AIがペルソナを一瞬で作ってくれる!ペルソナ自動生成ツール「Insight Journey」の効果的な活用法
マーケティング担当者は避けて通れない、ペルソナ作成。しかし、ありきたりな設定や曖昧な設定になってしまったり、作ったもののうまく活用できなかったりすることは多いのではないでしょうか。
そうした課題を解決できそうなのが、AIによるペルソナ作成ツールです。
なかでも最近、2023年6月にリリースされた「Insight Journey(インサイトジャーニー)」についてX(旧:Twitter)上で目にする機会が増えています。
どのようなツールなのか。個人でツールを開発された、シロ株式会社の代表である蓑原 弘司氏にお話をうかがいました。
プロフィール
- 蓑原 弘司氏
- シロ株式会社 代表取締役 / ビジネスデザイナー
- IT業界で法人営業を経験した後、フリーランスのWebデザイナーとしてWeb制作やブランドプロモーションのデザインから開発までを担当。その後、2019年に法人化しシロ株式会社を設立。 現在はビジネスデザイナーとして企業やブランドのサービス設計に携わりながら、複数の企業の経営顧問なども兼務。
「Insight Journey」はどんなツール?
ferret:
「Insight Journey」はどのようなツールなのか、簡単に説明していただけますか。
蓑原:
Insight Journeyは、「解決したい課題」と「課題を抱えているターゲット」を入力すると、AIがインサイトを掘り下げてくれるツールです。
具体的なペルソナ像とともに
- ペルソナが持つ課題や背景
- 課題に対する現時点での対応方法
- 本質的に解決したいと思っていること
などが出力されます。
また、そうした課題に対してペルソナに刺さりそうな「セールスワード」も提案されます。
作ったペルソナにインタビューをした想定で仮想の回答も出力されるので、より深くペルソナを理解することにも役立つと思います。
ターゲットと課題を入力するとAIがインサイトを掘り下げてくれるサービスを公開しました。
— みの / Shiro Inc. (@_minoji) June 17, 2023
自分用で使ってたのを公開しただけなのでユーザー登録など不要で使えます。
▼使い道
・法人営業における商談前の仮説作成
・UXリサーチ前の仮説案出し
などなど
▼URLhttps://t.co/4h85IrlmpM
私は、出力された情報を初期仮説の参考にしたり、出力された情報からさらに深掘りしたいときには、出力された「ペルソナ」や「ペルソナが持つペイン」などをまとめてコピーしてChatGPTに貼り付け、ChatGPTにそのペルソナになりきってもらってさらに深いインタビューをしてみるという使い方をしています。
ペルソナを作ったあとのアクションにつなげる
ferret:
いわゆる「ペルソナ作成ツール」は他にもありますが、Insight Journeyの特長は何でしょうか。
蓑原:
「次の具体的なアクションにつなげやすい情報が出力される」というのは特長だと思います。
「ペルソナ」というワード自体はご存知の方も多いと思いますが、それを使ってどうするのかという具体的な運用まで落とし込める方は結構少ないのではないでしょうか。
よくあるのが、ペルソナを作って非常に具体的なユーザー像ができたけれど、そのあとどうするのかにつながらず、結局ペルソナが放置されることです。
Insight Journeyの出力項目は、ペルソナを作ったあとのネクストアクションにつなげるためにはどういう情報が必要か、ペルソナを使ってより深掘りしていくためにはどういう情報があると良いのかを、UXリサーチの視点で考え設計しました。
ロゴもサービス名もコードも全てAIを使って作り、開発2日目くらいである程度形になったところから改良して今の状態になっています。
利用された方から
そもそもペルソナの使い道や活用方法があまりわかってなかったけど、使ってみて有益性がわかった、使えるイメージがついた
というお声をいただいたのは嬉しかったですね。
事前リサーチができない場合の助けになる
ferret:
様々なシーンで活用できそうですが、特にどのような使い方がおすすめでしょうか。
蓑原:
個人的には、予算や時間がなくリサーチにリソースがかけられない場合に、次善の策として使うのが有効ではないかと思っています。
なんらかの理由で事前リサーチができず、対象業界のドメイン知識やターゲットに対する知識が非常に少ない状況で、新規事業のアイディアや、マーケティング企画、営業提案のためのたたき台を作る必要がある際に利用するといった使い方です。
たたき台を作ることで、足りていなかった視点が見つかり、きちんとした調査が必要な事柄がわかってくることもあります。
弊社(シロ株式会社)が請け負うサービスデザイン、UXデザイン、Web制作などのプロジェクトでも、予算や時間がなく調査にリソースをかけられないケースがこれまで多々ありました。
・サイトリニューアル
例えば、「サイトのリニューアルをしたい」というご依頼をいただいた場合、エンドユーザーさんのサイトの使い方を具体的に把握してサービス・UX設計する必要がありますが、クライアントさん自身があまりエンドユーザーさんの行動パターンや心理についてまではご存知でないこともあります。
・サービス・UX設計
新規事業の立ち上げも同様で、「新しいサービスを作っていて、サービス・UX設計を一緒に考えて欲しい」というご依頼をいただいた場合、私とクライアントさんだけでお話をしていても良いものを作れるはずはなく、実際にご利用されるユーザーさんにお話を伺ったり、オブザベーションと言われる観察をしたりすることが必要です。
