働き方改革により長時間労働削減の取り組みが行われているなか、業務の効率化が求められるようになっています。

人事労務や経費精算など紙ベースの作業に関しては、近年登場したITツールを利用することで、大幅に削減できるようになってきました。

これらの業務をテクノロジーで効率化することで、企業にはどのような変化があるのでしょう。また、テクノロジーの導入は人々の働き方にどのような影響を与えるのでしょうか。

今回は、働き方を考えるカンファレンス2018「働くを定義∞する」で行われた、「IT×生産性向上で働き方をどう変えて行くか」をテーマにしたトークセッションの様子をレポートします。

登壇者紹介

三村 真宗氏(株式会社コンカー 代表取締役社長)

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1993 年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、日本法人の創業メンバーとしてSAP ジャパン株式会社に入社。以後13 年間に渡り、ビジネス・インテリジェンス事業本部長、社長室長、CRM 事業本部長、製品マーケティング本部長、戦略製品事業バイスプレジデント等を歴任。2006 年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、金融、通信、ハイテク企業等の戦略プロジェクトに従事し、IT 戦略・IT ビジョンの策定、ソフトウェア事業のBPR 等を担当。2009 年、ベタープレイス・ジャパン株式会社 シニア・バイスプレジデント。2011年10月より現職。

宮田 昇始氏(株式会社SmartHR 代表取締役CEO)

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SmartHRを開発する株式会社SmartHRの代表取締役CEO。2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年11月に自身の闘病経験をもとにしたクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を公開。利用企業数は公開後2年でおよそ7,500社にまで拡大。
IVS、TechCrunch Tokyo、B Dash Campなど様々なスタートアップイベントで優勝。HRアワード 2016 最優秀賞、グッドデザイン賞 2016、東洋経済すごいベンチャー100にも選出。

【進行】日比谷 尚武氏(一般社団法人at Will Work理事/Sansanコネクタ/ロックバー経営 DJ&バーテン)

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学生時代より、フリーランスとしてWebサイト構築・ストリーミングイベント等の企画運営に携わる。その後、NTTグループに勤務。
2003年、株式会社KBMJに入社。取締役として、会社規模が10名から150名に成長する過程で、営業・企画・マネジメント全般を担う。
2009年より、Sansanに参画し、マーケティング&広報機能の立ち上げに従事。並行して、OpenNetworkLabの3期生としても活動。
現在は、コネクタ/名刺総研所長/Eightエヴァンジェリストとして社外への情報発信を務める。
並行して、 株式会社PRTable エバンジェリスト、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会 広報委員、一般社団法人 at Will Work 理事、ロックバーの経営 なども務める。

引用元:働き方を考えるカンファレンス2018「働くを定義∞する」

テクノロジーを導入する企業の苦労や成果

コンカーもSmartHRも、それぞれITにより業務を効率化できるサービスです。これらのツールを導入する企業にはどのような特徴があるのでしょうか。

「どのような会社がサービスを積極的に取り入れようとしているのか。また、導入の際に企業がぶつかるポイントや導入後の成果についてお聞かせください。」(日比谷 氏)

「働き方改革の広がりと共に、生産性改善のために導入する企業が増えています。しかし、企業によっては経費規定をなかなか見直せず導入できないという問題もあります。」(三村 氏)

三村氏によると、以前は経費精算の不正防止のためにサービスを導入する企業が多かったと言います。現在は、不正防止よりも生産性向上のためにサービスを取り入れる企業が増えていると話します。しかし、「経費精算」という業務の都合上、製品のメリットを理解してもらっても経費規定を見直すことが困難な企業もあり、スムーズにサービスを導入できない場合もあるそうです。

一方、宮田氏が提供しているSmartHRは、すんなりと導入を決める企業が多いと話します。社会保険周りの業務は未だに紙ベースが基本で時間がかかります。それらの業務を全てデジタル化することで、人事総務の負担が大きく減るからです。

「勤怠管理はソフトウェア入ってるけど、社会保険周りは紙が多いから、製品を知ってもらえばすんなり導入してもらえることが多いです。人事業務の方は残業や休日出勤が多かったが導入後減ったと言ってもらえます。その分、制度改革に費やせる時間が増えているそうです。」(宮田 氏)

人事労務の負担が減ることで、社内の制度改革に取り込める時間が増えます。結果として、人事労務の負担軽減だけではなく、会社全体の生産性向上にも繋がります。

「以前は仕事が減ってもタバコ吸う時間が増えるだけという考え方が多かったです。近年は仕事を効率化できれば従業員を休ませることができる、早く帰らせることができるという捉え方が増えてきました。」(三村 氏)

働き方改革の広がりにより、社員の労働環境の改善に取り組む企業は増えています。そういった企業を中心に、業務を軽減するためコンカーやSmartHRが積極的に導入されているようです。

「政府から働き方改革などの題目が降りてくるわりに、休み方改革や会議の仕方改革など、仕事の純減ではなく時間の使い方を考える方が多いのが現状です。仕事の純減という観点ではITを使って減らす取り組みが不可欠になるんです。」(三村 氏)

ITは人事の仕事を奪うのか

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テクノロジーを導入することで、人事や経理が行なっていた一部業務は不要になります。テクノロジーがこれらの仕事を行うことで、人材が不要になることを心配する声も上がっています。

「人事の労務を効率化すると仕事がなくなってしまうのではという話もありますがどうなのでしょうか。」(日比谷 氏)

「サービスを出した当初、我々は社労士さんの仕事を奪うのではという論調もありました。実際には、SmartHRを使ってクライアントを支援する社労士さんもいらっしゃって、売り上げが3倍伸びたという事例もあります。使い方次第では売り上げを伸ばすことができるのだと思います。」(宮田 氏)

テクノロジーを導入することで、人がやらなければならない業務は少なくなります。その空いたリソースどのように使うかが重要であると宮田氏は話します。空いた時間をうまく活用することで、売り上げを伸ばす企業もあるそうです。

テクノロジーは仕事を奪うのではなく、新たなサービスを生みだすための時間を作るツールと考えるべきでしょう。

今ない仕事を見つけて遂行できる人材が求められる

テクノロジーの導入により、私たちの働き方には変化が訪れています。経費精算や人事労務だけではなく、今後様々な業務が効率化されていくと予想されます。

仕事の仕方が変わっていく中で、今後どのような人材が求められていくのでしょうか。

「ITで様々なイノベーションが起きているなかで、どのうような人材が求められていると思いますか。」(日比谷 氏)

「これまで経費精算、人事労務などこれまで名前があった業務はどんどん効率化されてなくなっていくと思います。今後は今ない仕事を見つけて業務を遂行できる人材が求められるでしょう。」(宮田 氏)

宮田氏は、会社の情報を従業員にもフルオープンにするよう心がけていると話します。そうすることで、従業員は自分で会社の問題を見つけ、自分で解決することができるようになるからです。
決められた仕事をするだけではなく、自分で問題を見つけ解決に導く力を持つ人材が、これからの時代には必要なのです。

まとめ

テクノロジーの導入により、従来紙で行われていた作業がどんどん効率化されていきます。経費精算や人事労務に限らず、今までの仕事がなくなっていくことも考えられます。

テクノロジーによって効率化され、空いた時間をどのように活かしていくのか。今後は、決められた作業以外の仕事を見つけ遂行できる人材が求めらています。