中国・Analysys社が2020年4月27日、アフターコロナの中国で消費急増が予測される5大産業を発表した。その5つは、オンライン教育、インターネット医療、ニューリテール、オンライン旅行、交通移動だ。

1.オンライン教育

オンライン教育アプリのユーザー数がピークを迎えたのと同時に、競争は激化し、市場集中度(Market Concentration Ratio)が高まっていく。
Slide2-1.png
Slide1.png

この競争において、多くのユーザーが最も有名な教育プラットフォームを選択。いわゆる「マタイ効果」が顕著に現れている。

新型コロナウイルス収束後の成長機会

オンライン教育の強みを活かした教育体験を提供

オンライン教育の柔軟性、リソース配分の効率性、パーソナライズされた教育を強調し、オフライン教育とは異なるユーザー体験を提供する必要がある。

例えば、AIによる最適な学習コンテンツの推薦、スマートインタラクティブ・ティーチング、ナレッジマップ、スマートトレーナーなどの機能を提供することである。また、技術革新によって教育効果を高め、AIによるアダプティブラーニングを実現させる。そして、ユーザーがオンライン教育ブランドに対する価値を認め、新型コロナウイルス収束後も利用頻度を増加させることが重要だとした。

2.インターネット医療

新型コロナウイルスの流行によって、インターネット医療の市場規模は2020年に1960億9000万元に達する見込みである。また、年間成長率は前年比63.7%増になると予想され、2014年の59.3%を超え、2013年以来、最高の成長率となる見込みである。
Slide3-1.png

新型コロナウイルス収束後の成長機会

病院との連携

医療機関向けサービスを提供する上で重要な成長要因であり、互いのシナジーにより、新しい、あるいはより高いレベルの共存共栄モデルが生まれるだろう。

スマート医療機器の普及率が上昇

新型コロナウイルス流行時に、スマート医療機器のデータとオンライン診断サービスの実用性が検証されることとなるだろう。また、5Gが普及するにつれて、スマート医療機器が家庭で利用されるようになり、一般ユーザーにとって、大手医療機器メーカーが今後重要なパートナーとなるだろう。

医薬流通業界全体のDXが進む

店舗型薬局とオンライン薬局の統合が進められている。しかし、医薬品ECサイトは、物流の問題により配送が遅れ、ユーザー体験に影響が出ており、店舗型薬局と連携して発展していくことが主流となるだろう。そのため店舗型薬局は、生き残るために革新的なリテール手法を模索する必要がある。

若年層ユーザー向けのサービスを考え、優れた成果を出す

インターネット医療の主要なターゲットは、若年層ユーザーとなるからである。医師は、ストリーミングメディア、ショートムービーなどを通じてオンライン医学教育を実施することで、自身のブランド影響力効果を拡大し、企業のプロモーターとしての役割を果たすことができるだろう。

3.ニューリテール

インターネット通販サービスのMAUは、新型コロナウイルスの流行、工場の再開、物流問題による影響を受けている。
Slide6-1.png

「ニューリテール」における新型コロナウイルス流行の影響は完全には消えていないが、特定のカテゴリーにおいて消費のリバウンドが顕著になると予想される。

美容と衣料品

物流的な要因に加えて、ほとんどの市民の外出自粛によって社交の場が失われることで、一時的に美容と衣料品は価値を失い、消費者の需要も抑制した。 しかし、通常の生活が取り戻されば、これまで抑えられていた消費者心理の影響を受け、社会全体の消費需要は爆発し、美容品、衣料品は売上の大きな転換点を迎えるだろう。

生鮮食品

Slide7-1.png

大手生鮮インターネット通販サービス企業のDAUは大幅に増加しているが、こうした企業の多くは大・中規模都市に位置し、店舗も限られているため、大多数のユーザーは生鮮インターネット通販サービスの利便性を享受しておらず、ニーズが十分に満たされていない。

インターネット通販サービス業界が正常に戻った後、生鮮食品の基本的な需要、特に海産物、果物など地域特有の商品に対する高い需要をベースに、ユーザーの購買意欲が大幅に増加すると予測される。

チャンス到来に向けての準備を怠ってはいけない

美容・化粧品のニューリテール企業

優れたデジタル運用ツールを最大限に活用し、セグメント化されたユーザーグループに基づいて、新型コロナウイルス流行時のユーザー行動を追跡すべきである。そしてターゲットユーザーに対して、大きな影響力を持つ要因とチャネルを分析する必要がある。

生鮮食品類のニューリテール企業

物流の準備を特に重視すべきである。大手物流企業は徐々に通常業務に戻っているが、感染予防商品の納入を優先したり、従業員が仕事に復帰できないなどの理由で、春節以前の物流状態に戻るには、ある程度の時間が必要になる。そのため、輸送優先度が高い生鮮食品は、物流に必要な時間を見直し、低温で鮮度を保つ物流環境を構築する方法を模索。必要に応じて低温輸送方式などを選択しながら、包装をさらに強化する必要がある。

また、ユーザーは地域別の生鮮食品の販売再開に気が付かない可能性がある。これに対応するために、企業はマーケティング活動に力を入れ、さらにユーザーの心理的不安を取り除くために、食品安全対策に取り組む必要がある。

