Instagramをはじめとした企業のSNS活用を支援するテテマーチ株式会社で、プロダクト推進室のPMをつとめる有賀です。

テテマーチのInstagramマーケティングについての連載第2回。
前回は、「Instagramマーケティングで知っておきたい基礎知識」についてお話ししました。その中でInstagram運用におけるKPIについてどのようなものがあるかをご紹介しましたが、今回はKPIについてさらに深掘りしてお話しします。

テテマーチは企業のSNS活用支援をしている会社ですので、日々SNSに関するさまざまなご相談をいただきます。企業のSNS担当者と話していると、Instagramを運用する上で「フォロワー数」をKPIに置いている方が多いです。

フォロワー数をKPIに置くことは間違いではありません。ただ、それがすべてではないです。中には「フォロワー数以外の何を目標にしたら良いのかわからないケース」や、「社内でフォロワー数が増えたかどうかでしか評価されないケース」も存在するようです。
大事なのは、自分達が運用したい「目的」を踏まえた上で、追うべきKPIは何なのかを考えることです。

テテマーチ株式会社 プロダクト推進室 有賀歩美

目次

  1. 「目的」と「KPI」の例
  2. 「検索媒体としてのInstagram」について
  3. 「メディアとしてのInstagram」について
  4. 「コミュニケーションツールとしてのInstagram」について
  5. まとめ

「目的」と「KPI」の例

Instagramは、単なる投稿媒体ではありません。さまざまな使い道があり、Instagramをどう活用していきたいのかによって追うべきKPIが変わってきます。

今回は、Instagramの役割として以下の3つのパターンを例に挙げ、それらに関連するKPIについて紹介します。

①検索媒体としてのInstagram活用

運用方針:ユーザーの「何かを見つけたい」をかなえるアカウント
KPI:ブランド関連ハッシュタグや、ブランド関連商品名などで検索したときに表示されるUGCの件数(ハッシュタグ投稿件数)

②メディアとしてのInstagram活用

運用方針:ユーザーの「自分の生活に役立つ情報が知りたい」をかなえるアカウント
KPI:保存数などのエンゲージメント

③コミュニケーションツールとしてのInstagram活用

運用方針:ユーザーの「もっと近づきたい」をかなえるアカウント
KPIキャンペーンへの参加者数や、アンケートやクイズ投稿へのリアクション数

では、それぞれ詳しく解説していきます。

「検索媒体としてのInstagram」について

ユーザーは、何かを見つけたいタイミングに、Instagramで検索をします。
このとき企業アカウントからすると、「ユーザーから発見されやすい状態にしておくこと」が運用におけるミッションとなります。
この場合*「UGCの件数」がKPI*になります。

企業の公式アカウントの発信だけでは、ユーザー投稿に埋もれてしまったり、見つけて欲しいタイミング(ユーザーのニーズが高まったタイミング)で見つけてもらえなかったりする可能性があります。
さらに、ユーザーは第三者のリアルな口コミを見つけるため、SNSで検索をします。そのタイミングでは、PRではない一般ユーザーの口コミでないと、ユーザーから拒否されてしまうことも懸念されます。

よって、一番理想的なのは、企業公式アカウントが発信しているだけではなく、ユーザーが日常的にUGCを投稿してくれている状態になっていることです。
以上のことからわかるように、「フォロワー数」を増やさずとも、「自分のアカウントをフォローしてくれている人」以外にも情報をリーチさせたいときには、「ユーザーからの情報発信(UGC)」は有効な手段になります。

また、ユーザーが検索した際にUGCの「量」が豊富にあることは、ユーザーにとって、その企業やブランド、商品への信頼性にもつながるため、ユーザーが日常的に投稿してくれる仕組みをつくっていくことが必要です。

Instagramは新しいものと出会う場所

ユーザーの検索行動は、「ググる」から「タグる」に変化していると言われています。ユーザーは「大切なものと出会う」「新しいものを発見する」という体験を求めるとき、従来の検索エンジンではなくInstagramに訪れるようになっているということです。

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特に若年層においては、Instagramで「発見」したのち、口コミの創出や、購買などの「行動」を起こすことが一般化しています。
このように、何かを発見すべくInstagramを開いたユーザーの行動を引き起こすため、ユーザーから見つけてもらいやすくすることを目的とする場合、UGC数をKPIとして置くことを推奨しています。

「メディアとしてのInstagram」について

Instagramは、ユーザーの「自分の生活に役立つ情報が知りたい」をかなえる立ち位置として存在感を増しています。
そのような立ち位置のアカウントを目指すとき、重要になってくるKPIが「保存数」です。

ユーザーは自分にとって有益な情報や体験(ベネフィットコンテンツ)を求めています。そのようなコンテンツに出会えたときに、「あとで見返したい」「あとで試したい」「覚えておきたい」という意図で、いいねではなく「保存」をします。

