「フードテック」は、食の社会課題の解決策として、世界で注目されています。記事では、現在市場が拡大しているフードテックの基礎知識と取り組むべき課題や、フードテック技術を取り扱う企業について解説します。

フードテックとは?

フードテックとは、「フード」と「テクノロジー」を融合させた技術を差します。最新のテクノロジーを利用して今までにない新しい形で食品開発をしたり、新たな調理方法を見つけることが可能な技術で、サステナブル(持続可能性)が重要視されている現代において、食の可能性を見出せるとして、多くの企業がフードテックに注目し始めています。

環境破壊、食糧危機、人手不足などの社会課題を背景に、フードテックの市場規模は現在急速に拡大しています。この問題を解決するために、IT系の起業家などが食分野に参戦しており、その規模は世界で700兆円に上ると言われているのです。

フードテック業界の5つの分野

フードテック業界は大きく分けて5つの分野に分かれています。革新的なアイデアが多く、メディアでもよく取り上げられているのが、植物性たんぱく質で作られた代替肉や完全栄養食などの「次世代フード」。この分野では、日本のスタートアップ企業ベースフード株式会社の世界初完全栄養の主食『BASE BREAD®』や『BASE PASTA®』が話題となっています。 

パーソナライズな料理レシピの提供サービスや、そのサービスと連携する家電などの「スマートクッキング」分野では、ベースフードのようなスタートアップだけでなく、大手企業も参入し始めています。

その他にも、最近話題の自分の好みに合った食材が届く宅配サービスなどの「スマートデリバリー」や、ロボットを使い人手不足を解消する「次世代レストラン」、IoT機器による植物工場などの「アグリテック」などがあります。

フードテックで注目されているもの

すでに市場に出回っているフードテックとして、植物性たんぱく質から作られた菜食主義者向けの代替肉である大豆ミートなどが有名です。また、動植物の食べられる部分の細胞だけを抽出して培養させる、細胞培養という技術もあります。この技術を使えば、本物と変わらない牛肉や魚、野菜などの食材を作り出せるのです。

また、必要な栄養が摂取できるグミなどの新食材が作り出せたり、食材を長期保存する方法も開発されています。このような技術は、例えば、栄養失調や食糧不足で苦しんでいる国の人たちにとって必要なものです。フードテックは、深刻化する食糧問題を解決する方法としても期待されています。

その他、食品の傷みを見分けるフードテックツールも。食中毒を未然に防ぐなど、安全な食品を食卓に届けることが可能になります。

参考:フードテックとは|食料問題を解決する最先端テクノロジー

フードテックが取り組むべき課題

食品ロス

2050年には総人口が現在の77億人(2019年)から97億人に達する見通しです。この現状を放置すれば、世界の9人に1人(約8億人)が栄養不足になるなど、深刻な食糧危機に陥る恐れがあります。

そんななか、日本の食品廃棄量の多さは深刻な問題であり、本来食べられるにも関わらず廃棄されている食品(食品ロス)は600万トンを超える結果に。こうした食品ロスは、私たちの身近な課題として、さまざまな企業がフードテックを活用して解決に進んでいます。

参考:食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢

人手不足

ロボットやAIの導入など最先端技術を活用して、省人化や無人化を進めることによって、人手不足の解消が期待できます。農業などの第一次産業や食品製造業などでの人手不足は深刻化しており、早急な解決が求められています。

費用面

フードテックには、ある程度のお金が必要です。例えば、農家の人がフードテックを導入するとなると、無人で野菜を効率的に育てる際には、太陽光に代わる光を作るための電気代や、雨水に代わる水道代などがかかるでしょう。また、先述した食品開発にも莫大な費用がかかります。