ITワードの中には、意味があいまいになり混同されているものがあります。
「クラウド」「SaaS」「ASP」もそのひとつです。

この記事では、「クラウド」「SaaS」「ASP」の概要とそれぞれの違いについてお話しします。

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

単なる用語集ではなく、よくある疑問への答えや、各指標を改善するためのポイントを、図解を交えてゼロからわかりやすく解説しています。

目次

  1. クラウドとは
    1. オンプレミスやパッケージとクラウドの違い
  2. クラウドが生まれた経緯
  3. SaaSとは
  4. ASPとは
    1. 混同に注意したい言葉
  5. クラウド・ SaaS・ ASPの関係
    1. クラウドは SaaS・ ASPを提供するための技術
    2. SaaS・ ASPの違いとは?
    3. 「シングルテナント」と「マルチテナント」
    4. ASPは SaaSの前身
  6. ユーザー側が違いを意識する機会は少ない
  7. まとめ

クラウドとは

クラウドとは、サーバーにあるデータやソフトウェア、もしくはサーバーやストレージそのものをインターネット経由でサービスとして提供する形態のことです。「クラウドコンピューティング」とも呼ばれます。こうしたサービスを提供するために技術や、概念的に「サービスが提供されている場所」を指して、「クラウド」という言葉が用いられることもあります。

かつては「オンプレミス」と呼ばれる自社に物理サーバーを設置する方法や、「パッケージ」を購入してインストールするソフトウェアが主流でした。現在は多くの企業がオンプレミス・パッケージからクラウドサービスに切り替えています。

オンプレミスやパッケージとクラウドの違い

クラウドはオンプレミスやパッケージとの違いが評価され急激に普及しています。この2つには、具体的にどういった違いがあるのでしょうか?

オンプレミスやパッケージとクラウドの違いについて紹介します。

オンプレミス

クラウドとオンプレミスの最もたる違いは、自社に設置する物理サーバーの有無です。
オンプレミスの新規サーバーを導入する場合、数十万~数百万円程度の費用がかかると言われています。このほか、工事費用や設定費用なども発生するため、オンプレミスの場合は高額な導入コストを覚悟しなければなりません。

クラウドの場合、サーバーの購入費用自体が発生しません。導入コストに関しては、高くても数万円程度で収まります。このように、導入コストに関しては大きな違いがあります。

また、オンプレミスの場合は管理や運用を自社で行わなければなりません。初期費用しかかからないと思われがちなオンプレミスですが、これらの作業でランニングコストが発生してしまうこともあります。クラウドであれば、運用・管理をクライアント側が気にする必要はありません。

一方で、クラウドにも弱点はあります。オンプレミスではサーバーシステムを自社のニーズに合わせてカスタマイズ可能です。クラウドのカスタマイズ性は提供している事業者によりますが、基本的にオンプレミスに劣ります。

パッケージ

パッケージ型のソフトウェアは、まずインストール作業が必要です。対してクラウドサービスにはインストール作業自体がありません。そのため、導入がパッケージに対してはるかにスピーディーです。

また、インストールしたソフトウェアにはバージョンアップが求められます。
管理をユーザーが行わなければならないパッケージのソフトウェアは、バージョンアップが手間になってしまうことも少なくありません。クラウドで提供されているソフトウェアはクライアントがログインした時点で最新の状態になっています。

さらに、クラウドを使えば場所や端末の制限もなくなります。
パッケージ版のソフトウェアを利用できるのは、インストールした端末だけです。クラウドはインターネットがあればどこでも利用できるだけではなく、いくつかのサービスはパソコン、スマートフォン、タブレットなどマルチデバイスに対応しています。

クラウドが生まれた経緯

1997年には南カリフォルニア大学の教授によって「クラウドコンピューティング」という提唱されていますが、当時は普及しませんでした。急速に認知が広まったのは、2006年にGoogleのCEOがこの概念を再度提唱したタイミングです。

これを機にGoogle AppsやMicrosoft Azureなど多くのクラウドサービスが登場しています。

ビジネスにおいては、導入コストと運用コストの問題を同時に解決した点が今日の普及につながっているようです。
また、一般ユーザーが複数台のインターネットデバイスを持つようになりデバイスを意識せずシームレスにデータ格納・共有できる場所が必要になったことも、クラウド普及に一役買っていると言えるでしょう。

SaaSとは

SaaS」とは、「Software as a Service」の略です。
直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」であり、ソフトウェアの機能性を提供するクラウドサービスを意味します。パッケージとして提供されているソフトウェアと対になるサービスです。

ソフトウェアのデータはサーバー側にあります。ユーザーはクラウド経由でアクセスし、その機能を利用するだけです。
したがって、ユーザーがソフトウェアをインストールする必要はありません。

現在では一般的に利用されているGmailやTwitter、SkypeといったサービスもSaaSです。ビジネス用にも勤怠管理システムやグループウェアのツールがSaaSとして提供されています。こうしたツールは従来、自社で開発するのが一般的でしたが、SaaSの登場によりコストをかけられない企業や開発できる人材がいない企業でも便利なツールを導入できるようになりました。

クラウドという言葉に先立ち、すでにSaaSという言葉は使われています。
SaaSの他にも、ITインフラをサービスとして提供する「IaaS(Infrastructure as a Service)」、ソフトウェアの起動・開発プラットフォームを提供する「PaaS(Platform as a Service)」、デスクトップを提供する「DaaS(Desktop as a Service)」などがあり、どれもビジネスで有用なサービスとして人気です。
また、これらのサービスの総称として「XaaS(X as a Service)」という言葉もあります。

