製品やサービスを売り出す前に必ずやっておかなけれならないのが市場調査です。
競合他社の調査をする前に、自社のプロダクトがユーザーから見てどうなのか、知っておくことが重要です。

この調査は、ユーザーの協力も必要となりますが、ユーザーの視点が盛り込まれるからこそ、事業に活かせるデータを得ることができます。

今回は、自社で行う市場調査の主な手法5つをご紹介します。
それぞれの手法の説明と、どのようなデータが欲しいときに使うといいのか、その手法のデメリットはなにか、使う際の注意点という4点を中心にまとめました。
どの手法にも、メリット・デメリットがありますので、よく見極めて使い分けましょう。

市場調査

市場調査とは、マーケティングリサーチとも言い、企業がマーケティングを有効に行うために市場に関する様々な情報を収集することです。
現状認識だけではなく、企業が意思決定を行う際に必要となる重要な情報源ともなります。
消費者は、必要なものがある程度「いつ、どこ」でも購入できるため、物理的水準でみるとかなり満たされています。
そのような環境の中で企業が自社のプロダクトを売り出していくためには、消費者の興味関心を引き、より魅力的なプロダクトを提供する必要があります。
そのためにも欠かせないのが、市場調査なのです。

市場調査を行うにあたっては、どのような視点で調査するのかを明確にしておく、調査項目に対する仮説をたてておく、調査に求めることはなにかを明確にしておくなどの注意点が挙げられます。
どの調査方法も多少なりと時間やコストがかかるものなので、調査を意義あるものにするためにもしっかりと把握しましょう。

1.パネル調査

対象を数名に絞り、対象に対して定点的に長期間調査を行う手法です。
特に、プロダクトの開発計画や市場予測などに使用されます。
代表的な例としては、消費行動の変化や視聴率の調査、プロダクトの使用状況の調査などに用いられます。
長期間特定の対象者からデータを得ることができるので、ユーザーのニーズや市場の変化、変化の理由や過程などを把握することができます。
プロダクトについてどの程度知っているのか、どのようなプロモーションでプロダクトを知ったのかを質問し、回答の変化を分析することで、ブランド構築や戦略をたてることに役立ちます。

パネル調査を行うにあたっての注意点は、対象者が途中で脱落しないような配慮をすること、対象者の質を見極めることなどがあげられます。
質問を繰り返すことは対象者にとって負担が大きいので、途中で脱落してしまう可能性があります。脱落者を少しでも減らすために、必要最低限の質問をするようにしましょう。
また、他の調査方法と異なり時間が非常にかかるため、対象者の質があまりよくないのでやり直す、ということが難しいです。回答者の質の検討は十分に行いましょう。

2.質問紙調査

あらかじめ用意した質問に対して、多くの人から得た回答を集計し、データを分析して必要な情報の抽出を行う手法です。
仮説検証型と現状把握型の2タイプがあり、調査の目的によって使用するタイプが変わります。

仮説検証型

何らかの仮説を設定し、その仮説に対する解を得るために行われます。
この場合、どのような仮説を検証したいのかを明確にすることが重要です。なお、検証したい仮説はひとつでなくても構いません。
代表的な例としては、プロダクトの企画内容が有効であるのか、Webサイトは使用しやすいかなどの調査に用いられます。

現状把握型

調査テーマの周辺の状況や、何が起きているのかを把握するため、いわゆる実態調査のために行われます。
この場合、アンケート結果をどのようにプロダクトにかつようしてくのかを計画にすることが重要です。
代表的な例としては、プロダクトのリニューアルや、売上目標を達成するために足りていない部分を発見するためなどに用いられます。

質問紙調査を行うにあたっての注意点は、対象者が回答をしやすいように質問項目の流れを整える、プライバシーに配慮する、質問項目にさりげなくウソを潜在させておき、有効でない回答を除く、調査目的によってサンプル数は異なるが、多い方が精度が上がりやすい、などがあげられます。

