近年、国が「地方創生」を成長戦略のひとつとして掲げ始めたことから、地方に焦点をあてる企業が増えてきました。物理的に離れていてもインターネットで気軽に繋がれる現代、例えば首都圏に軸足を置く企業でも、地方の消費者をターゲットにしたサービスを展開しやすくなっています。

しかし、自社とは違う土地、文化に慣れ親しんだ地方の消費者に響くサービスを開発することは、容易ではありません。同じ日本でも、流行や価値観は大きく異なっていることもあります。

自社のサービスを地方の消費者に親しみをもって受け入れてもらうために、ぜひ活用したいのが「方言」です。方言は地元の方たちにとっての大切な言葉であり、生活に根付いています。方言を上手く活用することで地方の方の共感を得て、サービスへのエンゲージメント(愛着)を高められる可能性があります。

今回は、方言を活用したマーケティング・プロモーション施策を7つご紹介します。

今、地方創生が注目されている

2017年、内閣府は国の成長戦略として掲げられている地方創生に向けて、以下の方針を3本の矢として掲げています。

【情報支援の矢】
・地域経済分析システム

【人材支援の矢】
・地方創生コンシェルジュ
・地方創生人材支援制度
・地方創生カレッジ

【財政支援の矢】
・「地方創生推進交付金」
・「地方創生拠点整備交付金」 
・「まち・ひと・しごと創生事業費」(地方財政措置)
・地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)

引用:
[まち・ひと・しごと創生基本方針2017(概要版)|内閣府地方創生推進事務局](https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/pdf/h29-06-09-kihonhousin2017gaiyou.pdf)

地方創生は、地方の成長を促すことで地方に住む人を増やし、東京一極化による医療・介護問題の是正や、日本全体の経済成長に繋げることを目的としています。

最近は企業も、地方に向けた事業やサービスの展開に乗り出し始めています。

方言は「外向き」に変わってきている

地方に注目が集まる中、広く認知されるようになったもののひとつが、方言です。
方言は、従来はその地方でしか通じない内向きの言葉でした。しかし近年は、方言を話す主人公のドラマが人気を博したり、地方出身者の方言が流行したりと、その地方以外でも認知度が向上してきました。

>「方言は、その土地の人同士だけでなく、その土地の人と外の人の気持ちを結びつける役割があり、外に向かって発信されることが増えてきている」

引用:
[方言が、社交的になってきた。from 東北|博報堂生活総合研究所](http://seikatsusoken.jp/mirainome/9017/)

この広がりを好機として、地方へのサービスを方言を使ってプロモーションしている事例が多く生まれています。

方言を活用したマーケティング事例6選

今回は、方言を活用して人気や共感を集めている事例を6つご紹介します。

【1】飲酒費用ランキング1位の高知県で方言PR

「たっすいがは、いかん!」

これは高知龍馬空港に打ち出している、キリンラガービールのキャッチコピーです。「たっすいが」は、「手応えがない」という意味の方言で、「気が抜けているビールはダメだ!」という意味のキャッチコピーです。

高知県は1世帯あたりの飲酒費用が全国1位であることから、高知県民の方言をキャッチコピーにすることが戦略として大きな意味を持ちます。また、このキャッチコピーは空港で見かけるため、県外から訪れた旅行客が「どんな意味なんだろう」と興味を示し、キリンラガービールへの導線とすることも可能です。

参考:
高知県人の心を射止めたキリンラガーの「方言」コピー|DIAMOND online

【2】方言を正しく発音できたらコーラをゲット

2017年の夏、スウェーデンでコカ・コーラがあるキャンペーンを実施しました。ストックホルム市内で、「Dialekt-o-maten」という、方言を話すことで支払いができる自動販売機が設置されました。

スウェーデンは地域ごとに多くの方言があります。顧客は自動販売機が提示する方言の中からひとつ選び、フレーズを読み上げます。その発音を機械が判定し、正確だと判断されれば、無料でコーラを受け取ることができます。

このキャンペーンは人気を博し、SNSでは1,000万回以上シェアされています。

参考:
方言で喋ってコーラをGET!地方都市のPRに貢献して共感をよんだコカ・コーラの音声認識自動販売機|MarkeZine

【3】「ようおこし」ATMが方言で音声案内

三重県内のファミリーマートで、伊賀弁で音声案内を行うATMが設置されています。「ようおこし」など、4種類の方言で対応します。方言で音声案内を行うサービスはこれが初めてではなく、沖縄県や京都府などに続き7ヶ所目です。

地域の文化を残す社会貢献としての目的と、観光客に楽しんでもらう目的があります。

参考:
ATMが伊勢弁「よう来たなあ」 町で企業で方言脚光|朝日新聞
※このWebページは2023年7月現在公開されていないためURL削除しました

【4】フランス語みたいな方言を観光プロモーションに活用

宮崎県小林市は、観光向けプロモーション動画「ンダモシタン小林 360VR」を公開しました。前作の「ンダモシタン小林」の動画では、小林市の方言がフランス語のように聞こえると話題を集め、YouTubeで再生回数220万回を超えています。

自然の風景や茅葺きの宿など名物の景色も収められており、小林市の魅力を方言を通して訴求し成功したプロモーション事例であるといえます。

参考:
フランス語みたいな方言の宮崎県小林市、観光向け360度動画「ンダモシタン小林 360VR」公開|PANORA

【5】方言でオリジナルの動画制作キャンペーン

2017年9月、サッポロビールが「声に出して愛を贈ろう!」キャンペーンを行いました。
「サッポロ 愛のスコールホワイトサワー」を全国で発売することを記念したキャンペーンです。

キャンペーンでは、「オリジナルの愛のメッセージ動画」を制作できます。メッセージは北海道・東北・中部・関西・中国・四国・九州の方言を用意しているため、地方の方が親しみをもって楽しめる動画制作が可能です。

参考:
西日本で人気爆発「サッポロ 愛のスコールホワイトサワー」を全国発売 動画と組み合わせたキャンペーン実施|プリント&プロモーション

【6】方言をラップに乗せて青森をPR

青森県の観光PR動画「ディス(り)カバリー青森」が、YouTubeで人気を博しています。青森県の方言をつかってラップをつくり、お笑い芸人を起用してユーモアのある動画に仕上げています。

2016年12月に公開された第1弾は40万回以上、2017年8月に公開された動画はこれまでに約16万回再生されました。リンゴ農家やホタテ漁師がアピールするなど、観光PRとして多くの人に地元の魅力を訴求しています。

参考:
方言ラップで青森をPR なまり逆手の動画が人気|産経フォト