4.オンライン旅行

新型コロナウイルス収束後、旅行業界に以下のような機会が訪れる

マーケティングアップグレード

Slide8-1.png

2020年1月のオンライン旅行市場のMAUは2億6,045万人に達し、前年比10.33%増となった。

この突然の新型コロナウイルス流行は、人々の生活に混乱をもたらした。外出できないことで増加する「クラウドツーリズム( 現地に行けず、ネットで旅行先の情報を堪能すること)」の閲覧数は、国民の蓄積された旅行需要を早急に満たす必要があることを示している。したがって、業務停止期間は、観光会社がチャネルを整理して製品コンテンツを最適化するのに最も適している時期であり、常にマーケティング意識を持っておくべきである。

サービス品質の向上

観光体験がパーソナライズされ、より高品質な観光サービスが好まれる傾向が顕在化し、観光産業は競争段階に入った。またサービスについては、高品質であると同時に、ユニークなプランとリーズナブルな価格が前提になるだろう。

一般ユーザー向けの観光用スマートデバイス、専門サービスチームは、観光企業がサービスの構造を最適化し、サービスバリューチェーンをアップグレードするための重要投資分野になっている。したがって、今後の観光企業のサービス品質についての方向性は、サプライチェーンの統合能力を核として、プラットフォーム運営能力とサービス効率を組み合わせた総合的な競争を実現することが必要である。

旅行業界のDX

さまざまな種類のDX投資は、観光商品とサービス品質を向上させるため、重要な推進力となっている。DX投資はすでに事前相談と予約、旅行、消費などの場面をカバーしており、個人客の旅行体験の最適化に役立っている。将来的に、実際の旅行先のニーズを細分化すること、複数の角度からニーズの接点を確立することは、DXのさらなる推進によって旅行商品の差別化を実現できるし、旅行時の突発的な需要も満たすことになるだろう。

5.交通移動

感染予防のため政府は、在宅隔離、仕事や授業の延期、交通規制などを行い、市民の外出を最大限に抑制した。その結果、オンライン予約タクシー事業は、短期間で莫大な損失を出した。2020年の春節期間中、中国のオンライン予約タクシー市場の1日あたりの損失は5億8,000万元以上だと予想している。
Slide9-1.png

新型コロナウイルスは、中国交通移動市場に以下の長期的影響をもたらすと予想されている。

既存オンライン予約タクシープラットフォーム及び自動車メーカーが交通移動市場に参入

オンライン予約タクシー市場について、新型コロナウイルス収束後は、強力な資本力、高いリスクヘッジ力、運転手の管理能力が高い大企業に牽引される考えている。なお、オンライン予約タクシーにレンタカーを貸し出す事業は利益が大きく、投資回収期間が短いのが特徴であるという理由から、近年多くの自動車メーカーとレンタカー業者がオンライン予約タクシー市場に参入した。新型コロナウイルス収束後、オンライン予約タクシー会社の競争の敷居が次第に高くなり、主要なオンライン予約タクシープラットフォームと自動車メーカーが、この領域における競争の中心になると予想される。

自動車メーカーのオンライン予約タクシー市場の参入計画は減速

過去2年間で9つ以上の自動車メーカーが事業の枠を超え、オンライン予約タクシー市場に参入し、大量の資金を投下している。これらメーカー系のオンライン予約タクシー企業は、市場の新規参入者として、ユーザー及び運転手に多額のインセンティブを継続的に投入し、大量のユーザーを獲得するために、短期間で複数都市への事業展開戦略を採用した。

突然発生した新型コロナウイルスにより、自動車メーカー系のオンライン予約タクシー事業の黒字化は大変長い時間を要すると予測されている。自動車メーカー系のオンライン予約タクシー事業者は計画を見直し、低迷している景気を踏まえて、従来の業務を維持し、事業拡大を一時中止すると考えている。

シャトルバスは次の焦点

シャトルバスの運営は従来からある業界大手やスタートアップ企業まで、複数の企業がこの分野でチャレンジしている。しかし、住民に浸透するまでに時間を要するため、シャトルバスの発展は依然として市場の初期段階である。新型コロナウイルス流行後、北京やフフホト市(呼和浩特市)などの都市では、業務を再開する企業のためにシャトルバスを提供し始めた。これは、シャトルバスの認知普及や習慣形成の絶好の機会となるだろう。

国家安全保障レベルの議論となり政府の投資が増加すると予想

新型コロナウイルスを経て、交通業界のDXはすでに国家安全保障レベルの議論に発展した。

新型コロナウイルス流行時、深セン市や南京市など10以上の都市が率先して公共交通機関、地下鉄、タクシー乗車時の実名登録システムを導入し、乗客情報の追跡を実現し、新型コロナウイルス流行の予防と管理の効率を効果的に改善し、コスト削減も実現した。また、山東省、湖南省などでインターネットを利用して高速道路カード登録のチェックを行い、高速道路の円滑性を改善したことで物流の円滑性も向上した。

新型コロナウイルス収束後、政府は、バス、地下鉄、タクシー、高速道路などを含む多くの交通手段のDXを推進することが期待されている。

出典:アフターコロナの中国で消費急増が予測される5大産業の現状と未来