スタートアップ企業の中でも、急激に成長している企業を指す「ユニコーン企業」。「デカコーン」「ヘクトコーン」などの派生語もあります。この言葉自体は、まだ生まれて数年という新しい概念。そこで、国内外の企業を例に、ユニコーン企業の特徴、そして日本におけるユニコーン企業の現状について解説します。

ユニコーン企業とは?

「ユニコーン企業」という言葉は、2013年に生まれました。生みの親はベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏です。

ユニコーン企業の定義は以下の4つ。

企業評価額が10億ドル以上

日本円にすると約1080億円ほどです。ちなみに企業評価額が100億ドル(約1兆800億円)の企業は「デカコーン」、企業評価額が1000億ドル(約10兆8000億円)の企業は「ヘクトコーン」と呼ばれます。

起業10年以内

一般的に、起業から10年が経過すると、ユニコーン企業という枠組みから外れる、と認識されています。

非上場

ユニコーン企業であっても上場をすると、ユニコーン企業の定義から外れます。

テクノロジー関連企業

こちらは必須条件ではありませんが、これまでユニコーン企業と呼ばれたベンチャー企業の多くが、テクノロジー関連の企業でした。時代の流れに即した業種であるため、テクノロジー関連企業が評価を得てユニコーン企業になるのは、必然なのかもしれません。

以上4つの条件を備えた企業が、ユニコーン企業と呼ばれています。

なぜユニコーン?

なぜユニコーン企業と名づけられたのでしょうか。それは、「幻の動物」であるユニコーンのように希少な存在だからです。

ちなみに、「デカコーン」「ヘクトコーン」は造語。ユニコーンの「ユニ」は単一という意味。その部分を10倍を意味する「デカ」、100倍を意味する「ヘクト」にすることで、企業の規模を表しているのです。

代表的なユニコーン企業

ユニコーン企業は、企業評価額が10億ドルを超えた時点で呼ばれるため、毎週のように増えているのが現状です。2018年には100社以上がユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

ここでは、比較的最近ユニコーン企業の仲間入りをした企業を紹介します。

海外のユニコーン企業

以前はアメリカのユニコーン企業が目立っていましたが、最近では中国の企業が増加中。FacebookやTwitter、小米科技(Xiaomi、シャオミ)なども上場前はユニコーン企業と呼ばれていました。

Health Catalyst|10億ドル

病院向けのデータ解析プラットフォームを提供しているアメリカの企業です。電子カルテや患者の保険請求履歴をデータベース化することで業務の効率化を行うだけでなく、医療費削減などの効果も生み出しています。

Nuro|27億ドル

アメリカが本社のロボット会社。主に自動運転車の開発を行っています。自動運転技術を用いた無人配送車「R1」を開発。2020年2月には、無人配送車「R2」が公道でのテスト走行を行えるようになりました。

N26|27億ドル

モバイル専用銀行「Number26」の開発・運営、そしてスマホ用アプリの開発などを手がけるドイツ・ベルリンの企業。2013年設立ながら、数年でヨーロッパ最大級のモバイル銀行へと成長しました。

360企業安全集団(360 Enterprise Security Group)|30億ドル

中国・北京のサイバーセキュリティ企業です。中国国内で、ネットワークセキュリティに関するトータルソリューションの提供などを行っています。

Horizon Robotics|30億ドル

人工知能(AI)ソフトウェアや半導体チップの開発を手がける中国の企業です。自動車の自動運転とIoTを視野に入れており、すでに製品化されているものもあります。

日本のユニコーン企業

2020年2月現在、日本のユニコーン企業は以下6社のみ。海外に比べると数は多くありません。日本最大のユニコーン企業であったメルカリは、2018年に東証マザーズへ上場し、ユニコーン企業から除外されました。日本では、近年スタートアップ企業を支援するプログラムも出現しており、今後徐々に増加していくものと思われます。

Preferred Networks(プリファード・ネットワークス)|3516億円

ディープラーニングの技術を用いて、トヨタ自動車と自動運転技術などの開発を行っている企業です。そのほかにも、石油プラントの自動制御などの研究を行うなど、協業先を拡大しており企業評価額が上昇しています。

