商品の販売促進のために不可欠なのが、プロモーション戦略です。

プロモーション戦略とは、企業がコミュニケーションを図ることによって顧客の気持ちを変え、態度変容を促し、商品の購買活動に導くための戦略を指します。

状況に応じたプロモーションを行うことは、新規顧客の獲得だけではなく、継続的に商品を利用してくれる顧客の育成にもつながります。商品の認知度や売上を上げるため、日々、様々なプロモーション戦略を考えている、試行錯誤しているという方もいらっしゃるはずです。

そのプロモーション戦略の1つとしてよく目にするのが、顧客に商品以外の価値を提供する「顧客インセンティブ」という考え方です。商品の割引をしたり、おまけを付けたりと、どれもわかりやすく顧客にメリットを伝えられるため、採用している企業も多いのではないでしょうか。

しかし、ただ闇雲におまけを付けたり、割引をしたりするだけでは結果に結び付けられるとは限りません。背景として、顧客の心理や影響を把握しておくことが必要不可欠です。

今回は、顧客インセンティブ施策の種類を取り上げ、概要と効果的な実施について解説します。

これからの年末年始のイベント盛りだくさんの時期だからこそ、実際にプロモーション戦略を検討している方もいるはずですので、ぜひお役立てください。
  

顧客インセンティブとは

インセンティブ(Incentive)は、「刺激」「動機」「報奨金」という意味を持ち、そこから「インセンティブ」とは、何らかの報酬を期待させることで、人の意欲を刺激する働きのことを指します。

前述した顧客インセンティブだけではなく、企業が社員に対して、優れた成果の報酬として用意する「予算達成インセンティブ」などもあります。

ちなみに、顧客インセンティブとは、顧客に何らかの報酬や特典を期待させ、商品の購買意欲を刺激したり、印象を良くしたりすることです。
  

顧客インセンティブを実施するメリットと目的

顧客インセンティブを実施するメリット

当然ですが、顧客は企業の商品を購入して初めて、価値を享受できます。そのため、購入前には「本当に価格通り、価格以上の価値があるのか」と悩みます。

一方顧客インセンティブは、*顧客がお金などのコストを支払う前に、企業から価値を享受できます。*そのため、顧客が商品の購入に迷ったとき、顧客インセンティブによってその懸念を軽減することができるのです。

例えば、「定価の新商品」と「発売記念で値引きされている新商品」であれば、後者の方が購入までのハードルが下がるでしょう。顧客インセンティブを活用することで、商品への購買意欲を刺激したり、印象を良くしたりできます。
  

顧客インセンティブを実施する2つの目的

顧客インセンティブを実施する目的は、「新規顧客の獲得」「既存顧客の育成」の2つです。下記では、それぞれについて詳しくご説明します。
  

1. 新規顧客の獲得

ほとんどの顧客は、まだ利用したことのない商品やサービスに対して警戒心をもっています。

人は、新しい商品を利用することで、これまでなかったメリットを得られる可能性があったとしても、「得したい」という気持ちより「損をしたくない」という気持ちの方が強く働きます。これは、行動経済心理学で「損失回避の傾向」と呼びます。

この「損失回避の傾向」を乗り越え、顧客に「試してみようかな」と思ってもらうために、何かしらの付加価値、つまり顧客インセンティブの提供が有効な手段となりえます。

2. 既存顧客の育成

既存顧客は、既に自社の商品に対して好印象をもってくれています。しかし、競合商品が次々と販売される昨今においては、その購買意欲がいつまで続くかは保証できません。

また、SNSなどで顧客自身が発信することも増えてきた中で、既存顧客の*エンゲージメント(商品への愛着心)*を高めることが結果的に新規顧客の獲得に繋がる場合もあります。

既存顧客に対しては、より長く自社商品を利用してくれるような顧客インセンティブ施策を継続的に行っていきましょう。

参考:
「自社の情報は、知らない人にとって砂の1粒と同じ」- 佐藤尚之(さとなお)氏が「ファンを大事にするべき」と語る理由 #熱狂ブランドサミット2017|ferret
顧客ランク向上のための提供サービスアイデア集 ― ECサイト顧客マネジメント戦略第4回|MarkeZine(マーケジン)
  

顧客インセンティブの種類

顧客インセンティブには、様々な方法があります。

今回は、下記5つの種類を解説します。

1. 値引き
2. 特典(おまけ)
3. プレゼント
4. 懸賞
5. ポイント

  

1. 値引き

値引きは、読んで字の如く、商品自体の価格や、購入時の手数料・送料から値引きする方法です。どんな顧客にとっても同じ価値であるお金インセンティブであるため、その価値が明確で分かりやすく、用意する側の手間もかからないことが特徴です。

参考:
西友、また値下げへ 年末に向け掃除用品など644品目|朝日新聞
  

考えなしの値引きは危険?

