ユニークブランドを持続するための海外戦略

ferret:
ユーザーが自発的に探してくれるようになれば宣伝費もいりませんね。

枡野氏:
そうですね。そしてお客様に自発的に検索してもらった結果、弊社の製品と出会えるために、今後は、グローバルなSEO対策はやっていきたいと思っています。

というのも、日本市場は伸びないからです。人口が減ってますから。聞くところによると、ある下着ブランドさんは、お客様の高齢化に伴って売り上げが激減しているらしいです。そんな話も耳にするにつけ、準備は必要だと感じています。

ただ、市場だけを狙っているわけではありません。海外で勝負するというのは事業のユニークさを保つために必要だからです。

例えば、日本において、1,000人に1人にしか刺さらないサービスがあるとします。でも人間の性質が同じようなものだと仮定すれば、グローバルに展開した瞬間に、単純計算で70倍まで見込むことができます。

だけど日本だけで見ていた場合、1,000人に1人を1,000人に5人にしようとすると、今まで見向きもしなかった4人にも売れるようにものを変えなければいけません。そうするとだんだんユニークでいられ続けなくなります。それってなんだか寂しいですよね。

実は海外に広げていくほうが、売り方は変えなければいけないけど、自分たちの良さみたいなことは無理に変えなくていいかもしれないのです。

それは事業がニッチであればあるほど可能です。逆にマスであればあるほど、海外も絶対既存のプレイヤーがいるはずなので、それをわざわざひっくり返せるほどのものにはなれません。

例えばチョコレートを事例に考えてみてください。日本の大手企業さんがグローバルでトップを取ろうと考えると買収しかないわけです。

しかし、商品のチョコレートが一般的なものではくて、すごく珍しいもの。例えばチョコだけどすごく辛いといったようにすると勝負できます。この商品がないと生きていけないという人が1000人に1人いるとして、それを世界に売っていけば、たぶんいるんですね、そういう商品を欲しいお客様が。

たぶんニッチ戦略ってそういうことなのかなと思いますし、その意味でもWebでしかできないですよね。

グローバルブランドを目指すTOOT

ferret:
今後の展開や目指している世界観を教えてください。

枡野氏:
先ほどの話とも繋がるのですが、グローバルブランドになることですね。世界の4大コレクションのどこかには絶対出そうと思っています。元々社長就任時に、ファッションをするならファッションウィーク、つまりニューヨークかパリかロンドンかミラノか、そういったところに出したいと考えています。

これは夢というか、野望ですね。

今後、TOOTの製品を知ってもらうためには海外での路面展開が必要になってきます。しかし路面店だけではダメです。お客様が実際に自分の目で見た上で、製品のネットの口コミなどマルチチャネルでの情報提供を戦略として立てていきたいですね。

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今、実際に始めているのが台湾です。すでにお客様が非常に多くてリピーターもいる市場です。ここに路面で出したら相乗効果が見込めると予想し、台湾支社を設立し、台北に常設店舗をオープンしたところです。

ferret:
枡野さんがそうした海外や国内でマーケティングをする時に心がけていること、実践していることはどのようなことでしょう。

枡野氏:
Webマーケティングに限ったことではありませんが、正解はないと意識することですね。定石は定石でしかありません。だからやってみると「思ってたのと違う」というのが当然です。そしてその状況を楽しむということですね。

好奇心を持って楽しんでいれば、うまくいってもいかなくてもそこから学びを自分なりに得て、自分なりにカスタマイズして、新しい気づきに達せると思います。

マーケティング自体を考えた場合に、最後は売るわけですけど、売ることそのものだけがマーケティングではありません。市場をつくるし、市場を理解することです。そういう観点でいったときに、小手先の1個1個の技術ではなく、自分が何を売りたいのか、それをどのように使って欲しいのかなど、徹底的に考えています。そしてその先にはお客様がいるといつも考えていますね。