多くのNPOにとって情報発信は常に大きな悩みのタネではないでしょうか? 重要なテーマであることはわかっていても、日々の業務の中での向き合い方や具体的な方法論で行き詰まっている団体も多いのではないかと思います。

特に、わかりやすく「資金調達」に直結する施策“以外”の情報発信との向き合い方については、頭を悩ませているNPOの代表や広報担当者の方は多いはずです。

「情報発信」「広報」「ブランディング」と様々な言葉で呼ばれる領域ですが、正解がない世界だからこそ、団体間で大きく差がつく領域だと言えるかもしれません。

そこで今回は「NPOが適切な情報発信をするために考えるべきこと」について、数々のNPOの情報発信を支援している望月優大 氏に話を聞きました。

望月優大 氏プロフィール

ライター・編集者。日本の移民文化・移民事情を伝えるWebマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。経済産業省やGoogle、SmartNews等を経て独立。株式会社コモンセンス代表取締役。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。1985年生まれ。Twitter @hirokim21

望月 氏は、これまでのキャリアにおいてGoogleやSmartNewsなどでマーケティングの業務などに携わる傍ら「Google for Nonprofits」や「SmartNews ATLAS Program」といったNPO支援プログラムも運営してきました。

また、昨年はコレクティブインパクトの取り組みである「スタディクーポン・イニシアティブ」(以下、スタディクーポン)の立ち上げにも情報発信面を中心に関わり、クラウドファンディングで1400万円を超える寄付金調達に貢献しています。

望月 氏はその後、コモンセンスを創業して独立。ライター・編集者として活動しながら、難民支援協会が運営するWebマガジン「ニッポン複雑紀行」の編集長を務めるなど、現在も複数のNPOの情報発信支援に携わっています。

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今回は、NPO情報発信を支援してきた望月氏に、NPOは「情報発信」にどう向き合うべきか?を伺いました。 望月 氏が語ったのは、以下3つのポイントです。

  1. 情報発信の前に事業自体の価値を振り返る
  2. 情報発信の目的を決めて打ち手を最適化する
  3. 情報発信そのものポテンシャルに着目する

それぞれ、どういう背景から生まれたのか見ていきましょう。

1. 情報発信の前に事業自体の価値を振り返る

望月 氏が1つ目に挙げたのは「情報発信の前に事業自体の価値を振り返る」というものです。

「事業自体に価値がないのに情報発信だけではどうにもならないし、どうにかすべきでもありません。見据える社会課題と、提案する解決策のどこに『価値』があるのかに向き合ったうえで、その価値をストレートに発信することが重要です。情報発信は飾りではありません。」(望月 氏)

情報発信をそれ単体で考えてしまい、情報発信の土台となる事業の価値の把握を疎かにしてしまう状態について、望月 氏は警鐘を鳴らしています。逆に、その事業に確かな価値があり、その価値がしっかりと伝わる言葉に翻訳できてさえいれば、その価値や言葉をストレートに発信することこそが最も強力な情報発信になると言います。

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「情報発信や広報を『テクニックでどうにかする魔法のようなもの』と捉えている人が多いと思います。しかし、事業に価値がないのに情報発信のテクニックで価値がありそうに見せようとするのは、情報の受け手をだましているのと一緒ですよね。質の良い情報発信をするうえで、質の良い事業があることは大前提です。私がNPOによる情報発信の支援に入るときも、まず『この事業の価値は何か?』を自分自身が理解するところから始めます。」(望月 氏)

スタディクーポンの立ち上げを支援する際も、情報発信の具体的な設計に入る前に事業自体の本質的な価値や形を明確にすることに時間をかけたそうです。

特に、このプロジェクトは異業種の複数団体が関わる「コレクティブ・インパクト」の取り組みでもありました。そのため、プロジェクトの細部はもちろんのこと、本質的な点も含めて最初はかなり曖昧な部分もあったそうです。そうした曖昧性をなくすためにチーム内でじっくり議論するところがスタートポイントになりました。

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「みんなの力で教育格差をなくそう」「お金が理由で塾に通えない高校受験性にスタディクーポンを届けたい」といった言葉を作る中で、事業の価値を明確化していったといいます。

「『何のためにやるか』『プロジェクトの最終的なゴールは何か』といった点についてしっかりと整理をし、その価値を簡潔に伝えるメッセージを練り上げるところから始めました。チームの内部でも共有可能な言葉に落とし込んだことで、外部にもしっかり伝わるブレない価値を定めていったんです。」(望月 氏)

望月 氏は「3つのポイントの中でも、この部分が最も重要」と何度も強調しています。情報発信について考えるときは、事業自体の価値を改めて考える機会とするとよいと言えるでしょう。