サービスや商品、取り組みなどを多くの人たちに認知してもらうため、さまざまな企業や団体がオウンドメディアを活用しています。2000年代後半からオウンドメディアブームが起こりましたが、2019年に入ってからは閉鎖したメディアも多く見受けられます。

そんな中、2019年4月に学校法人青山学院がオウンドメディア「アオガクプラス」をスタート。なぜこのタイミングでオウンドメディアを開設したのか、学校法人青山学院 広報部 広報課 課長 髙木 茂行氏と広報部 部長 磯貝 毅氏にオウンドメディア立ち上げの意図を伺いました。

学校ならではの広報誌的なオウンドメディアをスタート

ferret::現在、オウンドメディアを閉鎖する企業も少なくありません。しかしながら、学校法人青山学院(以下、青学)では、2019年の4月にオウンドメディア「アオガクプラス」を立ち上げられましたが、どういう狙いがあったのでしょうか?

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▲(左): 広報部 広報課 課長 髙木 茂行氏 (右)広報部 部長 磯貝 毅氏

髙木氏:これまでの広報活動では、『あなたと青山学院』『青山学報』という機関誌とWebサイトでの情報発信を行っていました。青学の魅力をもっと知ってもらうために何かいい方法がないかと模索している中で、オウンドメディアの構想を磯貝部長から提示されました。青学は、一定のブランド力は確立していると思いますがまだまだ知られていない魅力があるのです。

磯貝氏:オウンドメディアは2000年代後半に登場して、今では企業だけでなく明治大学や東洋大学などの大学も運営しています。そこで私たちも学校ならではの広報誌的なWebサイトを立ち上げたいと、オウンドメディアに着手することにました。

また、『青山学報』は在学生やその保護者、卒業生向け、『あなたと青山学院』は主に卒業生向けとして発行していますが、青学のステークホルダーにしか見られないという状況でした。機関紙には教員に執筆してもらった記事もあります。そういう記事を出せるのは、教育機関である学校ならではのことです。もっと多くの人に読んでほしいと思う記事もたくさんあるのですが埋もれてしまっていました。Webメディアで常時配信できるプラットフォームをつくることでそのような情報を発信できると思ったのも、オウンドメディアを開設した理由のひとつです。

リブランディングとさらなるファンを増やしたい

ferret:先ほどおっしゃられたように、青学というとおしゃれなイメージがあり一定のブランド力が確立されているように思います。アオガクプラスを通じて、リブランディングするという目的もあったのでしょうか?

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▲画像引用:アオガクプラス | 青山学院を、発見する。

髙木氏:青学には「洗練されている」「おしゃれ」といったイメージがあります。これまでの卒業生たちのおかげでそのようなイメージを皆さんに持っていただけているのは事実ですが、表参道というおしゃれな地域に学校があることも大きな要因です。青学にはそれ以外にも魅力があることを、たくさんの人に知ってもらいたい。青学の教育方針のもと、青学でしか学べない教育があって、そこが青学の魅力なのです。

青山学院は幼稚園から大学・大学院までを擁する総合学園ですが、例えば、初等部に関しては、6年間で合計50泊の宿泊行事があります。その中で農業体験をしたり遠泳行事のために長崎県に行ったりするなど、青学独自の教育があります。青学の初等部のサイトを見ていただくとそのような情報を発信していますが、リーチしてもらえないのが実情です。そのような情報をアオガクプラスで画像を多用し、動画も交えてリアル感をもって発信できればいいと思っています。

磯貝氏:一番の目的は、青学のファンを増やすことです。今は多様性の時代なので、学校選びのポイントで重視することも人それぞれだと思います。そのような中で、「青学ってこういう学校なんだ」ということを多くの人に知ってもらう必要がある。

既存のイメージは残しつつ、まだまだ知られていない魅力をオウンドメディアで伝えていきたい。オウンドメディアを通じて青学のファンをさらに増やすこととブランド力を上げていきたいと考えています。

オウンドメディアの知識ゼロからのスタート

ferret:オウンドメディアを立ち上げる上で苦労されたことはありますか?

