2019年5月8日、Google本社にて開催されているGoogle I/O 2019にてGooglebotがアップデートされ、レンダリングエンジンがChromiumの最新版と同等になったことが明らかにされました。

このアップデートについてはアメリカ版Googleウェブマスター向け公式ブログでも告知されています。

Official Google Webmaster Central Blog: The new evergreen Googlebot

:このアップデートはGooglebotと呼ばれるクローラーページインデックスするシステム)にまつわるもので、ランキングアルゴリズムとは異なります

アップデートでレンダリングエンジンが改良 ES6などがサポート対象に

公式ブログの記事によると、これまでにイベントやソーシャルメディアで一番多く寄せられていた質問は
Googlebotを最新版Chromiumで常に新しい状態にできるかどうか」、つまり「常に最新版Chromiumの仕様に合わせられないか」だったそうです。

今回のアップデートで、Googlebotは最新のChromiumレンダリングエンジン(2018年5月8日時点ではver. 74が最新版)を実行するようになり、以前のバージョンと比較して1000個以上の新機能をサポートするようになりました。

さらに、今後は最新のWebプラットフォームを常にサポートするためにGooglebotも定期的に更新されるとのことです。

これまでのGooglebotは最新技術の一部をサポートしきれておらず、Googlebotページを認識させるためには実装に工夫が必要な場合がありました。

しかし、このアップデートによりES6(注:2015年に発表されたECMAScriptのバージョン。ECMAScriptとはJavaScriptの標準規格のこと)などがサポートされるようになったため、これまでは使えなかったJavaScriptの機能が使えるようになりました。

Chromium(クロミウム)とは

ChromiumとはオープンソースのWebブラウザプロジェクトのことです。

Google ChromeはこのChromiumのソースコードから作られています。
2018年12月にはMicrosoftが提供するWebブラウザのMicrosoft EdgeがChromiumをベースに開発されることが発表され、話題となりました。

アップデートによって今後起こりうる変化

今回のアップデートによって起こる変化は、ページGooglebotに認識させるために必要だった配慮が不要になるという点に集約されます。

たとえば、SPA(Single Page Application:1つのページアプリケーションを構築する技術)で実装されたサイトはGooglebotからは認識されない場合もあったため、サーバーサイドであらかじめレンダリングする必要がありました。

サーバーサイドレンダリングは開発工数が膨らんだり、構造が複雑になったりというデメリットがありましたが、Googleインデックスされるためには必要な実装でした。

しかし、今回のアップデートにより、SPAで作られたサイトもブラウザで閲覧した時と同じようにページが認識されるようになったため、SEOを目的にサーバーサイドでレンダリングする必要がなくなります。
SEO以外の目的でサーバーサイドレンダリングする場合もあるため、不要になるのはあくまでSEOを目的にする場合です。)

今後、SPAで作られているがサーバーサイドでレンダリングしていなかったサイトのインデックスが増えていくと考えられます。

インデックスされるサイトが増えることで、これまでのランキングに影響が起こる可能性もないとは言い切れません。
新しく強力な競合サイトが現れる可能性もあります。

また、CSS Grid Layoutを用いて実装した部分がこれまでは意図したとおりにレンダリングされない(表示がおかしくなってしまう)という問題もありましたが、この問題も同様に解決され、正しくレンダリングされるようになります。

CSS Grid Layoutが使えるようになることで、サイトのデザインをどう表現するかという手法が変わっていく事が考えられます。

ここで紹介した変化はごく一部ですが、今後Webサイトページを作る際の方法に変化が発生することや、インデックスされるサイトの増加に伴う一時的なSEOの順位変動などが考えられます。

今後の開発手法に変化をもたらすアップデートであるといえるのではないでしょうか。