アメリカのAmazonやWalmart(ウォルマート)といった大手企業が活用している「リテールメディア」は、近年日本でも注目を集めています。

リテールメディアとは何か、そして、小売企業と広告主はリテールメディアをどのように活用すべきかについて、株式会社ヤプリの伴大二郎氏に伺いました。

プロフィール

伴 大二郎氏
株式会社ヤプリ 専門役員 エグゼクティブ・スペシャリスト

小売業界においてCRMの重要性に着目、データ活用の戦略立案やサービス開発に従事後、2011年にオプト入社。2021年に合同会社db-labを設立。2021年6月より株式会社ヤプリのエグゼクティブスペシャリストに就任、2023年4月より同社専門役員。

目次

  1. リテールメディアとは
  2. リテールメディアの本質は「広告」ではなく「メディア」
  3. リテールメディア活用でやるべきこと
  4. 国内でリテールメディアが伸びていくために必要なこと

リテールメディアとは

ferret:
まず、「リテールメディア」とはどのようなものでしょうか。

伴:
リテールメディアは、小売企業が保有するECサイトアプリ店舗サイネージなどを広告枠として活用する仕組みです。
広告主にとっては、広告の出稿先が増えるだけでなく、顧客とダイレクトにコミュニケーションを取ったり、高い精度でターゲティングしたりできる手段が増えることになります。

リテールメディアとは

リテールメディアが注目される背景

伴:
リテールメディアが注目されるようになった背景として、「サードパーティCookie規制」が進んだことが挙げられます。

もともと、デジタルツールで小売が顧客とつながるような施策を進めていく流れは、以前からありました。それに加えて、サードパーティCookieの利用が制限されるようになったことで、ファーストパーティデータによる高精度なターゲティングが可能なリテールメディアに更に注目が集まっています。

データが小規模な段階では、メルマガ配信やWebサイトへのバナー設置によるタイアップ、クーポン配布などの取り組みにとどまっていましたが、小売側に顧客行動のデータが溜まり、リテールメディアの仕組みが整備されたことで、ネットワークとして開放する流れが強まっています。

日本でもこれから注目が高まっていく

伴:
現在、アメリカではAmazonやWalmartといった大手企業がリテールメディアを運営し、中小規模の小売企業も参入し始めているため、日本でもこれから注目が高まっていくと予想されます。

リテールメディアの成長

出典:Insider Intelligence
※リテールメディアは、購買につながる認知獲得の手段として、検索(サーチ)、SNSと並び、第3のメディアへと成長している。

ferret:
リテールメディアの事例は、すでに日本国内にあるのでしょうか。

伴:
セブン&アイ・ホールディングスや、マツモトキヨシなどのドラッグストアなどの事例が良い取り組みだと感じます。自社の仕入れ先とのタイアップや、くじ引きでクーポンがもらえるキャンペーンなどを早くから取り入れている印象です。

小売業とメーカーのタイアップ自体は、従来からありました。そこに、リテールメディアの仕組みが登場したことでルールが分かりやすく整理されてきたという流れが、現在の状況です。

リテールメディアの本質は「広告」ではなく「メディア」

ferret:
リテールメディアは「新しい広告の形」と捉えてよいのでしょうか。

伴:
本質的には広告よりも、読み物などのコンテンツに近い性質があります。「メディア」と名付けられている理由もそこにあるのでしょう。

確かに「広告」ではあるのですが、そのイメージが先行しているため、「リテールメディアは広告収益で儲けるもの」と認識されがちです。広告収益で儲けるというよりも

自社のコンテンツをより豊かにし、自社のWebサイトやアプリの滞在時間を長くしたり、来訪頻度を高くしたりすることで売上につなげるもの

と捉えた方がいいと思います。

基本的に広告は顧客とのコミュニケーションにおいて邪魔になってしまうものです。そうではなく、リテールメディアでは記事広告のような読み物や、顧客体験に連動したコンテンツを出すことが重視されます。

小売業が運営するオウンドメディアの一面を様々な企業に開放し、顧客体験をより豊かにしていくということがリテールメディアの本質的な役割なのです。

リテールメディア活用でやるべきこと

ferret:
リテールメディアを利用する場合、小売側や広告主側はどのような視点で取り組んでいけばよいのでしょうか。

小売側は、雑誌の編集者のような役割を担う

伴:
小売側にとっては、一番大事なことは顧客体験を良くすることです。広告を入れることでむしろ顧客体験が悪くなるのであれば、導入しないほうがよいと思います「広告収入を増やそう」という目的意識ではなく、

顧客体験を良くするためにメディアを盛り上げよう

いうマインドセットが重要です。

リテールメディアを運営する小売側は、自社の顧客にとって相性の良い企業を選別し、コンテンツをコントロールする必要があります。イメージとして近いのは雑誌広告ですね。

例えば、ゴルフ雑誌に車の広告を載せる場合「トランクにゴルフバックが何個入る」というコンテンツを作ったり、アウトドア雑誌に載せる場合は「キャンプなら、これだけの容量があると便利」など、ユーザーの興味に沿ったコンテンツを作るのなら嫌味がありません。

リテールメディアに掲載するコンテンツの選別においても、自社の顧客に不快な思いをさせないために、雑誌の編集者のような役割を小売側が担うことが大切です。

また、リテールメディアの広告を見た顧客の反応、実際に行動変容しているのかの効果検証も、小売側がやるべき取り組みです。

広告主側は、自社と相性のよいメディアを見つける

伴:
リテールメディアに広告を出稿する広告主側としては、自社と相性が良いメディアを見つけることがポイントです。ダイエット商品を宣伝するならコスメ業界、車の宣伝ならゴルフやアウトドア業界など、相性が良さそうな業界を見つけることで、より自然に受け入れられやすいコンテンツが作れます。

その上で、競合の広告主と比較して選ばれやすいコンテンツを用意することが重要です。

弊社ヤプリでは、リテールメディアのサービス「Yappli for Retail App Ads」を2023年5月から提供開始しました。アプリをメディアとして、スタンプラリーや診断コンテンツなどを設置できるものです。小売・広告主の双方から多くのお問い合わせをいただいており、リテールメディアへの注目度を感じています。

国内でリテールメディアが伸びていくために必要なこと

ferret:
今後、リテールメディアが国内で伸びていくためには、どのようなことが必要でしょうか。

伴:
顧客と直接つながるアプリやECサイトの会員数が多く集まり、アクティブ率が高い状態になることが最低条件です。

現在はまだ、「アプリを作ったものの、来店時にポイントカードを出すだけ」、「月に1回プッシュ通知を送っているだけ」など、アクティブな運用ができていないケースが多くみられます。そのような状態でリテールメディア化しても十分な効果は見込めません。

売れていない雑誌には広告がつかないのと同様に、リテールメディアが伸びていくためにはまずメディアとしてコンテンツを充実させ、盛り上げることが必須だと考えています。

アプリとECサイトのリテールメディアで顧客行動が理解できるようになると、次の段階として店舗サイネージにもリテールメディアを展開できると考えます。

ferret:
ありがとうございます。顧客の体験価値を高める手段として、今後のリテールメディアの成長が期待されますね。