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▲青山学院広報部の打ち合わせの様子

髙木氏:苦労したことは、オウンドメディアをどのような位置付けにするかを決めることでした。実は部長からオウンドメディアの構想を提案してもらったときに、初めてオウンドメディアを知りました。企業や他大学のオウンドメディアを見たりして、オウンドメディアとはどのようなものかということを一から勉強してきました。その後、部長とオウンドメディアの方向性を擦り合わせて、それから広報部全員でコンセプトを決めていきました。

その結果、基本的な情報やニュースに関しては青学のWebサイトで発信し、アオガクプラスでは青学の歴史や取り組み、活動を深掘りしたものや、卒業生や在校生へのインタビューを掲載することになりました。アオガクプラスのプラスは、プラスになる情報を知ることができることと青学の母体となるキリスト教の教えから十字架の意味を込めています。ですので、キリスト教を理解してもらうためのコンテンツを揃えています。

ferret:記事の作成は外部業者と協力して行っているのですか?

磯貝氏:サムライト株式会社にサイトをつくっていただきました。最初は、企画は広報部が考えて、サムライト株式会社に記事の作成などを行ってもらおうとも考えていましたが、広報部のメンバーは7名いるのですが、広報誌づくりの中で取材経験も豊富でコンテンツ制作には慣れています。ならば、広報部のメンバーで企画から記事までつくっていこうということになりました。ワードプレスの使い方についても全員で勉強しました。

オウンドメディアでは、広報誌に掲載しきれなかった内容や、広報誌とは違った切り口での記事を作成して発信しています。本人の動画メッセージもその1つです。広報誌は紙媒体ですので、字数も限られています。Web媒体では、字数や掲載できる写真の枚数などが紙媒体と比べると自由が効いて、いろいろと工夫ができます。

教員や学生と一緒になったオウンドメディアづくりをしていきたい

ferret:アオガクプラスの開設から約半年経ちましたが、反省点などはありますか?

磯貝氏:今、見直しポイントについては広報部のメンバーにヒアリングをして集めている途中です。いろいろな意見をまとめて、ブラッシュアップしていく予定です。

ferret:オウンドメディアの重要な指標はPVだったり訪問者数だったりすると思うんですが、アオガクプラスではどのような点を重視していますか?

髙木氏:記事を見てくれている人が多ければ多いほどいいということでは必ずしもないと思っています。ですので、現段階では、PVを指標にはしていません。本当に青学に興味のあるコアな方に記事をしっかりと読んでもらいたいので、今は滞在時間を重視しています。今のところ幸いなことに、滞在時間は長い傾向にありますね。

PVを指標に置くのは、磯貝部長からもあったように反省点などを反映してから見ていきたいと思っています。

ferret:アオガクプラスは今後どのようなメディアにしていきたいですか?

髙木氏:最初の目的である「青学のファンをつくる」ということを忘れないで、より多くの方に青学ってこんなところだったんだと興味を持っていただけるようにコンテンツづくりに励んでいきたいです。我々のアイデアだけではきっと広がっていかないと思うので、教職員や学生にアイデアを募ったりして協力しながらつくっていきたいと思います。学生は、青学TVという動画コンテンツをつくっていますのでそことコラボレーションしたりするのもいいですね。

多くの人に一緒に参加してもらうことでアオガクプラスを自分ゴトに捉えてもらって、愛校心を持ってもらえればいい。そして卒業後に、アオガクプラスを他の仲間にもアピールしてもらいたいと願っています。

磯貝氏:新聞社などのメディアとのタイアップを考えています。発信力があるということと、メディアを運営する上で勉強させていただきたいです。タイアップ記事などを実現できるとアオガクプラスの価値も上がっていくと思います。

あとは、SNSや動画などさまざまなツールを活用して、しっかり広報活動をしていきたいです。特にこれから本格的に5Gの時代が到来するので、動画には注力できたらいいと考えています。

アオガクプラス:https://aogakuplus.jp/

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