ASPとは

ASP」は「Application Service Provider」の略です。インターネット経由でアプリケーションの機能を提供する事業者を意味します。また、提供されるサービスそのものを意味することもあります。

コンセプトの誕生は古く、1980年代にさかのぼります。
当時はインターネット回線自体が安定しておらず信頼性に欠けていたことから普及することはありませんでした。インターネットの実用化にともない、言辞的にASPを提供できるようになりました。

混同に注意したい言葉

「アフィリエイトサービスプロバイダー(Affiliate Service Provider)」も同じようにASPと略されます。こちらは、「広告の成功に応じて報酬を支払う事業者」という意味であり、上述したASPとはまったく別の存在です。

また、インターネットサービスの提供事業者を意味する「ISP(Internet Service Provider)」と混同するケースも少なくありません。
これらとASPの混同には注意しましょう。

クラウド・SaaS・ASPの関係

クラウド・SaaSASPはしばしば同じ意味で使われています。それぞれに違いはあるのでしょうか。

以下ではクラウド・SaaSASPの関係について深掘りしていきます。

クラウドはSaaS・ASPを提供するための技術

クラウドという言葉はSaaSASPよりも後発です。しかし、今日のSaaSASPを提供するために、クラウドの技術やコンセプトは欠かせません。

インターネットの実用化にともないSaaSASPの提供が現実的になり、さらにクラウドのコンセプトが生かされるようになった、と言えるでしょう。

SaaSASPは、「何をサービスとして提供しているのか」を表す言葉です。対して、クラウドは技術や提供形式を意味するより包括的な言葉です。
クラウドサービスの一種として、SaaSASPが提供されていると言えます。

SaaS・ASPの違いとは?

上述したSaaSASPの説明を見て「両者に違いはないのでは?」と考えた方は多いかもしれません。

違いとして挙げられることが多いのは以下のようなポイントです。

  • SaaSアプリケーション・ソフトウェアそのものだが、ASPはサービス全体を意味する
  • SaaSはソフトウェアとして用いるが、ASPは提供事業者という意味合いで用いる

これらは、それぞれの言葉が使われる現場での認識の違いによって決まると言えます。事実として、両者の言葉としての定義はほとんど同じです。

そのため、SaaSASPが混同されるのも自然なことと言えるでしょう。単なる呼び方の違いとする声も少なくありません。

ただし、SaaSASPよりも後発の言葉のため、ASPは近い将来使われなくなっていくことも考えられます。

「シングルテナント」と「マルチテナント」

かつてのASPSaaSには技術的な違いがあります。それが、「シングルテナント」と「マルチテナント」の違いです。

シングルテナントは個々のユーザーに対して個別の環境を提供します。ひとつの領域を独占できるため、カスタマイズ性の高さが特徴です。ASPではシングルテナントを採用しています。

一方、マルチテナントではひとつの環境を複数のユーザーでシェアします。コストを下げてサービスを提供できますが、カスタマイズ性はシングルテナントに劣ります。SaaSで採用されるようになった方式です。

ただし、現在提供されているASPSaaSにこうした技術的な差は必ずしもありません。現在はマルチテナントで提供されているASPもあると考えられます。

ASPはSaaSの前身

ASPSaaSの前身であるという意見も一般的です。確かに、SaaSASPよりも後に普及しています。マルチテナントが採用されコストダウンが可能になったという流れも、ASPからSaaSへの進化を裏付けています。

実際のところ、ASPSaaSの前身であるという説は正しいと思われます。
クラウドの技術によってASPがアップデートされましたが、サービスとして低迷していた時期を乗り越えるためにはさらに大きなインパクトが求められました。
SaaSという呼び名が用いられるようになったのは、当時のサービス提供事業者が状況を変えるためにマーケティングの観点から採用した打開策と思われます。

ユーザー側が違いを意識する機会は少ない

SaaSの普及にともない、ASPという言葉が使われる機会は少なくなりました。一部では、「ASPは失敗に終わったサービスである」という意見もあります。しかし、依然としてASPと銘打たれているサービスもあります。

上述したとおり、ASPSaaSコンセプト上の違いはありません。月額制の料金形態も同じです。同じジャンルのASPSaaSがあれば、それらは機能や用途についても大きな違いはないと考えられます。

また、現在も提供されているASPであれば、SaaSに対して劣っている点もさほどないでしょう。提供事業者によっては、かつてのASPより大きくアップデートしたサービスをSaaSではなくあえてそのままASPとして提供しているケースがあります。

したがって、ユーザー側がSaaSASPの違いを意識する必要はほとんどないと言えます。

サービスの優劣を決める基準にもなりません。どちらにも優秀なサービスはありますので、「SaaSASPか」ではなく、あくまで「ニーズを満たしてくれるサービスかどうか」という基準で選ぶことが大切です。

まとめ

クラウドとSaaSASPの違いについて紹介しました。それぞれのコンセプトが生まれた背景や言葉の定義について知っておくことは重要です。

また、クラウドサービスを選ぶ際には、「旧時代的なASPと新しいSaaS」といったイメージに引っ張られず、あくまでサービスの内容で判断することが大切です。ASPSaaSといった名前にとらわれず、業態やニーズにあったサービスを見つけてください。

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