新型コロナウイルスによる自粛生活でライフスタイルが大きく変わり、新しい商品・サービスを利用するきっかけが生まれ、消費行動に変化が生まれています。緊急事態宣言は解除されましたが、今後しばらく積極的な外出は控える傾向が続くと予想されており、今までとは違った消費行動が定着していくと思われます。

自粛前半は、自宅で快適に過ごせるようなサービスの需要が増していましたが、これからのアフターコロナ時代に伸びるサービスは何でしょうか?今後も高い需要が見込まれる注目のサービスを取り上げ、「どんなサービスが消費者から求められているのか」という成長の要因を分析していきます。

内食サービス

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、外食を控えて100%内食に切り替えた家庭は多く、内食のバリエーションを増やし質を上げようと、内食サービスを利用する人が増加しました。外出せずとも豊かな食生活を楽しめるのは便利ですし、現代は共働き世帯が増えていたり高齢化が進んでいたりと内食需要が高まっていることもあり、アフターコロナ時代も引き続き高い需要が見込める分野だと言えます。

レシピ動画サービス

レシピ動画サービスは、料理のクオリティを上げやすいツール。調理方法はテキストや写真だけだと加減が伝わりにくいことがあります。動画のほうが詳細まで伝わりやすく、レシピの説明に適したツールです。スマホがあれば、調理中も手元で簡単に動画を見られるので、デジタルネイティブ世代が増加するにつれてレシピ動画サービスの需要が高まっていくでしょう。

特に注目のレシピ動画サービスは「クラシル」です。管理栄養士が監修したレシピを扱い、2020年4月にはアプリの累計ダウンロード数が2,200万を達成した国内トップ(2019年)の動画サービス。5月から食材宅配サービスも開始しています。

参考:クラシル

デリバリーサービス

特に共働き世帯は平日に家族全員分の食事を用意するのが大きな負担です。自宅まで調理品を届けるデリバリーサービスは、こうした食の課題を解決する存在。

これまではバリエーションが不足していましたが、コロナショックでデリバリーサービスを実施する飲食店が増え、さまざまな「食べたい」ニーズに応えられるようになりました。自粛生活で利用し始めた人も多く、初回利用のハードルを越えればリピート注文されやすくなり、需要の高まりに伴って今後ますます普及していくと考えられます。

注目のサービスはやはり「Uber Eats(ウーバーイーツ)」です。シェアリングエコノミーを活用して一般人が気軽にドライバーとして働けるようにし、配送料を安く抑えました。「何円以上」という金額の縛りもなく(700円以下は少額注文の手数料のみ発生)、単身世帯や食の細い高齢者でも利用しやすいのも特長です。

また、Uber Eatsでは玄関先に商品を置いて直接の接触を防ぐ「置き配」サービスも始まり、受け取り方法を自分で選択できます。「あまり顔を合わせたくない」といったニーズにも応えられます。

参考:Uber Eats

定額制サービス(サブスクリプション)

外出自粛によりデジタル消費が加速しました。その代表格が定額制サービス(サブスクリプション)です。インターネット環境さえあれば、豊富な選択肢から自分が欲しいコンテンツを取捨選択でき、コストパフォーマンスが高いのが魅力です。外出せずとも高品質のサービスを受けられるため、外出自粛が解禁された後も拡大を続けるでしょう。定額制サービスの中でも、特に成長が著しいサービスを紹介します。

動画配信サービス

自宅でも多種多様なエンタメを堪能できる動画配信サービスは以前から人気でしたが、外出自粛によりさらに成長を加速させました。スマホやタブレットでの視聴が多くみられたものの、最近はテレビでの視聴も増えているようで、ライフスタイルに深く浸透している様子が窺えます。若者のテレビ離れが進むにつれて、自分が好きな動画を好きなだけ視聴できる動画配信サービスの需要が高まっていくでしょう。

人気のサービスは「Netflix(ネットフリックス)」。実際に新型コロナウイルスによる外出自粛に伴って、会員数が増加しました。昨年9月末から12月末までの2か月の増加数は677万人なのに対して、今年1月から3月末までの3か月の増加数は1577万人。2倍以上も会員数が伸びているのです。ほかの動画配信サービスでも、加入者は増加している傾向があります。

Netflixは、休眠アカウントに「お客様の大切なお金の節約に」と継続の意思を確認するアプローチも行っています。「この新しいアプローチが、お客様の大切なお金の節約につながることを願っています」という語りかけでサービスの好感度を上げる狙いがあり、高い戦略性が窺えます。

