今までIT技術と疎遠だったレガシー市場に、インターネットサービスや技術が入り込む事例が増えています。このように、特定の業界とテクノロジーが融合して生まれた価値や仕組みを「〇〇テック」と呼びます。「フィンテック(金融×IT)」「アグリテック(農業×IT)」「エドテック(教育×IT)」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。

そして近年、法律の様々な課題をITで解決する「リーガルテック」が広まりつつあります。

リーガルテック(法律×IT)とは

法律、というとピンとこないかもしれません。分かりやすい例で言えば、企業の法務や契約処理に関する業務に関わる課題です。私生活なら、法律相談などがあります。
これまで紙文化で分かりにくく旧態依然とした法律の世界にITなど最新技術を活かすことで、より業務効率化を図ったり法律の分かりにくさを改善したりしています。

日本でのリーガルテックの流れ

日本におけるリーガルテックは、企業の働き方改革とともに大きく成長してきていると言えます。
残業規制によって業務効率化が求められる中、紙文化で煩雑としていた法務・契約周りの業務改善が求められました。また、副業解禁、フリーランスの活用、リモートワーク推進により、業務関係者がオフィスに必ずいる環境が当たり前ではなくなった今、契約書にサインをするためだけに会社に出向くという非効率な方法が見直されてきています。

2020年4月15日、COVID-19禍でGMOの熊谷社長が発言した「決めました。GMOは印鑑を廃止します。」というメッセージもまさに、リモートワークの流れを受けてリーガルテックの活用を推進するというものです。

そのため日本では、「リーガルテック=法務書類や契約書作成などをITでサポートすること」ととらえられることが多いです。
なお、契約書そのものは法務に限らず人事やフリーランス界隈など様々な業界で交わされているので、リーガルテック企業がHRテック(人事×テック)などその他の〇〇テックにカテゴライズされている場合もあります。

日本のリーガルテックサービス

日本国内で成長しているリーガルテックサービスは、大きく分けて「契約書」と「法律相談」の2軸に分かれます。

契約書関連

クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサイン(CloudSign)は、日本の法律に特化した、弁護士監修のウェブ完結型のクラウド契約サービスです。契約書の直筆サインや印鑑は必要なく、ウェブ上ですべて完結できます。
また契約書だけでなく、発注書・請書・納品書・検収書・請求書・領収書など、様々な対外的な取引書類に対応しています。
2020年4月に導入企業数が80,000 社を突破し、電子契約サービスでは日本トップシェアを誇ります。

AI-CON(GVA TECH株式会社)

AI-CONはAIによる契約書チェックサービスで、AI により効率化・自動化することで、法務知識がなくても契約業務をより正確に早く安価で行うことができます。
AI-CONに契約書をアップロードすると、AIによる契約書チェックが行われます。不足項目の指摘や修正例の提示、修正意図の提示や過去にどのようなトラブルが発生したかなどを指摘してくれるので、より安心な契約書を作成できます。
2020年2月には、企業ごとのビジネス環境に則して最適化できるエンタープライズ向け契約書レビュー支援サービス「AI-CON Pro」を発表。リーガルテックの急拡大企業として注目されています。

Hubble(株式会社Hubble)

Hubbleは、契約書等の書類を作成する際のやりとりを最適化するクラウドサービスです。契約書のクラウド化が進む一方で、まだまだWord文化が根強く残る中、Hubbleを使うことで契約書を作成するまでのバージョン管理を自動で整理し、データ管理や膨大なメールのやり取りの手間などを省くことができます。
特に、契約書のクラウド化など抜本的な施策がしにくい企業や、契約書の管理方法に課題を感じている企業への課題解決を促します。

法律相談関連

弁護士ドットコム(弁護士ドットコム株式会社)

弁護士ドットコムは、弁護士に無料で法律相談したり、地域や分野などから弁護士や法律事務所を探すなど、法律トラブルの解決をサポートするコンテンツを提供する、日本最大級の法律相談ポータルサイトです。
会員の弁護士は17000人以上(2020年5月現在)。弁護士ドットコム内で交わされた膨大な質問・回答のテキストデータを大学等の学術研究分野でのデータ活用促進に向けて無償提供
する取り組みも進めています。

弁護士トーク(弁護士トーク株式会社)

弁護士トークは、相談者と弁護士のマッチングアプリです。スマホアプリ上で相談カルテを作成するだけで弁護士とマッチングでき、アプリ内であれば無料で法律に関する悩みやトラブルの相談がチャットでできます。

急成長するリーガルテック市場

2018年の国内のリーガルテック市場規模は、前年比115.2%の228億円という推計が出るなど、市場規模は年々拡大傾向にあります。

※矢野経済研究所より:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2224

行政手続きのデジタル化を推進するデジタル行政推進法などの一連の法律が国会で改正されるなど、民間だけでなく行政もデジタル化に向けた法整備が進む中で、契約書関連のリーガルテックは伸びてくることが予想されます。
また、企業各社が多角的なサービス展開を始めている中、契約書が従来より複雑化している状況もあります。そのような中で、ミスなく快適な法務・契約処理を迅速に行う必要性も出てきており、これらの状況の中でリーガルテックの有用性がより発揮されてくるでしょう。

参考:
リーガルテック(法律×IT)をわかりやすく解説 企業一覧、課題、市場規模は? |ビジネス+IT