BYODとビジネスチャットがビジネスを変える!押さえるべき3つのポイント
ビジネスシーンにおけるコミュニケーションが占める割合は60%以上と言われており、今も昔も重要度は変わっていません。かつて電話がメインだったビジネスコミュニケーションは、すぐにメールが主役になりました。
メールの文化が根づいて10年以上が経過した現在は、リアルタイムで即効性があり、より双方向なやり取りが実現できる「ビジネスチャット」に注目が集まっています。
この連載は「ビジネスチャットが変えるワークスタイル」を掲げ、ビジネスチャットがもつ特徴を踏まえつつ、それが既存ビジネスシーンにどのような影響を与えていくのか、またどのようなメリットをもたらすのかを実例を交えてご紹介していきます。
第5回目のテーマは、BYODの導入とビジネスチャットの活用です。
よく耳にする言葉「BYOD(Bring Your Own Device)」とは
皆さんは、BYODという言葉を聞いたことがありますでしょうか?
BYODは、Bring Your Own Deviceの頭文字を取った言葉で、企業の従業員が私物の端末を持ち込んで業務で利用することを意味しています。昨今、様々な企業が取り入れ始めている概念で、日本でも中小企業を中心に利用が増えている現状があります。
参考:
国内のBYODの利用台数はスマートフォン600万台、タブレット259万台に拡大|ITpro
調査に寄ると、BYODが拡大していくのは "サービス業" と "流通業" が顕著であり、それらの業種は従業員の多さやスマートフォンの配布状況が拍車をかけています。
日本でのBYOD導入増加の背景には、やはりスマートフォンの業務利用の増加が影響していて、実際にPCでできる作業がスマートフォンで代替できることも多く、時間や場所にとらわれない働き方を実現できるとして、積極的に企業がスマートフォンの導入を促進していることがあげられます。
さらに、クラウドサービスの台頭により、どんな端末からもマルチデバイスで企業がもつ情報リソースにアクセスすることで、業務効率向上や情報管理を統一することも容易に可能になりました。
ビジネスチャットもBYODと非常に相性の良いサービスとして認知され始めており、政府が主導する働き方改革においても、労働に関する様々な課題や効率面の部分にテコ入れする上で、セットで考える企業もかなり増えてきている印象です。
便利なだけではない!BYOD導入のメリット・デメリット
一方、BYODにはメリットだけではなく、もちろんデメリットも存在します。導入する上で必ず検討する必要があります。
●メリットについて
メリットとしては、やはり自分が普段使い慣れた端末を利用するので、基本的な操作に迷うことなく生産性も向上します。特に、普段使いしているので、どのようなシチュエーションでも時間・場所にとらわれず、業務を行う上で最も効率的に運用が可能な点があげられます。
また、端末を新たに購入したことで支給する必要がなくなるため、単純なコスト削減になるという点もあげられます。
●デメリットについて
デメリットは、セキュリティ上の懸念になります。かつて、業務用端末はセキュリティのためのソフトウェアや資産管理ツールが多くインストールされ、万が一の紛失や盗難にも対応することが常識でしたが、個人端末となるとそれらを導入するのはハードルになります。
また、業務に利用するということで通信費や端末代金を負担するのかしないのかなどの議論にもなり、これらの点を運用上・導入するソリューションの機能上どう差別化するのがポイントになってきます。
ビジネスチャットとの相性と3つの議論ポイント
BYODになくてはならない概念としては、コミュニケーションツールをどうするかという点です。
単にメールを見るだけでいいのか、チャットのコミュニケーションをさせるのか、社内ポータルの掲示板へのアクセスをさせるのか……など、必ず検討すると行っても過言ではありません。
業務効率化や情報管理の統一という面で、BYODの目的意識とビジネスチャットは非常に相性が良いと考えられています。
もともとプライベートで利用しているSNSとビジネスでの利用を切りわけたいという強いニーズもビジネスチャット導入の大きなモチベーションです。それをBYODで実現することで、様々な利便性の向上が見込まれることになります。
