気づいていなかった課題も見えてくる

ferret:
具体的に、Insight Journeyを使ってクライアントさんのリサーチをした事例があれば教えてください。

蓑原:
ある会社から

社内のDX推進のための業務システムを作りたい

というご相談をいただいたことがありました。

システムへの要望については、社長さんから従業員の方にヒアリングしてまとめていただいたのですが、もしかしたら従業員さんの本音を引き出し切れていないのではないか、という懸念がありました。

本来であれば、我々が従業員の方に対して、一連の業務フローや改善したいポイントなどを数週間かけてリサーチするのがベストなプロセスです。

しかし、そこまでの時間がとれないということだったので、社長さんがまとめられたヒアリング内容をもとにInsight Journeyにインプットし、いくつかパターンを変えて出力してみたところいくつか我々も想定できていないようなパターンの結果が出ました。

システムだけでは解決できない課題に気づけた

蓑原:
業務のデジタル化やDXにおいてシステム開発だけで解決するケースは少なく、その背景には他部署との連携やコミュニケーションの不満など、システムだけでは解決できないアナログな課題が多く存在します。

Insight Journeyで出力した結果から、そうした業界独特のケースの課題に気づくことができ、実際にそのような課題が存在するのかを社長さんにご相談したところ、従業員さんへのヒアリング機会などをいただけることになりました。

従業員さんにインタビューさせていただくと、出力された課題に近い話を聞くことができたのです。そのため、当初の開発要件から大幅に変更し、他部署との連携も踏まえたプロジェクトに方向転換しました。社長さんからは、もともとは浮き彫りになっていなかった様々な課題が解消できたと喜んでいただいて、他の課題などもご相談くださるような関係性を構築することができました。

ferret:
壁打ちの材料をInsight Journeyでアウトプットし、より具体的なことを聞き出すためのヒントにするという使い方ができるのですね。

蓑原:
人が提案すると「それはあなたの主観ではないのか」という議論になることがありますが、「AIからこういうデータが出た」という提案だと、比較的受け入れてもらいやすいのかもしれません。信頼関係がまだ構築できていない段階でも、説得の材料のひとつになるのではないかと思います。

最終的な判断は人がする

ferret:
AIを使うと他にもいろいろな出力ができそうですが、出力内容を増やす予定はありますか?

蓑原:
はい、現在開発中です。ただ、「いきなりカスタマージャーニーマップができあがる」といったような、考察プロセスを飛ばした安易な出力をしても、精度などの問題から実用性が下がってしまう可能性があると考えています。

収益化を目指して本格的に開発しているサービスならば、精度を上げて実用的なレベルの出力結果にできるとは思いますが、Insight Journeyの場合一人で作っているのでなかなか難しいところがあります。

なので現時点では、「AIに助けてもらう部分」と「自分で考える部分」の現実的なラインが今の出力情報くらいかなと思っており、機能追加などの内容は現時点では実用面を優先して補助的な立ち位置にとどめたいと考えています。

アイディアの発散はAIが行いますが、「アイデアの収束は人間が行った上で最終的な方向性を決定する使い方が良いバランスではないでしょうか。

アイディアの発散と収束

蓑原:
事業の方向性やビジネスモデルに関わるかなり重要なことを決めるために利用される方が多いと思うので、考えるプロセスを飛ばして一気に出力するのではなく、「こうではないでしょうか」という提案のラインで出力を止めておくことを意識していますし、その部分が可視化されているという点は今後もぶらさずにしておきたいと思っています。

ferret:
Insight Journeyで出力された「ペルソナ」もそのまま使うのではなく、たたき台として利用していただくのが良さそうですね。

蓑原:
そうですね。やはり仮説だけではなく実際のユーザーさんをきちんと理解するということは不可欠なので、出力されたものを100%鵜呑みにしてその通りにやっていくことは、あまりおすすめしません。

とはいえ、潤沢にリサーチができる場合ばかりではないので、発想を補う形で使っていただけるととても嬉しいです。

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