹介していきます。

ソーシャルメディアごとの特徴を理解し、地道にコツコツと運用する

NPO以外の民間企業にも当てはまることですが、ソーシャルメディアを活用する上で注意しなければいけないことが3つあります。

1つ目は、誰に情報を届けたいのかを明確にした上で、ソーシャルメディアの活用の仕方を変えることです。各ソーシャルメディアの特徴やユーザー層に応じて情報発信を行わなければ、投稿するコンテンツに対するエンゲージメントは低くなってしまいます。各ソーシャルメディアの特徴については、以下の記事を参考にしてみてください。

参考:
【無料で簡単DL】2018年3月更新! 11のソーシャルメディア最新動向データまとめ

2つ目は、一方的な情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションを行うことです。コミュニケーションを取ると、団体のことを身近に感じてもらいやすくなります。

3つ目は、結果がすぐに出ないことを認識することです。なかなか効果を上げられず、更新を辞めてしまうのはもったいないです。ソーシャルメディアは、地道に更新を続けながら、少しずつファンを獲得していくものなので、長期的な目線を持つことが求められます。

NPO団体の主要なソーシャルメディアの活用事例

ユーザー目線に立って投稿文の作成を行うカタリバ:Facebook

それでは、各ソーシャルメディアの利用事例を順番にチェックしてみましょう。

Facebookの事例で紹介するのは、キャリア学習プログラム「カタリ場」や、被災地の子どもたちのための放課後学校などを展開しているNPO法人カタリバのFacebookページです。

カタリバのFacebookページには、2018年3月現在で6万を超える「いいね!」が集まっています。実際の投稿をいくつか見てみると、ユーザーに語りかけるような投稿が多く行われています。

投稿の冒頭には、ひと目で伝えたい内容がわかる概要とURLを配置しています。ページに「いいね!」をしてくれている人でも、日々ニュースフィードをスクロールしている中で、投稿を見つけても内容を最後まで読んでくれる人は多くありません。

全文を表示しなくても内容が理解できる、興味のある人はすぐにリンク先に飛んで詳細を知ることができる投稿文は、ユーザー目線に立った工夫と言えるでしょう。

新しいテクノロジーやマーケティング、NPOなどの情報を発信しているブログメディア「@cafe(アットカフェ)」の記事によると、「いいね!」やシェアが多かった投稿の写真は、他の投稿にも再利用したり、活動の様子が具体的に伝わるような写真を寄付やボランティアの募集に活用するといった工夫もできるそうです。

ユーザー目線に合わせて投稿文を作成し、反応のよかった投稿は再度利用したり、他の投稿に活かしていく姿勢が欠かせません。

上位のミッションを定義し、情報発信に取り組むNGO:Twitter

Twitterの事例として紹介するのは、NGOの「Room to Read(ルーム・トゥ・リード)」です。ルーム・トゥ・リードは、識字能力の育成と教育における男女の格差是正に焦点を当て、開発途上国に住む子どもたちのために活動するNGOです。

同団体は、Twitterアカウントで積極的に情報発信を行っており、2018年3月時点でフォロワーは63万を超えています。Twitterの社会貢献部門トップが記した書籍『社会を動かす、世界を変える 社会貢献したい人のためのツイッターの上手な活用法』を参照すると、同団体はTwitterで「何を達成したいのか」をまず明確にしています。

教育の重要性を世界に訴えること。そのミッションを達成するために、ルーム・トゥ・リードのTwitterアカウントでは、識字に関連したイベントや活動地域の情報など、ルーム・トゥ・リードの活動と直接的には結びつかない情報も発信しています。

つまり、教育に関心のあるユーザーがアカウントをフォローすることで、最新情報を把握できるようにしたのです。フォロワーの中で「有力なユーザー」を相互フォローしたり、ダイレクトメッセージを送る施策も行ったといいます。

ルーム・トゥ・リードは、2009年にTwitter社と提携もしました。9月8日の「国際識字デー」などに合わせて、ハッシュタグを活用したキャンペーンを展開しています。

2018年3月8日の「国際女性デー」にも、多くのツイートを展開。下記で紹介しているツイートのように、団体の情報だけでなく「教育の重要性を世界に訴えること」という目的に沿い、識者やメディアの記事の紹介、リツイートを行っています。

ハッシュタグを活用した写真コンテストで参加型に:Instagram

Instagramの事例として紹介するのは、鳥やその生息地を保護する活動を行っている米国のNPO「National Audubon Society」です。

National Audubon SocietyのInstagramアカウントでは、普段見ることができない鳥の一瞬を捉えた写真を紹介。団体を知らない人が投稿を見つけた時に、思わず「いいね!」を押してしまいそうな写真が並んでいます。2018年3月時点で、約24万のフォロワーがいます。

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Instagramはハッシュタグを活用して投稿すると、全世界で共通の関心を持つ多くのユーザーに情報を届けられる可能性があります。2017年12月にはハッシュタグのフォローも可能となっているので、その有効活用がファンを増やすために有効です。

National Audubon Societyは、写真のハッシュタグを活用した鳥の写真コンテストも開催することで、新しいファンの獲得やユーザーのエンゲージメント向上につなげました。

たとえば、2018年4月9日まで開催された「Audubon Photography Awards」では、優勝すると5,000ドルの賞金が得られるだけでなく、雑誌や展覧会で作品が披露されます。

アワードで選ばれたトップ100の写真はInstagramで紹介するなど、アマチュア写真家にとっても自分の作品を世界に披露する機会を提供しています。運営するNPOにとっても、写真コンテストを通じて対象とする社会課題の認知拡大につなげることができたり、投稿できる写真素材を多く手に入れられたりと、メリットがあるでしょう。ユーザーが投稿した写真を活用する場合は、権利関係をキャンペーンの開催時に明確にしておくことも重要です。

このようにハッシュタグを活用して、プラットフォームのユーザーが「参加したい」と思える施策を展開することで、これまで団体を知らなかった新規のユーザーを巻き込むことができます。

動画を活用したキャンペーンで83万回以上の再生数:YouTube

YouTubeの事例として紹介するのは、世界100カ国以上で自然保護活動を行っているNGO「WWFJapan」です。WWFの日本支部 では動画を活用して情報発信を行うことで、対象とする社会課題の認知拡大や資金調達につなげています。

YouTubeのチャンネルでは、国連気候変動会議「COP23」の現地レポート、絶滅寸前の危機に陥っている動物たちの子育ての様子を撮影した映像を公開しています。

映像を使うことのメリットは、社会課題のリアルな現場を伝えられることや、テキストよりも短い時間で情報量を多く届けられることにあります。テキストや写真と比較して、印象に残りやすく、具体的なアクションに結びつきやすいと言えるでしょう。

2015年1~4月には、社会貢献を身近にするプラットフォーム「gooddo」と動画制作の「Viibar」と共同で、ネコ科動物の危機を取り上げたキャンペーンを展開しています。

キャンペーンは、ネコ科動物が陥っている危機的な状況と、それに対するWWFの取り組みを伝えて、活動を継続的に支援してくれるサポーターを募るものでした。公開した動画は2018年3月現在で83万回以上再生されており、多くの支援者獲得につながったといいます。

動画を活用することで直感的にメッセージを届けることができ、多くの人の共感を呼びやすくなります。社会課題は理解と同様に共感も重要です。動画は他のコンテンツよりもコストがかかりますが、共感を呼びやすいアプローチだと言えるでしょう。