会社で社員にコンピュータを配布するのは、社員の私物デバイスを使うのと比べセキュリティ上安全だと言われています。しかし、それよりはるかに廉価で、より安全なシステムがあるとしたら、どうでしょう?

その鍵を握るのが、仮想デスクトップ(VDI)と呼ばれるサービスです。代表格となるサービスがAmazonが提供しているAmazon WorkSpacesというサービスで、TechTarget Japanなどもさまざまな導入事例を紹介しています。

今回は、会社での導入も簡単なAmazon WorkSpacesで始める「仮想デスクトップ」入門をご紹介します。端末を社外に持ち出す情報漏洩リスクも軽減され、セキュアなリモートワークを実現するWorkSpacesは、社員の働き方をも変えるかもしれません。

参考:
「AWS」ってどういう仕組み?「Amazon Web Services」の全体像と主要サービスを解説

Amazon WorkSpacesとは?

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Amazon WorkSpacesとは、Amazon Web Services(AWS)上で提供されている、マネージド型仮想デスクトップコンピューティングサービスです。より分かりやすく言えば、コンピュータをあらゆる端末からクラウド上で操作できるようになるサービスです。

ここで、「クラウドってファイルを保管するところじゃないの?」という疑問が思い浮かぶかもしれません。

確かに『クラウド』という言葉をその意味で使うこともありますが、その場合はクラウド上の保管庫である『クラウドストレージ』のことを指します。Amazon WorkSpacesでは、デスクトップ自体をクラウド上に置いてしまい、iPadやMac、Kindle Fireといったさまざまな物理的端末から仮想のコンピュータにアクセスすることができるのです

Amazon WorkSpacesを利用するメリット

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stock.io

もう一つ、「コンピュータからなぜ仮想コンピュータにアクセスする必要があるのか?」ということを思い浮かべるかもしれません。Amazon WorkSpacesは、個人的なコンピュータの使用というよりも法人使用の方が圧倒的に多いので、法人のユースケースを考えてみましょう。

1. IT部門による事前設定(キッティング)の必要がない

通常、会社が社員にコンピュータを配布する際、コンピュータを初期設定のまま渡すのではなく「キッティング」(kitting)と呼ばれる作業を行ってから、社員に配布します。

キッティングとは、WordやExcelなどのOffice製品やセキュリティソフトなど、会社で使うのに最適化して「キット」化することです。

Amazon WorkSpacesを使えば、物理的にコンピュータを開かなくとも事前に1回のキッティングを行うだけで済みます。さらに、キッティング内容を途中で変更することもできるので、IT部門の管理が行いやすくなります。

ユーザーに提供するアプリケーションは、Microsoft Officeなど、事前設定されたものの中から選択できます。従来から使用しているサードパーティー製アプリケーションや社内アプリケーションのデプロイも可能です。

2. 新しくコンピュータを配布しなくともよい

また、個人が持っているバラバラな端末からでも会社のコンピュータにアクセスできるので、社外にコンピュータを持ち運ぶという概念がなくなります

当然ながら、新しくコンピュータを配布する必要もないのです。物理コンピュータをアップグレードするために交換する必要性もなくなります。

ユーザーは、以下の端末から、OfficeをインストールしたWindows環境にアクセスすることができます。

  • iPad
  • Mac
  • Windows
  • Android Tablet
  • Chromebook
  • Kindle Fire HDX
  • ChromeまたはFirefox Webブラウザ

また、ユーザーは新しくWorkSpace用にIDを発行しなくとも、企業ネットワークの既存の認証情報を使ってログインし、シームレスにアクセスすることができます。

3. セキュリティ効率が高まる

Amazon WorkSpacesを導入することで、かえってセキュリティ効率も向上するでしょう

個人の端末で「会社用の仮想デスクトップ」にアクセスする、というのにセキュリティ上の不安を感じるかもしれませんが、実際にはその逆です。エンドユーザーデバイスに企業データが一切保存されないという安心感を得ることができます。

また、Amazon Web Services(AWS)上で提供されているAWS CloudWatchを利用することで、システムやログの監視を行なったり、アラームを設定することもできます。

物理コンピュータの配布では手が届かない細やかなところまでリアルタイムで監視することができるようになります。

4. プリントも可能

「仮想デスクトップだからできることも限られるのでは」と倦厭されるかもしれませんが、Amazon WorkSpaceでは使用している端末にプリンタドライバが印刷されていれば、印刷を行うことも可能です。

Amazon WorkSpaceの始め方

Amazon WorkSpacesを利用するには、AWSのアカウントが必要です。まだアカウントを作成していない方は、下記の記事を参考に作成してみてください。

参考:
もうユーザーを待たせない!AWSで既存のホームページを一気に高速化させる方法|ferret [フェレット]

1. 新しいWorkSpaceを作成

マネジメントコンソールのAWSサービスの検索窓で、「WorkSpaces」と入力し、Amazon WorkSpacesに移動します。

移動したら、リージョン選択画面に移動します。どの場所のサーバーに仮想デスクトップを設置するかを選択します。

ここでは、一番廉価な米国西部 (オレゴン)を選んでみましょう。なお、米国東部 (オハイオ)が選択できないのと、国内でアジアパシフィック (東京)を選択すると、別途利用料に8%の消費税がかかるので注意してください。

リージョンを選ぶと、すぐにスタートできるウィザード画面に進みます。「今すぐ始める」をクリックします。

次に、「高速セットアップ」または「詳細設定」を選びます。ここでは、初心者向けの解説のため「高速セットアップ」を選びます。

続いて、Amazon WorkSpacesの開始方法を指定します。「バンドル欄」ではWindows 7・10とOffice 2010・2013・2016のバージョンの組み合わせ、およびCPUの数やストレージ容量などを指定します。

ここでは、試しに使ってみたい初心者の方向けに、バンドルを無料対象枠の「Standard with Windows 10」に、言語を「Japanese (日本語)」に設定します。また、以下にユーザー情報を入力し、準備ができたら青い「WorkSpacesの起動」ボタンをクリックします。

すべてのバンドルには、Internet Explorer 11、Firefox、7-Zipが同梱されていますが、WorkSpacesを起動後、独自のアプリケーションをWorkSpacesにインストールすることも可能です。

2. WorkSpaceを起動

次に、「WorkSpacesコンソールの起動」ボタンを押すと、「WorkSpacesの起動中」という表示が出現します。設定にもよりますが、最低20分を要するので、ここで少々お待ちください。この間にWorkSpaceへの接続手順を確認しておいてもよいでしょう。

WorkSpaceが作成されて20分ほど経つと、ステータスのPENDINGがAVAILABLEに変わります。

AVAILABLEになると、メールが送信されるので、手順に従い、WorkSpacesクライアントのダウンロードとログインを行います。なお、クライアントをインストールせずにブラウザでログインすることもできます。

無事にログインできると、上記のように対応デバイスの画面上で仮想のWindowsコンピュータを操作することができます。

もちろん対応デバイスインターネットに繋がっていればインターネットにも接続したり、外部からダウンロードしたソフトウェアをインストールすることも可能です。

まとめ

社内で仮想デスクトップを利用する仕組を整えれば、自社で環境構築を行う「オンプレミス」体制に比べて大きなコストカットを行うことができます。非常に簡単なので、お時間があるときに試してみてはいかがでしょうか。

Amazon WorkSpacesを使うと、コストや安全面だけでなく、多様な働き方にも対応することができます。さまざまな規模に対応することができるので、まずはITチームで使ってみて、便利であれば社内に広げていくのもよいでしょう。