なぜ、「有益な情報」の発信が必要になっているのか

なぜ保存されるような有益な情報が大事になっているのか。これには、Instagramのアルゴリズムに基づいたトレンドも影響しています。

2019年夏季ごろ、いいね数非表示のテストが本格化しました。
その結果起こったことがこちらです。

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「いいね数」と「リーチ・インプレッション」の相関は夏季ごろから下降傾向にあります。
一方、「保存数」と「リーチ・インプレッション」の相関は夏季ごろから上昇傾向がみられました。

つまり、いいねされればされるほど、多くの人に届きやすくなるという傾向はみられなくなっている一方で、*『保存されればされるほど、多くの人(フォロワーではない人にも)に届きやすい投稿になるという傾向が強まっている』*といえます。
多くの人の目に触れる機会を獲得できることは、多くの人にアカウントを見つけてもらえることにつながり、結果的にフォローしてもらえる可能性も高まります。

保存数と同じくらい重要な「滞在時間」

また、保存数と同じくらい、リーチ数に影響しているといわれているのが「投稿への滞在時間」です。その投稿にユーザーがどのくらい滞在したのかがリーチに影響するようにアルゴリズムが組まれているということです。

そのため、昨今流行りのマガジン系アカウント(雑誌のようなコンテンツを投稿しているアカウント)や、小説などの読み物コンテンツを投稿しているアカウントは、必然的に滞在時間が増えることにより、リーチが伸びやすくなる→その結果トレンド化した、という背景があると考えられます。

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このように、メディアのような立ち位置としてInstagramを運用していくとき、「保存数」をKPIに置くことでアルゴリズム上優位になりやすく、多くの人に投稿を届けやすくなり、アカウントを見つけてもらうことにつながります。

「コミュニケーションツールとしてのInstagram」について

ユーザーの「もっと近づきたい」をかなえる立ち位置としてInstagramを運用する場合、ユーザーからのアンケート回答数、クイズ参加数などの*「Stories投稿へのリアクション数」*がKPIとして重要になります。

「もっと近づきたい」の真意は、アカウントのフォロワー内のさまざまな熱量の人の中でも、より熱量の高い人を増やすことを意味します。
熱量の高い人はUGC創出や購買などの行動を起こしやすくなるため、熱量を高める施策は行動促進につながります。

このような運用をしていく場合、SNSの特性を活かして企業アカウントや企業の存在そのものを身近に感じさせるようなコミュニケーションを取り、ユーザーの熱量を高めることが運用におけるミッションとなります。

ユーザーとのコミュニケーションで関係値を高める意味

Instagramのアルゴリズムにおいて、「ユーザーとそのアカウントのつながりの強さ」や「ユーザーのコンテンツへの関心度の高さ」は、ユーザーのアクションをもとに判別されています。
*『このユーザーとこのアカウントはどのくらい親密なのか?』*が、ユーザーの過去のあらゆるアクションをもとに裏側で判断されていると考えるとわかりやすいかもしれません。

そうなったとき、ユーザーが、Stories投稿のアンケートスタンプやクイズなどに回答しているかどうかは、その親密度向上につながります。
アカウントで実施している、Stories投稿のアンケートやクイズは、単なるコミュニケーションに留まらず、その後のアカウントとユーザーの関係にも影響し得るということです。

親密度が高いと判断されるほど、そのユーザーがInstagramを閲覧した際に、Stories投稿がより左側に表示されたり、フィード投稿が上のほうに表示されやすくなります。

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フォローされていても投稿がフォロワーに届かなければ意味がないため、日常的にコミュニケーションを図り、ユーザーにとって親密な存在になっていくことが、投稿を見つけてもらいやすくするための手段となります。
この運用では、Stories投稿のアンケートスタンプやクイズによって、ユーザーのリアルな声をキャッチできるというメリットもあります。

まとめ

Instagramの運用方針の事例を3つ挙げ、それぞれにおけるKPIの例や、なぜその指標が重要になるのかをご紹介しました。

“インスタ映え” のような言葉が流行った頃、Instagramはビジュアルや世界観重視の「感覚型」のプラットフォームでした。当時は、KPIにもここまで多様性はありませんでした。
近年、Instagramに ”自分にとって有益な体験” を求めるユーザーが増加し、「体験型」のプラットフォームに変わっていったことにより、Instagram自体の価値提供の幅が広がりました。
そしてそれにより、フォロワー数以外に見るべきKPIも多様化していったのです。

もちろんフォロワー数も重要ですが、フォローは「アカウントを見つけてもらえた結果」のアクションです。まずは見つけてもらう必要があります。

UGC」や「保存」や「ユーザーからのアクション」が増加する→「接触できる範囲が広がる」「エンゲージメントが向上する」→最終的にフォロワーが増加する

という流れを理解しておくことが重要です。
ただフォロワーを増やそうとするだけでなく、アカウント運用の目的にあわせてKPIを策定し、運用をしてみましょう。

文:有賀 歩美

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Instagramをはじめとした企業のSNSマーケティングを支援するテテマーチ株式会社で、ディレクターを務める望月です。営業が受注した案件をディレクションし、実際にSNSアカウントを運営する仕事をしています。 今回は、「今さら聞けないけど覚えておきたいInstagramマーケティングで知っておきたい基礎知識」についてお話させていただきます。