ここでは、ビジネスチャットだけではなく、コミュニケーションツールをBYODで導入する際のポイントをあげていきます。
1. 個人用端末のセキュリティ
1番最初に検討する必要があるのはセキュリティ面です。企業のビジネスコミュニケーションはまさにインフラとも言え、実に様々なやり取りが展開される場です。その中には単純な業務連絡、お客様からの電話メモ、会議の議事録などセンシティブな情報がやり取りされることも珍しくありません。コミュニケーションそのものが企業の大事な資産でとなりうる時代だからこそ、セキュリティ面をしっかり検討する必要があります。
以前から、スマートフォンやタブレット端末に "外部からロックを掛けたり中身のデータを削除したり、現状を把握する" MDM(Mobile Device Management)サービスというものが存在し、数多くの世の中にリリースされていますが、BYODの個人端末にそれらを入れるのはハードルがあります。
だからこそ、コミュニケーションツールの機能や管理メニューでセキュリティ面を担保できるソリューションを選択することが重要になってきます。
ビジネスチャットもIPのアクセス制限や携帯端末固有のIDを使った端末ID制限、アプリ自体にロックする機能、送信した内容を取り消す機能など多種多様なシステムが利用できることも多く、選定時の参考として検討する企業が多いです。
アプリロック機能と端末IDの制限機能のイメージ画面
しかしながら、セキュリティは利便性とトレードオフになることも多く、会社のポリシーに合わせてセキュリティを”緩める”ことも柔軟に対応できるソリューションを選択することで、管理側の負担も軽減されます。
柔軟にセキュリティポリシーが設定でき、自社にとって最適化されたツールになることでスムーズな導入に役立つことになります。
2. 業務時間外の通知
業務時間外の通知の問題は、アルバイトや派遣社員などで問題になる議論ポイントです。ビジネスチャットは、すぐにどこでもコミュニケーションが取れることがかなりの利便性を感じていただける点になりますが、業務が終わった後も通知を受け取れることが社内の基準として問題ないのか、という点はクリアする必要があります。
ビジネスチャットもそういったニーズに配慮が可能なソリューションも多く、ユーザーが自分で通知をオフにしたり、個別のグループごとに通知を定期的に切ることもできる場合も多いです。
しかし、この場合、問題となるのが”緊急時”に連絡がとれるのかどうかという点です。ビジネスチャットに寄っては、通知がオフの状態でも通話はかならず通知される、メンション機能で送信先を指定した時は必ず通知されるなど工夫している製品もあります。
個別のグループの通知オフ、メンション機能のイメージ画面
いずれにしても、業務時間外の配慮と緊急時の対応の両面でバランスが取れるビジネスチャットをBYODでは検討することが大事になってくると考えています。
3. 責任分岐点と導入時の配布について
疎かになりがちなのが、運用面の課題として、配布範囲と責任分岐点の考え方についてです。
社用端末を利用する場合、コミュニケーションツールを利用する際は社用端末を配った分の運用費が発生します。
仮に、私用携帯を業務利用する場合は、発生した通信パケットの負担をどうするのか、万が一インシデントが起きた時の対応はどうするのか、など利用者と企業間での取り決めが非常に重要になってきます。
企業によっては一律の通信費を支払う場合もありますし、使いたいと手を上げた人だけにIDを配布するといった対応を取っている企業もあります。コンプライアンスにもかかわるので、あらかじめBYODで社内のコミュニケーションを行う際は、運用上の取り決めと運用中の責任分岐についてよく考える必要があります。
実際のBYODとビジネスチャット活用例
下記では、実際に企業がどのようにBYODを活用しているかをご紹介していきます。
例1. 大手通信機器販売商社の場合
通信機器販売店を多く持つこの会社では、営業活動や販売活動でスマートフォンを扱うことも多く、働き方改革の一環でビジネスチャットを全社で展開することになりました。基本的には社用端末を配布していますが希望者にはBYODでの利用もありとしました。そこで行ったのは”誓約書”を書かせるという運用です。
誓約書には通信費の一分負担と情報漏えいについての注意事項などが盛り込まれ、その上でIDを配布して、今全体の約3割がBYODでの利用になっています。
