Googleが新しく提唱した「パルス型消費行動」。現代の消費者は「買いたい気持ちが瞬間的に起きる」とするこの新しい消費行動を理解し、マーケティングに落とし込むことが2020年代のマーケターの重要課題と言えそうです。

パルス型消費行動はネットショッピングの普及により生まれました。SCI(全国消費者パネル調査)によれば、2018年段階でECサイトでのネットショッピングと実店舗の両方を活用する消費者は年々増加傾向にあります。

今回は、<パルス型消費行動の概要>、<瞬間的に購買意欲を高める6つのセンサー>、<パルス型消費行動を促す手法>について解説します。この新しい消費行動を押さえて、ブランドスイッチを起こし、新規顧客獲得に繋げましょう。

パルス型消費行動とは?

パルス型消費行動とは、消費者がスマートフォンを用いて「欲しい」と思った瞬間に商品を購入する新しい消費行動です。その特徴は「いつでも」「どこからでも」買えること。人々が時間的・場所的自由を獲得したことにより、消費行動は大きく変化しました。

このパルス型消費行動と、従来の時間をかけて購買意欲を醸成する「ジャーニー型消費行動」を比較すると、特徴的な2つの傾向が見えてきます。

突発型である

24時間いつでも買い物でき、時間的制限がないうえに、即時にワンクリックで購入できるため「突発型」の購入、つまり衝動買いが増えます。インターネットやECサイトが普及する前は、実店舗での購入が主だったので、24時間いつでも買い物できる状況ではありませんでした。

しかし、今はいつでも手元のスマートフォンで買い物ができる時代。移動中などスキマ時間に何気なくスマートフォンを操作し、購買意欲が生まれたその瞬間にワンクリックで購入できるようになったのです。

従来は商品を手に取って吟味したり、レジで並んでいる間に検討する時間が生まれて、結果購入に繋がらない消費者が多くいましたが、スマートフォン経由の購入ではこうした時間が発生しない分、購入のハードルが低くなり衝動買いしやすくなったと言えるでしょう。

認知度が影響しない

「なんとなく気になっている」といった潜在的な購買欲求はあっても、具体的に「これが欲しい」と顕在化しておらず、その瞬間まで買うつもりがなかった商品を買う人も珍しくありません。こうした傾向により、それまで認知していなかったブランドであっても購入に至る消費者が増えています。

例えば、ウェブサイトやSNSを閲覧時に、表示されたインターネット広告に興味を持ちクリックしたとしましょう。消費者のほとんどは、その時点で「どのブランドの商品か」を認知していないケースが多いです。その意味では、認知の低いブランドにも勝機があると言えそうです。

「6つの直感センサー」がキーになる

「いつでも」「どこからでも」買い物ができる状態だからといって、単純に購入率が上がるかというと、「ECサイトでカートには入れたものの、結局購入しなかった」という消費者も多いです。インターネット上であっても十分に購買意欲を刺激しなければ、商品はカートに入れたまま忘れされられてしまい、検討段階で頓挫してしまうでしょう。

そこで、パルス型消費行動において確実に購買意欲を高めるには、6つの直感センサーがキーになると言われています。ECサイトの販促に取り組む際は、これらの直感センサーを刺激する施策を取り入れましょう。

1. セーフティ:「より安心安全なもの」に反応する直感センサー

ネットショッピングは、業者の顔が見えず実態が不明瞭な買い物です。そのため「信頼できるか」という安心感・安全性が重視されます。生産者の顔を見せたり、販売実績を提示するなどの工夫が必要です。

2. フォーミー:「より自分にぴったりだと思うもの」に反応する直感センサー

乱立するECサイト上で数多くの類似商品が販売されているなか、ひとつの商品を選び抜くには「自分に合う」というマッチ度が重要です。消費者が自分でカスタマイズできたり、事前に簡単なアンケートに答えてもらい最適な商品をおすすめとしてピックアップするなどのオーダーメイドな取り組みが効果的です。

