自社で導入している公益資本主義に照らしあわせた精度や仕組みは?

「評価しない」評会制度であるサイコロ給を導入した理由

柳澤氏:株主は短期の指標を見るから会社は右往左往してるんです。
長期の視点で見ていくことが重要。

クリエイティブも時間軸が長い。長いスパンで会社を評価するだけでだいぶ違う。

こういう会社にしたいと考えたときに、文化を作るのは「評価」です。
なにごとも評価で成り立っているんですよね。
なぜなら、社会人になった時に気持ち悪いと思ったんですけど、評価を気にしなきゃいけないんだなあと。そこで僕らはサイコロ給を始めました。
報酬で評価する制度が確立されているなかで、一切評価をしない評価をしている。これってかなりの最先端ですよね。全く評価をしない評価というのは1つのメッセージで、「他人の評価を気にするな」ということなんです。
評価を気にし過ぎると面白くなくなるんですよ。

17年やってきて正しかったと思うのは、世の中は自殺率や失業率が上がってきてます。
仕事上でお前は使えないと言われると、全人格を否定されたかのようになってしまう。評価が厳しすぎるんではないかなと。あと、他社と比較しすぎてしまう。

資金が潤沢にあることは必ずしも良いことではない

佐野氏:僕は…どうなのかなあ。ていうか、皆さんどういう話を聞きたいですか?
僕はどっちかというと、公益資本主義についてもっと知りたいなと思ってるんですけど。結構時間限られてるんで、せっかくならどうぞ。

参加者:中長期的な視野で投資という話を聞いてたんですが、クックパッドさんも最初は、なかなか成功するまで時間がかかっていたと聞いてたんですが、最初はどういうところがファイナンスしてくれたんでしょうか。
中長期的な計画を実現するために具体的に何をしたのでしょうか。

佐野氏:最初に利益でるまで7年かかってたんですが、お金なかったんですよ。
それがすごくよかったかなと今は思ってます。
お金を使って事業をするとなったらすごくハードルが高くなって。我が社が置かれてる状況ってすごい恵まれてる環境だなと思ったんですが、なかなか事業が生まれない。
お金からのプレッシャーがかかってる状態というは実は恵まれた環境なのかなと思います。

資金が潤沢にあるのは、長期的に担保されてると思いきや、事業が生まれる環境としては実は良くないんじゃないかなと思うんです。
長期的な事業を考えるとき、必ずしも潤沢な資金が必要というわけではない。実際、長期的に取り組むには資金は必要。こういうジレンマをどう考えるか。

でも、日本人に生まれた時点で大丈夫ですよ。
だって死なないですもん。

僕が起業したのは、「死なない」とわかったから。餓死することは無いだろうなと。
考えたら起業のリスクって無いんですよ。実はお金もそんなにいらないんじゃないかと。

お金無いなりに、小さい範囲でちゃんと利益をうむ形を追求することをやるべきですね。
利益は事業の価値が定量化されてわかりやすいからいいですよね。それをしっかりと、いまいる立場から、一歩一歩実証していくプロセスが、色んな価値を生み出していく。

自分が最初に持つ資本は自分です。
自分を資本に、何かしらを生み出し、利益を得る、という一歩をまず経験するべきかなと。資本が必要な時って、事業をスケールさせる時とか、結構限られてると思うんですよね。そこを勘違いして先に潤沢な資金を用意しちゃうと、今度はお金使うの大変ですからね。
資金が泳いでるのって自分が使えてないから。お金使っても利益生み出せない人が集まってもしょうがないです。

今持っている資本から、利益を生み出すことが大事。

「サイボウズは売上・利益を追求する会社ではない」と株主に宣言

青野氏:僕たちは働き方を良くしたいなと思って。
サイボウズも昔は離職率28%だったんですよ。2005年に社長になってから残業0とか、在宅勤務OKとか産休6年間とか働く時間帯選べるようにしたりとか色々やったら離職率4%にまで下がった。女性の定着率も高くなり、4割を占めるようになりました。BtoBの起業では異例の割合かなと。

お金って面白いなあと思うんですよ。
社長になった当時、株価が低かったんです。そこをなんとかしたくて、IR活動色々やって、ちょうどITバブルもきて株価は10倍近くにまで跳ね上がりました。絶対そこまで価値はなかったのに。

そのあとバブルが終わった時「あの時株を薦めてくれてありがとう、おかげで大儲けしたよ」という話を聞きました。
そこで、僕は何をやってたんだろうと。この人を儲けさせるためにやったんじゃないと気付きました。彼が売った時に株を買った誰かは大損してるんですよね。

それ以降IR活動はやめて、「サイボウズは売上・利益を追求する会社ではありません」と定義して、毎年株主総会で言ってます。
本当に、お金はやりたくないことをやらせてしまう魔力があります。

**柳澤氏**:それ、急に方針転換して大丈夫だったんですか?

青野氏:一回、総会は荒れましたね。
利益を求める方が来ること自体はわるいことじゃない。株主と一緒の方向を向いていれば大丈夫だと思う。お金がリターンになるとずれていくんじゃないかと思います。

会社をどれだけ自然に近づけられるか

森川氏:僕の会社は初めてまだ1ヶ月なのでまだこれからというところなんですけども。

もともといろんな仕組みというものは、自然が基軸になって進んできたものかなと。資本主義も、人間は誰もが死ぬという概念があったからこそ分配の仕組みがあった。
ただ今は、自然から人間が生まれ、人間からコンピュータが生まれている。
コンピュータは死なないんですよ。そこからバランスが崩れていったんが始まったと思うんですね。

僕は会社をどれだけ自然に近づけられるかを考えています。
良いサービスをしていれば皆にこにこする。悪いサービスを提供すると嫌な顔をして見てくる。働く人達に対しても、何のルールも儲けてない。ルールがないからこそ、自然に近い状態だからこそ、人間らしくいられるんじゃないかと。
皆がハッピーになる仕組みをどのように作っていきたいですね。