この会社では、BYODでビジネスチャットを導入したおかげで営業の店舗間と本社セールスサポートのやり取りにおいてかなりのスピードアップを行うことができ、社員同士だけでなく、抱えている販売店のスタッフにもBYODで利用することを促進し、さらなる売上アップに貢献することができています。
セキュリティ面でも効果が出ていて、BYODを申請したユーザーはファイル送受信を禁止し、アプリロックをかけることで担保し、1ヵ月でほぼ全社員にスムーズな導入をすることができていました。
例2. ファーストフード飲食店の場合
ファーストフード店においてアルバイトと店長(エリアマネージャー)との連絡手段にビジネスチャットを導入いただくことになりました。
背景として、今までの店舗の現場では個人のチャットツールやSNSを利用してしまうケースが多く、アルバイトとのやり取りについてはトラブルが発生した時にエビデンスとして確認が不可能な面もある点がありました。そこでBYODを利用して、アルバイトスタッフにもビジネスチャットを導入してもらうことになりました。
その会社では、BYODを利用するアルバイトスタッフと社用端末を利用する本社ユーザーで、ロール(役割ごとの設定)による違った権限設定を行いました。そうすることでセキュリティポリシーを一元管理し、店舗ごとに違った設定を行う運用ができることで柔軟な対応を実現していました。
ロール毎のポリシー設定についての管理画面のイメージ
わかりやすく説明すると、A店舗では本社の直営店なのでスタッフも全て本社所属のメンバーで構成されているので、動画やファイルを送ることができるように設定しました。逆に、B店舗はアルバイトスタッフが半分入るので、パケット代に配慮して動画は禁止など、本社で運用を自在にコントロールすることでポリシーに合ったことを実現しています。
ビジネスチャットをBYODで導入することで、作業手順をpdfとしてマニュアルを共有したり、フードの作り方を動画で共有してアーカイブしたりとスマートフォンを利用して様々な業務効率アップをすることができました。
それによりアルバイトスタッフから「プライベートと切りわける事ができる」という意見が出てきたり、また社員の入社・退職によって生じるメンバーの追加や削除という対応が発生した際も管理画面で対応が簡単に。「辞めた後に残ったログやグループ、新しい人の招待などといった煩雑な作業」がなくなり、一元化して効率化することができました。
まとめ
法人向けのクラウドサービスの発展とともに企業におけるBYODの利用はどんどん加速して増えることが予想され、またビジネスチャットを始めとする社内コミュニケーションツールとは切っても切れない関係にあると思います。
今回はBYODとビジネスチャットの検討のポイントとして以下の3点を挙げました。
1. 個人用端末のセキュリティ
セキュリティ設定は利便性とトレード・オフの関係にあるので、柔軟にセキュリティを”緩める”こともできるようにする必要がある
2. 業務時間外の通知について
業務時間外の考え方についてよく検討し、通知をする・しない設定ができる必要がある。また緊急時で連絡が必ず取れるような”抜け道”も考える
3. 責任分岐点と導入時の配布について
BYOD利用における責任と運用に関して費用や制度面もしっかり考える必要がある
これらの点をふまえ、この記事が自社でのビジネスチャットの導入やBYODの利用が可能なのかどうかを考え、クラウドサービスの選定時の着目点などの参考にしていただけたら幸いです。
- デバイス
- デバイスとは「特定の機能を持つ道具」を表す語で、転じてパソコンを構成するさまざまな機器や装置、パーツを指すようになりました。基本的に、コンピューターの内部装置や周辺機器などは、すべて「デバイス」と呼ばれます。
- タブレット
- タブレットとは、元々「板状のもの」「銘板」といった意味の単語です。パソコンの分野で単にタブレットといえば、「ペンタブレット」や「タブレット型端末」などの板状のデバイス全般を指します。ここでは主にタブレット型端末について説明していきます。
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- アプリ
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