2019年11月19日から22日の4日間にわたり、米サンフランシスコにて世界最大規模のITカンファレンス「Dreamforce 2019」が開催されました。

その中で語られた「顧客をすべての中心に」というコンセプト、そしてこれからのビジネスやマーケターがどう在るべきかを、株式会社セールスフォース・ドットコムのエバンジェリスト/プリンシパルコンサルタント熊村剛輔氏が2020年1月28日に行われた「マーケティング・テクノロジーフェア 東京 2020」で講演しました。

この記事では、講演内容、『顧客をすべての中心に』〜17万人が訪れる世界最大規模のITカンファレンス「Dreamforce」で語られたこれからのマーケターが考えるべき3つの視点についてレポートします。

顧客が主導権を握る時代に

講演の冒頭で「(Dreamforce 2019の)最初の数分間で『together』という言葉が何度も使われていた」と話す熊村氏。

「これからのマーケティング、ビジネスを考えていくときに、企業と消費者が一緒に手を組み、進めていかなければならないことがたくさんあります。消費者だけではなく顧客(対企業)、さらに社会と一緒になって。そういう意味でたくさん『together』が出てくるのですが、そんなビジネスを進めていかなきゃいけないよねという前振りがありました。」

これから社会一般に向けて、企業は価値を創造していく必要があります。世のため人のため、どれだけ価値を創出できるかが現代のテーマになっているのです。しかし、現状の問題として「多くの企業は、人々からの信頼を失いかけている」と熊村氏は指摘しました。

「世の中さらに価値創出をするのが難しくなっているもう一個の要因として、インテリジェンスの向上。世の中が便利になってしまったことで、顧客が、企業に対し要求する水準がどんどん高まっている。企業の立場から見れば、お客様を喜ばせるハードルが高くなってしまった」

「そして何よりも、顧客そのものが、企業やブランドに対して、より強い主導権を持つようになったというのが挙げられます。言ってしまえば、もうお客様が非常に強い状況です」

熊村氏はそういった顧客と企業との関係性を語り、そんな中で企業が価値創造するにはどうするか? という話に繋げました。

『顧客をすべての中心にする』という考え

顧客が求める要求水準と企業が提供できる価値にギャップが出てしまうことで、さらに顧客からの信頼を失ったり、企業から離れてしまったりといった問題が生じてしまいます。

それではどうするべきか? そこで株式会社セールスフォース・ドットコムが出したひとつの答えが『顧客をすべての中心にする」という考え方でした。

顧客を中心に、その周りにセールス、サービス、マーケティング、Eコマース、アプリなど、ビジネスに関するさまざまなものが取り囲むような形で存在しています。取り囲むだけでなく、きちんと共有されたプラットフォームでこれらを流水のように動かしていくべきだと熊村氏は語りました。

最も重要なのは顧客体験“すべて”

しかし、顧客をすべての中心に置くというのが実際には難しいことも現実。熊村氏は「言うは易く行うは難し」と表現しました。

「単純にポーズだけで顧客をビジネスの中心にしている方はいると思いますが、真面目にお客様をビジネスの中心に据えることは、実はかなり大変なことなのです。なぜなら、企業においてマーケティングやコマース、そういったすべてのものを含めた位置付けやポジショニングが変わるはずなのです。これまで中心に存在しなかったものを本当に中心に据えようとしたら、ビジネスの立ち位置も変わってくるはずなのですよ」

実際、中心に置かれた顧客からすれば、営業もカスタマーサポートもEコマースも、すべて“顧客体験”の一部でしかありません。そしてもっと言えば、顧客接点は、その顧客体験をするための窓口や手段でしかないのです。

「顧客をすべての中心にしたときに、最も重要なのは周りをぐるりと囲った顧客体験“すべて”です」

例えば、マーケティングだけ頑張る、アプリだけ高機能化する、WebサイトやEコマースだけ作り込む。こういった一部だけを一生懸命頑張っても、本当の意味で良い顧客体験を提供できていないと熊村氏は指摘しました。ごく当たり前のことかもしれませんが、マーケティングの現場では実際によくあることなのです。