布袋寅泰さんの「スリル」を出囃子に、上半身裸に黒タイツで登場し放送コードギリギリの大暴れをする“危険な芸人”江頭2:50。彼が準レギュラーとして出演していた地上波テレビ番組『めちゃ×2イケてるッ!』『ぷっすま』が2018年3月31日で放送終了して以来、テレビで見かけるのはご無沙汰となっていました。

しかし、2020年2月1日に突如YouTubeにチャンネル「エガちゃんねる」を開設。開設8日目にしてチャンネル登録者数100万人を突破。この原稿執筆時の2月20日には161万人にまで増加しています。

なぜ、エガちゃんねるがここまで話題になっているのでしょうか。その人気の要因について考察しました。

チャンネル開設8日で100万人突破は日本第2位のスピード

江頭2:50がチャンネルを開設したのは、先述の通り2月1日。そして開設後8日と4時間で登録者数100万人を突破しました。これは、女優の本田翼さんを抜き、嵐に次ぐ2位のスピード記録です。

彼がYouTubeチャンネルを開設した動機は「お笑いは世界に通じることを体現するため」。たしかに、身体を張った芸風は言葉の通じない海外の人たちにも楽しめる要素はあります。

参考:「エガちゃんねる」日本人歴代2位で登録100万人到達…「人間、すべてを失ってからが面白いんだよ」|ENCOUNT

たとえば、過激なパフォーマンスが売りの電撃ネットワークは、欧米では「TOKYO SHOCK BOYS」として人気です。そう考えると、江頭2:50は日本だけではなく世界でも通用する可能性があると言えます。

エガちゃんねるでは、2月20日現在10本の動画を公開。「やりたいことを全部やってやる!」という意気込み通り、お尻書道やエガ散歩、ポーチの中身大公開、はてはカラオケで歌を歌うなど、なんだかよくわからないけれどおもしろいという江頭ワールドを展開しています。

とりあえず、第1回を見てください。くだらなさとほのぼのさが同居した江頭ワールドが堪能できるはずです。僕は夜中に声を出して笑いました。

江頭2:50がYouTubeと相性がいい理由

江頭2:50は、決して万人受けするタイプの芸人ではありません。なのに、なぜこれほどまでに話題になっているのでしょうか。それにはいくつかの理由があると思われます。ひとつずつ考察していきましょう。

テレビよりも規制が緩い

テレビというものは、テレビ局がいろいろと自主規制を行っています。そのため、過激なパフォーマンスは放送されないことも多くあります。

江頭2:50も、テレビに出始めたときはそのインパクトでもてはやされていましたが、彼が本気を出したときは放送されないか、放送されてもモザイクが掛けられていたりしており、徐々にテレビでの露出がなくなっていきました。

一方YouTubeは、テレビよりもかなり規制は緩め。もちろん、倫理的にNGなものは放送してもすぐに削除されたり(これをBANと呼んだりする)、アカウントが停止されてしまいます。しかし、それでもテレビよりは自由です。

そのYouTubeの緩さと自由さが、江頭2:50の芸風には合っていると言えます。

インターネットテレビへの早期参入

江頭2:50は、インターネットそのものにはあまり強いほうではないようです。

しかし、インターネットテレビには長い期間出演しています。

その番組が「江頭2:50のピーピーピーするぞ!」です。この番組は、2006年にTOKYO FMのインターネット放送「TFM+」にて配信開始。幾度かの休止を挟みながら、現在はニコニコ動画の有料チャンネル「大川興業大チャンネル」にて配信されています。

この番組は、インターネット配信でしか視聴できないにもかかわらず熱狂的なファンを獲得。基本的にオープンスタジオでの公開収録という形式でしたが、そのときに生の視聴者に加え、インターネット配信の視聴者ともコミュニケーションを行っていました。その経験が、今のYouTubeでの活動につながっていると言えます。