ですが、全てのクライアントさんが数百万円かけて何ヶ月もリサーチできるかというと、なかなか難しい。かといって全くエンドユーザーさんに対する理解を深めずに進めると、作った後に問題が発生するケースも多い。
そうした状況でもできる限り高い品質の成果物をお客様に提供したいと考え、簡易的なリサーチや、設計の際の抜け漏れを防ぐ方法のひとつとしてInsight Journeyを活用しています。
気づいていなかった課題も見えてくる
ferret:
具体的に、Insight Journeyを使ってクライアントさんのリサーチをした事例があれば教えてください。
蓑原:
ある会社から
社内のDX推進のための業務システムを作りたい
というご相談をいただいたことがありました。
システムへの要望については、社長さんから従業員の方にヒアリングしてまとめていただいたのですが、もしかしたら従業員さんの本音を引き出し切れていないのではないか、という懸念がありました。
本来であれば、我々が従業員の方に対して、一連の業務フローや改善したいポイントなどを数週間かけてリサーチするのがベストなプロセスです。
しかし、そこまでの時間がとれないということだったので、社長さんがまとめられたヒアリング内容をもとにInsight Journeyにインプットし、いくつかパターンを変えて出力してみたところいくつか我々も想定できていないようなパターンの結果が出ました。
システムだけでは解決できない課題に気づけた
蓑原:
業務のデジタル化やDXにおいてシステム開発だけで解決するケースは少なく、その背景には他部署との連携やコミュニケーションの不満など、システムだけでは解決できないアナログな課題が多く存在します。
Insight Journeyで出力した結果から、そうした業界独特のケースの課題に気づくことができ、実際にそのような課題が存在するのかを社長さんにご相談したところ、従業員さんへのヒアリング機会などをいただけることになりました。
従業員さんにインタビューさせていただくと、出力された課題に近い話を聞くことができたのです。そのため、当初の開発要件から大幅に変更し、他部署との連携も踏まえたプロジェクトに方向転換しました。社長さんからは、もともとは浮き彫りになっていなかった様々な課題が解消できたと喜んでいただいて、他の課題などもご相談くださるような関係性を構築することができました。
ferret:
壁打ちの材料をInsight Journeyでアウトプットし、より具体的なことを聞き出すためのヒントにするという使い方ができるのですね。
蓑原:
人が提案すると「それはあなたの主観ではないのか」という議論になることがありますが、「AIからこういうデータが出た」という提案だと、比較的受け入れてもらいやすいのかもしれません。信頼関係がまだ構築できていない段階でも、説得の材料のひとつになるのではないかと思います。
最終的な判断は人がする
ferret:
AIを使うと他にもいろいろな出力ができそうですが、出力内容を増やす予定はありますか?
蓑原:
はい、現在開発中です。ただ、「いきなりカスタマージャーニーマップができあがる」といったような、考察プロセスを飛ばした安易な出力をしても、精度などの問題から実用性が下がってしまう可能性があると考えています。
収益化を目指して本格的に開発しているサービスならば、精度を上げて実用的なレベルの出力結果にできるとは思いますが、Insight Journeyの場合一人で作っているのでなかなか難しいところがあります。
なので現時点では、「AIに助けてもらう部分」と「自分で考える部分」の現実的なラインが今の出力情報くらいかなと思っており、機能追加などの内容は現時点では実用面を優先して補助的な立ち位置にとどめたいと考えています。
「アイディアの発散」はAIが行いますが、「アイデアの収束」は人間が行った上で最終的な方向性を決定する使い方が良いバランスではないでしょうか。
蓑原:
事業の方向性やビジネスモデルに関わるかなり重要なことを決めるために利用される方が多いと思うので、考えるプロセスを飛ばして一気に出力するのではなく、「こうではないでしょうか」という提案のラインで出力を止めておくことを意識していますし、その部分が可視化されているという点は今後もぶらさずにしておきたいと思っています。
ferret:
Insight Journeyで出力された「ペルソナ」もそのまま使うのではなく、たたき台として利用していただくのが良さそうですね。
蓑原:
そうですね。やはり仮説だけではなく実際のユーザーさんをきちんと理解するということは不可欠なので、出力されたものを100%鵜呑みにしてその通りにやっていくことは、あまりおすすめしません。
とはいえ、潤沢にリサーチができる場合ばかりではないので、発想を補う形で使っていただけるととても嬉しいです。
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- UX
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- ドメインとは、インターネット上で利用可能なホームページやメールなどを識別するときの絶対唯一の綴りを言います。電話番号や自動車ナンバーが同一のものがないのと同様に、インタネットにおいても、2つとして同じドメインは存在できない、といった唯一無二の綴りです。
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