参考:Netflix
コロナ禍で「儲かっている」業界は?
Netflix、休眠アカウントに継続の意思確認--「お客様の大切なお金の節約に」

また、自宅で動画視聴が増えたことにより、おうち時間を豊かにするアイテムの人気も高まっています。テレビや映画、動く絵本を搭載したプロジェクター付きシーリングライト「popIn Aladdin(ポップイン・アラジン)」は、シーリングライトに「高性能プロジェクター」と「高音質スピーカー」を搭載。テレビのないスマートテレビとして活用でき、テレビを置かない家庭でも気軽に動画を楽しめます。映画などの映像作品だけではなく、例えば焚火の映像を映し出して「おうちキャンプ」をするなど、アウトドア感覚で映像を楽しめる点も人気を集めているようです。

参考:popIn Aladdin

通信教育サービス

緊急事態宣言によって休校が長引き、通信教育サービスの利用者が増えたそうです。通信教育サービスの多くが定額制のサブスクリプションサービス。各自の学力や学習課題に合わせて必要なコースを選べるので、効率的に学習できます。学校が開始した後も、子どもの学習サポートをする時間が取れない共働き世帯が増えているので、こうしたオンラインの通信教育サービスを利用する人が増え、インターネット教育がさらに普及するでしょう。

有名なのはリクルートが提供する「スタディサプリ」です。「神授業、見放題」というシンプルなキャッチコピー。対面型授業の枠がすぐに埋まってしまう人気講師の授業を、インターネットを介して地方の学生にも届ける点が人気を集め、2020年1Q時点で有料会員数が約74万人に達しました。学習格差をなくすビジネスモデルが多くの支持を集めた理由だと言えるでしょう。

2020年2月に980円から1980円に値上げし、学習コンテンツの拡充を目指しています。約2倍に値上げしたものの、一般的な塾に比べればリーズナブル。英会話など、大人向けの英語コースもあり、さらなる成長が見込めます。
参考:スタディサプリ
[議論]スタディサプリ成長秘話、WEB学習ってアリ?

シェアリングサービス

「モノよりコト」と言われるように、アフターコロナ時代は所有サービスよりも体験(利用)サービスが伸びていくと思われます。現代の消費者には、モノを所有する喜びよりもサービスを体験する楽しさを重視する価値観が広まっているからです。

そこで注目され拡大しているのが、所有ではなく利用を重視したシェアリングサービス。シェアリングサービスは所有(購入)するよりもリーズナブルな傾向があり、コストパフォーマンスが高いのがメリットです。ここでは、アフターコロナ時代に堅調に伸びていくだろうシェアリングサービスを紹介します。

カーシェアサービス

アフターコロナ時代に需要が増しそうなのが、移動のシェアリングサービス。車を持たない若者が増え、カーシェアリングが普及しています。車は購入費が高いうえに、購入後も維持費がかかります。賃貸物件だと車を保管する駐車場代もかかるでしょう。豊富な移動手段がある今、車は「コスパが悪い存在」になりつつあるのかもしれません。

カーシェアリングの代表格「タイムズカーシェア」は、2万台以上の自動車と1万ヶ所以上のステーション数を誇り、シンプルな料金体系が人気を集めています。車を持たず、必要な時だけカーシェアで利用する人が増えていくでしょう。

参考:タイムズカーシェア

CtoCサービス

大きな枠で捉えれば、個人間取引を行うCtoCサービスもそのシェアリングサービスの一種です。CtoCサービスの幅は広く、モノ・スキル・場所・時間などありとあらゆるものが取り引きされています。

新しいネットビジネスとして大きな市場を形成しつつあり、コロナショックで企業の経済活動が停滞しても個人でやり取りできるため注目度が増しました。個人が直接やりとりするビジネスモデルゆえに比較的安価な取引ができる傾向にあり、デジタル化に伴ってこれからも成長していくでしょう。

CtoCサービスの代表例はフリマサービスで、今一番勢いがあるのは「メルカリ」です。個人が不要になったモノを販売していて、買ったまま使用しなかった未使用品や中古品を気軽に売買できます。メルカリで購入したモノをまたメルカリで販売する人もいて、リサイクル・リユースするサステナビリティとしても捉えられるので、これからの価値観に合うサービスとも言えるでしょう。

参考:メルカリ

アフターコロナ時代は手軽でシンプルなサービスが求められる

アフターコロナ時代には、今よりもさらにデジタル消費が定着し、所有よりも利用を重視する価値観が主流になっていくでしょう。デジタル消費は「所有しなくても楽しめる」ビジネスモデルを実現しやすく、早く・安くモノゴトを消費できるようになります。これからは身軽な消費スタイルが人気を高めていきそうです。

マーケターは「消費者にどれだけ手軽に提供できるか」を重視したマーケティングがこれまで以上に求められるかもしれません。変化する消費行動にアンテナを張りながら、よりシンプルでわかりやすいサービス体系、アプローチを考えるといいのではないでしょうか。

参考:アフターコロナの消費者像-「デジタル消費」の加速と、「所有より利用」の揺り戻しも
「アフターコロナ」時代の消費行動は?
シェアリングサービスの成功事例【8選】
CtoCとは何か?BtoB、BtoC、BtoEとの違いやそれぞれの取引形態を解説

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