大幅に値引きしたセール後、元の価格に戻った途端に売上が激減してしまうことがあります。これは、前述した「損失回避の傾向」のように、人はポジティブな要因よりネガティブな要因に影響を受けてしまうことが原因です。

定価5,000円の商品を3日間限定で2,500円で販売し、4日後定価に戻します。すると、顧客は「5,000円が2,500円に下がった」印象より「2,500円だった商品が5,000円に上ってしまった」印象を強く抱きます。

そのため、値引きをする際は、特定の商品に対する顧客の「基準価格」を下げてしまわないよう注意が必要です。このように顧客にとっての基準が固定されてしまうことを、「アンカリング効果」と呼びます。

例えば、「A商品を単品で値引きする」より「A商品とB商品の同時購入で値引きする」など、商品単品の値引きの印象を強めないような工夫も有効です。

参考:
営業マンなら知っておいて損はなし!「アンカリング効果」の基本と活用方法を解説|ferret
  

2. 特典(おまけ)

販売する商品に、別の商品やオリジナルグッズなどをおまけで付ける方法です。クーポン券や、壁紙ダウンロードなどのデジタルインセンティブなども効果的でしょう。
  

実用性・汎用性のあるおまけ

特典を付ける場合は、実用性・汎用性のあるものがオススメです。

例えば、テレビショッピングでは、販売する商品に関連のある商品を特典にする場合がよくあります。販売商品のケアや、一緒に使うことで効果があがる商品などです。

購入に迷う顧客を「もうひと押し」できる商品を特典にすることで、購入意欲を高めましょう。
  

3. プレゼント

新商品のサンプルや、誕生日プレゼントなど、顧客が何も購入していなくても付加価値として提供する方法もあります。

参考:
お誕生日は、ポケモンセンターへ遊びに行こう!|ポケットモンスター
  

既存顧客へ継続的な価値を提供する

ただ、定期的にDMなどの広告を送るだけでは、顧客にとってメリットは多くありません。新商品が出たらサンプルを配布、誕生日月には特別なプレゼントを送ることで、顧客にとって価値のあるものを提供し、イメージの向上を図れます。

また、人は相手から何かしらの施しを受けると、こちらもお返ししなければと思う傾向があります。これを「返報性の原理」といいます。「返報性の原理」を活用し、更なる購買活動につなげることも一手でしょう。

参考:
相手に尽くすことが良い影響を生む!「返報性の原理」を活用したビジネスを実践しよう|ferret

4. 懸賞

応募者を集め、当選者に景品を提供する方法です。懸賞には、「オープン懸賞」と「クローズド懸賞」があります。

オープン懸賞

オープン懸賞とは、幅広く応募者を集める形式です。購入履歴や利用履歴がない人も応募できます。広告やSNSで拡散し、認知度を上げることが目的です。

参考:
「羽生結弦グッズ」が当たる懸賞にファンが殺到!|exciteニュース
  

クローズド懸賞

クローズド懸賞とは、自社の商品購入や会員登録など、何かしらの取引が条件で応募できる形式です。懸賞の景品によって、購入や登録への行動を促すことが目的です。

この2つの懸賞は、異なる法律によって規制されているため、実施する際は注意しましょう。

参考:
懸賞を企画してファンと交流しよう|ferret
2万件応募のキャンペーンを支えたアプリとは?~カルビー「ポテリッチ」のクローズド懸賞|AdverTimes
  

5. ポイント

ポイントは、飲食店や小売店でよく活用されている方法です。

紙、または電子版のポイントカードを作成し、利用に応じてポイントを加算していきます。貯まったポイントは、次回利用時の値引きや、オリジナル商品などと引き換えることができます。

既存顧客のリピート利用の促進に有効です。また、近年はポイントを電子化して管理することで、顧客の行動履歴などを蓄積し、別の販売促進活動に活かす企業も増えています。
  

まとめ

顧客インセンティブの施策は、売上増加だけではなく、顧客のエンゲージメント向上にもつながります。長期的に商品のファンを増やしていくことにも一役買ってくれるでしょう。

そのように顧客の心に響く施策を行うためには、顧客への理解が何より重要です。ただ、見栄えのいい施策だけではなく、実施後も継続的に効果を得られるような戦略を立てましょう。

これまで「何となく値引きをしていた」方は、ぜひ自社の戦略を見直してみてください。そして、12月、来年1月の年末年始シーズンにむけて準備をしてみてはいかがでしょうか。