これらは全て、回答の質を上げるためには必須です。
最近はインターネットを利用した調査も進んでいるため、調査地域を限定せずに、短期間かつ低コストで調査を行うことができますので、そのようなサービスを有効活用しましょう。

3.座談会

質問紙調査などの定量調査では得られない、ユーザーの生の声を聞く手法です。
特に、プロダクトのβ版の改善や開発計画などに使用されます。
一般的には1グループにつき6〜8人程度で進行者の指示に従い、ある特定のテーマについての正直な感想や意見が話し合われます。1つの調査につき複数のグループを作って実施されます。
具体的には、プロダクトを使用する過程を調査するユーザーテストを行ったり、プロダクトの評価を知るために用いられます。
ユーザーテストを行うことで、プロダクトをストレスなく使用できるか、使用過程に無駄がないかなどを調査することができます。
また、ユーザーの生の声を聞くことができるので、ユーザーのニーズが具体的にどこにあるのか、現在の問題点はどこかなどをオンタイムで把握することができます。

座談会を行うにあたっての注意点は、内容が漏洩しないように規約を結んでもらう、テーマを明確にする、事前調査をして、テーマに沿う人を選出するなどがあります。
内容によっては、社内の機密情報を一部公開しなければならない場合もありますので、TwitterやFacebookなどのSNSで拡散されないように注意が必要です。
また、テーマを明確にする、対象者を選出するということは座談会の内容をより意義のあるものにするために重要です。

4.MROC調査

対象者同士に一定期間SNSなどのコミュニティ上で自由に議論をしてもらう手法です。
上記の座談会と概要は近いものがあり、プロダクトのβ版の改善や開発計画などに使用されます。
対象者どうしの双方向のやり取りから、企業側が想定し得なかったインサイトが発見できることもあります。

座談会形式とは異なり、オンライン調査であるため、

・世界中から対象者を集められる
・対象者の時間の融通が効く
・負担が少ない
・なかなか時間を確保しにくい社会的地位の高い人にも参加をお願いできる

というメリットがあります。

また、匿名での意見交換ができるので、社会的立場を気にすることなく自由な意見を知ることができます。
そのため、より質のよい回答を得ることができたり、様々な立場からの新しい発見を得ることができます。

MROC調査を行うにあたっての注意点は、事前調査で参加者を選定する、適切なプラットフォームを順にしておくなどが挙げられます。
発言力のある人や最後まで積極的に参加する意志のある人、マネージャーのような場をまとめる人などを含めておかないと、意義のある話し合いは生まれず、気がつくとコミュニティが自然消滅してしまう可能性があります。

適切なプラットフォームを準備しておかなくては、対象者が入力しづらいという問題が発生し、対象者のエンゲージメントが落ちるということもあります。
加えて、企業側でも大量の発言を分析するスキルをもつ人材を用意しておく必要があります。

5.電話調査

調査員が対象者に電話をかけて質問をし、回答を得る手法です。
代表的な例として、世論調査があります。
その場で回答してもらうので、リアルタイムに回答が得られます。また、他の調査方法に比べて調査の準備の手間がかからないことも含め、コストをおさえることができます。さらに、幅広い地域での調査が可能なので、調査対象に偏りがでることも少なくなります。

電話調査を行うにあたっての注意点は、

・質問時間は15分以内を目安とする
・時間に合わせて質問項目数も最低限におさえる
・難しいことは質問しない、自由回答は求めない
・資料がなくても回答ができる質問のみにする
・同音異義語を避ける、なるべく「はい」「いいえ」で回答できる質問にする

などが挙げられます。
電話調査の場合、対象者は予期することなく調査のために時間を拘束されます。そのため、15分以内を目安とし、質問内容もその時間に見合うものに制限されます。対象者の都合を考慮した調査は、結果的に質の良い回答を得られますので、これらの注意点には気をつけましょう。