今、世界には様々な社会問題が溢れています。
少子高齢化による労働人口の減少、資源枯渇によるエネルギー問題、国政情勢の深刻化など、常に悩みは尽きません。

社会問題の解決のために持続可能な事業を展開することを、ソーシャルビジネスといいます。近年はベンチャー企業や起業家が始めた、社会貢献を目的のひとつに据えたこのビジネスが話題になることも多くなりました。

今回は、日本経済新聞社が毎年開催しているソーシャルビジネスコンテストの受賞団体の取り組みを紹介します。ソーシャルビジネスの事例を知ることで、顧客満足と企業利益に留まらない事業のアイディアに活かしてみてください。

ソーシャルビジネスとは

「ソーシャルビジネス」とは、社会問題を解決することを目的とした、持続可能な事業を指します。

経済産業省は、ソーシャルビジネスの特徴として、社会課題の解決を目的とする社会性、利益を生み出し継続して価値提供していくための事業性、新しいサービスを開発し、そのサービスを通して社会に新しい価値を提供する革新性の3つの要素を挙げています。

ソーシャルビジネスは、よく企業のCSR活動と混同されがちです。ソーシャルビジネスとCSR活動の違いは、事業性の有無です。企業に利益を生み出さない環境保全活動や海外支援活動などは、ソーシャルビジネスには入りません。

参考:
起業して社会問題を解決する!ソーシャルビジネスとは?|ferret[フェレット]

ソーシャルビジネス関連の融資実績は増加

2017年5月、日本政策金融公庫は、平成28年度のソーシャルビジネス関連の融資実績が加工最高を記録したと公表しました。件数は9,644件(前年度比124.5%)、717億円(前年度比118.2%)です。

融資実績推移.png

参考:
ソーシャルビジネス関連融資 過去最高の実績~融資制度の拡充と情報支援の推進により実績伸長~|日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、2016年からソーシャルビジネスに取り組む事業者向けに融資制度を拡充するなど、積極的な支援を続けています。

今後も一層、ソーシャルビジネスへの期待は高まっていくことでしょう。

日経ソーシャルビジネスコンテスト(日経ソーシャルイニシアチブ大賞)

日経ソーシャルビジネスコンテスト(日経ソーシャルイニシアチブ大賞)は、2013年から毎年開催されています。2017年から、名称が日経ソーシャルビジネスコンテストに変更されました。

同コンテストは、日本の社会課題の解決を目指すソーシャルビジネスの発展と理解の促進を目的に開催されています。

今回は、このコンテスト各回の大賞に選ばれた事業を、ソーシャルビジネスの代表的な事例としてご紹介します。

参考:
日経ソーシャルイニシアチブ大賞|日本経済新聞社

第1回:特定非営利活動法人フローレンス

認定NPO法人フローレンス.png

特定非営利活動法人フローレンス

認定NPO団体のフローレンスは、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現を目指しています。

病児保育問題、待機児童問題、障害児保育問題など、子育てに関する社会課題の解決のため、これまでの概念にとらわれないサポートを展開しています。
近年話題にものぼっている待機児童問題に対しては、小規模保育事業「おうち保育園」を現在15園開設しています。

マンションや一軒家を活用しているため、待機児童問題が深刻な地域にピンポイントに開設でき、問題が解消されれば本来の住居として機能させることができます。費用や時間のコストも抑えられることが評価され、政府の待機児童対策にも採用されました。

第2回:特定非営利活動法人えがおつなげて

特定非営利活動法人えがおつなげて.png

特定非営利活動法人えがおつなげて

特定非営利活動法人えがおつなげては、地域共生型の市民ネットワーク社会を作ることが目的です。

都市と農村が協力しあってお互いの課題解決を目指す事業モデルを作り出しています。耕作放棄地に都市の若者を呼んで農業ボランティアや農業技術研修を行っています。

また、企業のニーズと農村の資源を結びつけ、新しい事業を生み出しています。荒れた棚田を開墾し、育てた米で純米酒を作ったり、開墾の過程を社員間交流を目的としてツアー化し、毎年継続して参加者を集めていたりと、活動は多岐に渡ります。

第3回:味の素株式会社

味の素グループ企業情報サイト.png

味の素株式会社

味の素株式会社は、公益財団法人ケア・インターナショナル ジャパン、公益財団法人プラン・ジャパンとの共同で、途上国における離乳期の子供の栄養改善のための商品開発を行いました。

途上国では、栄養不足による子供の身体や脳への悪影響が深刻な課題となっています。味の素株式会社は、課題解決の鍵となる離乳期の栄養不足に注目しました。

伝統的な離乳食である「koko」に不足している栄養素を補うサプリメント「KOKO Plus」を発明し、複数の村でテスト販売をしています。

その際、政府機関や企業とも協力することで、より効果的な持続可能性のあるビジネスモデルの構築を目指しています。

第4回:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

ピースウィンズ・ジャパン.png

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンは、国外・国内で幅広く活動しています。国外では、紛争や災害の被災者への人道支援、貧困に苦しむ人の自立のための復興支援などを行っています。

国内では、東日本大震災や熊本地震の復興支援、国際協力への呼びかけ活動などを行っています。

毎年15,000頭以上が殺処分されている犬の保護と譲渡を目的とした「ピースワンコ・ジャパン」事業も行っています。犬舎の建設、保護犬譲渡センターの開設に取り組んでいます。2015年度は、譲渡・返還率約50%と、高い実績を残しています。

まとめ

社会課題の解決に向けて積極的な企業は今後も増加すると予測されています。しかし、個人の社会課題に対する意識は年々微減しているようです。

個人の社会問題への意識.png

引用:
博報堂研究開発局、 「2017 年 生活者の社会意識調査」を実施|博報堂研究開発局

今後はソーシャルビジネスが、国民一人ひとりの社会課題に対する意識を高める役割も担っていくかもしれません。持続可能な日本のために、自社の事業を新しい角度から見直してみてはいかがでしょうか。