参照:江頭2:50、YouTubeで快挙! 登録者数芸人“最速”100万人突破のワケ |zakzak

YouTuber芸人ブームの到来

お笑い芸人がYouTuberとして活躍する先駆けとなったのは、カジサックことキングコングの梶原雄太さんでしょう。2018年10月に新米YouTuberとしてデビュー。2019年7月にはチャンネル登録者数100万人を突破。一躍人気YouTuberとなりました。

参照:カジサック YouTuberで大成功も共演芸人がギャラに悲鳴 |NEWSポストセブン

その後、数々のお笑い芸人がYouTuberに。オリエンタルラジオのあっちゃんこと中田敦彦さん、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さん、ピン芸人のヒロシさん、最近では雨上がり決死隊の宮迫博之さんもYouTubeチャンネルを開設しています。

このように、お笑い芸人がテレビ以外の活躍できる場所としてYouTubeを選ぶという流れのなか、エガちゃんねるも始動。お笑い芸人がYouTubeに進出することに、一般視聴者の抵抗がなくなってきたいいタイミングでエガちゃんねるがスタートできたことも、好調の理由のひとつと言えます。

視聴者が応援したくなる愛されキャラ

江頭2:50は不思議な魅力を持つお笑い芸人です。ルックスは貧相なおじさん(失礼!)ですし、テレビで冠番組を持てるほどの人気者でもありません。しかし、お笑いにかける情熱や、東日本大震災のときに借金をしてまで福島県いわき市に支援物資のために訪れたりといった「いい人」ぶりがインターネット上などで話題となり、破天荒な芸風にもかかわらずみんなから愛されるキャラクターが定着しています。

参照:江頭2:50が物資支援の真相激白「お金ないからさ。体で払ってきただけ」。|ナリナリドットコム

また、本人はお金がないことを公言し、エガちゃんねるの収益化を熱望。動画のコメントでも「広告を付けてあげてくれ」といった声も多く見られます。

テレビと違い、ファンが直接応援できたり、広告収入の一助を担うことができるのがYouTubeのいいところ。その部分が江頭2:50に非常にマッチしていると言ってもいいでしょう。

とにかく「待ってました!」の声が多い

冒頭でも述べた通り、江頭2:50は現時点ではテレビ番組への露出はほぼゼロ。大川興業に所属しているとは言え、仕事はあまりないことが想像できます。ファンにとっては、「江頭2:50を見たい!」という欲求が溜まりまくっている状態でした。

そこにエガちゃんねるが開設されたわけです。「動く江頭2:50が見られる!」というだけでもうれしいのに、テレビ時代とは違い頻繁に新しい動画が配信される上、何度でも好きなときに見返すことができるわけですから、たまりません。

動画のコメントでも「待ってました!」といった声が多く、否定的な意見がほとんど見られません。芸能人のYouTubeには多かれ少なかれ誹謗中傷といったものがつきものですが、それが少ない(というか皆無)なのは、やはり世の中が「江頭2:50」を求めていたということなのでしょう。

YouTubeでこそ輝く芸人。それが江頭2:50

江頭2:50のYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」が人気となった要因は、本人の芸風とは裏腹に多くのファンから愛されているだけでなく、規制の緩いYouTubeというメディアとの相性のよさ、そしてインターネットテレビを長くやってきた彼だからこそのコミュニケーション能力の高さが挙げられます。

外的要因としては、お笑い芸人のYouTuber化の波があったことも追い風となりました。

しかし一番大きな要因は、江頭2:50が「愛されキャラ」だからでしょう。こんなことを本人が耳にしたら「営業妨害だ! 俺は悪いやつなんだから」と怒られるかもしれませんが、みんなが応援したくなる人柄であることは間違いないところ。やはり、自分の本音の部分を偽っていい人を演じても、それはすぐにバレてしまいます。

そう考えると、テレビにはあまり出られない希少価値の高い芸人、江頭2:50は、YouTubeでこそ輝く芸人なのかもしれません。

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