クリーンプラネット|1218億円

東北大学と共同開発した凝縮系核反応を用いた「新水素エネルギー」の実用化に向けた研究を行う企業です。2019年の三菱地所による出資も話題となりました。

TBM|1218億円

従来の石油由来のビニール袋に代わる、環境に優しい新素材「LIMEX」(ライメックス)を開発した企業。ソフトバンクショップや美術館など複数の企業で、LIMEXを使った手提げ袋が採用されるなど、近年注目を集めています。

リキッドグループ|1152億円

いち早く仮想通貨の取引プラットフォームを作り、シンガポール・日本・ベトナム・フィリピンで事業拡大をした企業です。仮想通貨取引所「Liquid by Quoine(リキッドバイコイン)」を運営するQUOINE(コイン)株式会社を傘下に持っています。

スマートニュース|1128億円

スマホ向けニュースアプリの開発・運営を行っている企業です。日本だけでなく海外でのサービス展開をしており、現在では4000万ダウンロードを突破しています。

TRIPLE-1|1032億円

最先端プロセス技術を用いた半導体の開発企業です。半導体システム「KAMIKAZE」を開発。2019年は富士通エレクトロニクスと提携し、今後販路が拡大していくことが期待されています。

代表的なデカコーン企業

ユニコーン企業よりも規模の大きい、デカコーン企業。現在20社ほどがそう呼ばれています。そのうちの代表的な企業を紹介します。

海外のデカコーン企業

ByteDance(バイトダンス)|750億ドル

動画投稿サービス「TikTok」などを所有する中国の企業です。その急成長ぶりは「世界最大級のスタートアップ」と称されています。なお、2020年には上場するという噂もあり、デカコーンからの卒業は目前かと予想されています。

滴滴出行(ディディチューシン)|560億ドル

ライドシェアをメインとしたサービスを提供している中国の企業です。タクシー配車、私用車配車、ソーシャルライドシェアなど、さまざまなサービスを提供。同様のサービスを提供している競合のUberより規模を大きくしています。

Airbnb|293億ドル

民泊の仲介業を行うアメリカの企業です。旅行者の宿泊の新しい選択肢として注目され、現在では世界中で利用者が増えています。年間数十億ドルの売上が続いているため、近々上場するのではと噂されています。

SpaceX|185億ドル

イーロン・マスクが起業したアメリカの宇宙事業を手がける企業です。民間月旅行の最初の搭乗客が、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥディ前社長の前澤友作氏であることを発表し、話題になりました。

日本でユニコーン企業が少ない理由は?

資金調達が難しい

投資家や有望なベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタル。アメリカや中国では、ハイリターンを期待して投資する企業が増えており、比較的小さなスタートアップでも大型資金調達を受けているところがあります。

一方日本では、ハイリスクハイリターンなベンチャーキャピタルはあまり盛んではありません。ベンチャーキャピタルの年間調達額は、アメリカで約10兆円、日本では約4000億円と言われています。

ベンチャー企業が短期で急成長を遂げるには、初期での高額投資が重要。しかし、アメリカや中国に比べて日本はベンチャーキャピタルの数も少なく、大型の資金調達が簡単ではないことからユニコーン企業が生まれにくいのです。

政府もスタートアップ企業をサポート

2018年には閣議決定された「未来投資戦略2018」のなかでは、「企業価値又は時価総額が10億ドル以上となる、未上場 ベンチャー企業(ユニコーン)又は上場ベンチャー企業を2023年までに20社創出」という目標を掲げ、有識者が推薦したスタートアップ企業を集中的にサポートする「J-Startup」をスタートしています。

参照:未来投資戦略2018

新たなユニコーン企業誕生に期待

日本ではメルカリ以降、ユニコーン企業および次世代ユニコーン企業が徐々に増加傾向にあります。技術的な面では決して世界に劣っているわけではありませんが、ベンチャーキャピタルがそれほど盛んでないというところで、一歩遅れを取っている印象があります。

「J-Startup」のように、政府もユニコーン企業育成に注力しています。今後、我々が想像もできないような新しい価値観と技術を持ったユニコーン企業が、さっそうと現れる日も近いかも知れません。

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ユニコーン企業は6社に、国内スタートアップ想定時価総額ランキング最新版TOP50(2020年1月)

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フォースタートアップス株式会社が、2020年1月6日時点での国内スタートアップ想定時価総額ランキングを発表した。2019年は国内ユニコーン企業数が6社に増えた。2018年時点では2社しかなかったことから、日本のスタートアップの成長がわかる。