近年、人手不足に悩む企業が増えています。この課題を解決するために、優秀な人材を多く採用しようと奔走している人事担当者も少なくないでしょう。

ただ、人手不足の解消策は「新規採用」だけではありません。今いる社員の生産性を如何にして高めるのか、長く働いてもらうかも重要な施策の1つです。

社員の満足度(ES)を追求し、やりがいをもって働いてもらうための取り組みを始める企業も増えてきた昨今。社員がやりがいを持って働くためには、自社や自社サービスへの理解と愛着(エンゲージメント)が必要です。

こうした背景から今注目されているのが、顧客ではなく、社員に対して企業ブランドへの価値や理念を理解してもらう活動「インナーブランディング」です。

インナーブランディングに取り組むことで、社員の自社へのエンゲージメントを高め、自社サービスや顧客満足度の向上につなげることができます。

今回は、インナーブランディングの概念と企業の取り組み事例を解説します。
  

インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、企業が自社のサービスに関わる社員に対し、企業ブランドへの価値や理念を理解してもらうための活動のことです。自社のサービスに関わっていれば、職種や雇用形態に関わらず対象となります。

インナーブランディングは、1990年頃からアメリカで流行し、「インナープロモーション」「インナーマーケティング」とも呼ばれています。

インナーブランディングをとおして社員の自社や仕事に対する意識を変えることで、仕事への意欲の向上、サービスの質や業務効率の向上が期待できます。
  

アウターブランディングとの違い

インナーブランディングの対義語で、「アウターブランディング」もあります。

社員に対してのブランディング活動であるインナーブランディングと違い、アウターブランディングは顧客に対して自社のブランドの価値や理念を理解してもらうための活動です。
  

インナーブランディングの4つのメリット

1. 企業の一体感の醸成

自社の理念を全社員が理解することで、同じ目的に向かって意思統一できます。経営方針と現場業務にも一貫性が生まれやすいため、一体感のある組織になることが期待できます。
  

2. 業務効率・サービスの品質向上

全社員が同じ理念や目的に沿った業務を行えるため、スムーズに進行できます。また、サービスの品質も向上させることができます。
  

3. 社員の離職率低下

社員は企業への理解度が深い状態で仕事をするため、やりがいを感じやすくなります。社員の企業やサービスへのエンゲージメントが高まると、自然と顧客満足度の追求につながります。
  

4. 企業イメージの向上

社員が自社を理解し、誇りをもつことで、顧客志向が高まります。その結果、社員の不適切な行動を防止したり、顧客満足度の向上に寄与したりできるようになります。

近年は「ブラック企業」という言葉が流行していることからも、社員の評価が高い企業は顧客にとっても魅力的な企業となるでしょう。
  

インナーブランディングに必要な要素

インナーブランディングを成功させるために、取り組むべきことは以下の3つです。

1. 企業ブランドの分析
2. 社員のエンゲージメント調査
3. ブランディングに向けた施策

  

1. 企業ブランドの分析

まず、ブランディングを行う側で企業理念やビジョンを今一度見直しましょう。理念や目的に対する価値観や体系を再構築し、何を社員に伝えたいか明確にします。
  

2. 社員のエンゲージメント調査

社員の現状を測るための調査を行います。ES(従業員満足度)eNPS(従業員ロイヤルティ)などを指標とした調査をオススメします。

特にeNPSは、「自社を友人に紹介したいか」という指標であるため、社員のエンゲージメントを的確に調査できます。

参考:
働きやすい会社を目指そう!ES(従業員満足度)調査サービス20選|ferret
  

3.ブランディングに向けた施策

自社のブランディングのため、社員に向けて施策を実施します。

以下のような取り組みを継続的に行うことで、社員のエンゲージメントを高めていきましょう。

● 社員のエンゲージメントを高める施策
・ブランドムービー
・ブランドブック
・社内向けホームページ
・社内でのワークショップ勉強会
・他社との交流会など

  

事例

「顧客満足より従業員満足」を掲げるスターバックス

インナーブランディング_-_1.jpg
http://www.starbucks.co.jp/

スターバックスは、何より従業員満足度を重要視しています。

● 行動指針
・お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる
・事業運営上での不可欠な要素として多様性を受け入れる
・コーヒーの調達や焙煎、新鮮なコーヒーの販売において、常に最高級のレベルを目指す
・顧客が心から満足するサービスを常に提供する
・地域社会や環境保護に積極的に貢献する
・将来の繁栄には利益性が不可欠であることを認識する

引用元:Starbucks

スターバックスジャパンが掲げている行動指針でも、「従業員にとっての働きやすい環境」は顧客満足よりも上に表記されています。この指針には、同社の創業者であるハワード・シュルツの「従業員に誇りをもって働いてもらいたい」という強い思いが込められています。

スターバックスは、特に年間80時間の研修など、人材育成に力を入れています。そこにマニュアルは存在せず、1人ひとりの従業員が顧客満足のために自主的に行動することが求められているのです。その結果、従業員の主体性が育まれ、満足度の高いサービスの提供につながっています。

また、週20時間以上勤務するパートタイマーも含めた全社員に対して、健康保険とストックオプションを付与するなど、福利厚生も充実させています。従業員を大切にする姿勢が、企業へのエンゲージメントを高めているのです。
  

まとめ

インナーブランディングによって、社員は自社のサービスや理念をより深く理解できるようになります。社員が自社に対して理解と愛着をもつことで、自然に意識と行動も変わってくるでしょう。

これまで顧客へのブランディングや満足度向上の取り組みに注力していた方は、一度社内にも目を向けてみるのはいかがでしょうか。