3. コストセーブ:「お得なもの」に反応する直感センサー

ブランドにこだわりがない場合、価格やお得感に反応する消費者がいるのも事実です。初回特典や限定キャンペーンなどを実施し、サイト上で告知を目立たせることで消費者の購買意欲を刺激します。

4. フォロー:「売れているもの」や、「第三者が推奨するもの」に反応する直感センサー

新しいものを試すか迷っている消費者の背中を押すのは、他者の評価です。「お客様の声」などの口コミがあると、消費者の期待度や信頼感を高めやすくなります。

5. アドベンチャー:「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応する直感センサー

それまで知らなかったものなどに好奇心を抱く消費者も少なくありません。新しいものを試したい、というアンテナが広いタイプには「目新しさ」をアピールすると効果的です。

6.パワーセーブ:「買い物の労力を減らせること」に反応する直感センサー

ネットショッピングの手軽さを強みとし、店舗購入だと確認が面倒な種類や機能をわかりやすく明示して、消費者の「選ぶ手間」を削減すると購入に至りやすくなります。

買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント(3)|Think with Google

マーケティングにはどう生かすべきか

パルス型消費行動は、デジタルネイティブな若い世代だけでなく、60代女性でも約6割以上がECサイトを利用しており、意外にも年代による差はあまり見られません。パルス型消費行動を促すマーケティングを行えば、あらゆる商品・サービスの売上アップに貢献するでしょう。うまく購買意欲を醸成する手法をご紹介します。
参考:
買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント(1)|Think with Google

SNS

パルス型消費行動では、スマートフォンとの親和性が高いSNSが有用です。6つのセンサーの中で特に購買意欲を刺激するのが、セーフティ、フォーミー、コストセーブの3つ。短いテキストや数枚の写真など、コンパクトな情報量で端的にアプローチするSNSにおいては、3つのいずれかに該当する強みをシンプルに伝えるとよいでしょう。

例えば、リーズナブルな商品なら「〇〇円」と価格の訴求、ターゲティング広告を出しているなら「〇〇のあなたへ」とターゲットに限定した訴求、安全性が高いなら「信頼の〇〇」といった安心感を打ち出した訴求をするのがおすすめです。

ECサイト

ECサイトなどでパルス型消費行動を促進するなら、ECサイトの「手軽さ」という強みを最大化するのが最も重要です。商品購入を促すには、購入までのステップの簡略化が肝。購入時に記入する項目が多いほど時間がかかり、消費者の購買意欲が下がってしまいます。

購入時のフォームは必要最低限の記入項目のみにし、購入ボタンに早く辿り着くサイト構築をしましょう。わかりやすさも重要なので、例えば購入ボタンを赤字にするなど、パッと見でわかるくらいのシンプルなECサイトが理想です。

ライブコマース

リアルタイムでウェブ動画を流し、商品・サービスを紹介・販売するライブコマースも普及しています。特に消費者への影響力が高いインフルエンサーやタレントを起用して、実際に商品を使ってのレビューを行ったり、視聴者の質問に回答したりするため、高い口コミ効果を発揮し、信頼されやすく「セーフティ」センサーを刺激できる手法です。

また、その場で消費者の疑問を解決できるため、ネットショッピングの弱みを補えます。『Live Shop!』や『LIVE PORTAL』といった専門プラットフォームもありますが、Instagramのライブ配信を活用するケースも増えてきました。

自宅でリアルタイムで視聴できるライブコマースは、まさに「今」欲しくなる手法です。

パルス型消費行動に沿った、マーケティング戦略が必須

Googleは「これまで前提とされてきた"知って、調べて、買う"という消費行動の順序と異なる、新たな消費行動(パルス型消費行動)をマーケティング戦略に織り込んでいくのが重要な課題」だと述べています。本記事を参考に、パルス型消費行動に合わせたマーケティング戦略を立ててみてはいかがでしょうか。

参考:
買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント(1)|Think with Google
買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント(2)|Think with Google
買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント(3)|Think with Google
買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント(4)|Think with Google