「お中元」は、全国的に7月がトレンドです。小売店などでは、いわゆる「お中元商戦」を迎えている企業も多いことでしょう。しかし近年、この「お中元」に関する消費者の動向は少し様変わりしてきています。

そこで今回の記事では、マーケターや、企業のWeb担当者の方々がギフトのトレンドに関する最新の消費者動向についてキャッチアップできるよう、さまざまなデータをもとに読み解いていきます。

お中元は全国的に7月がトレンドだが、商戦に変化も

7月は全国的に、「お中元」を贈るピークの時期に当たります。全国主要都市の百貨店店頭では、早いところで5月のゴールデンウィーク明けからお中元売り場をオープンしたところも。今年は、新型コロナウイルスの影響もあり、売り場で「3密」を避けられるようにスペースを広く確保したり、商材に関しても「巣ごもり消費」に対応した、賞味期限の長いグルメギフトや、衛生用品なども並んでいたりするようです。

しかし、お中元商戦の変化は、それだけではありません。

半数以上が「お中元を贈らない」

[図1]お中元を贈るかどうか

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画像引用:【リリース】30代以上の主婦の方を対象に、お中元に関する意識調査を実施しました

2019年に「JOYLAB株式会社」が実施したインターネットリサーチ『「お中元」に関する意識調査』によると、54.6%の人が「お中元を贈らない」と回答。今や、お中元を贈る人の割合は「2人に1人」を下回っていることが明らかになりました。

同じく、「儀礼ギフト」とも言える「お歳暮」の風習についても若年層ほど衰退しつつあることを示すデータが存在します。

[図2]歳暮を贈るかどうか(年代別)
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画像出典:“歳暮”文化の衰退止まらず? 贈ったことが無い20代は81.8%、30代でも57.0%

50代では「歳暮を贈る予定がある」が「ない」を上回っているものの、40代、30代、20代ではいずれも「贈る予定がない」が過半数を占めています。特に30代では72.5%、20代では86%が「贈る予定がない」と回答しており、今や「儀礼ギフト」は年代が低くなればなるほど衰退していっていることがデータから伺えます。

一方、個人でのギフトカードの贈答は上昇

[図3]ギフトカードを贈ることについての意識

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画像出典:誕生日のお祝いにギフトカード・商品券を|三井住友VISAカード

「お中元」「お歳暮」といったいわゆる「儀礼ギフト」の風習が衰退する一方で、個人間での「ギフトカード」の贈答については増加傾向にあると言われています。

[図3]は、三井住友カードが2018年に実施したインターネットリサーチ「贈り物に関するアンケート」の結果を抜粋したものです。誕生日のお祝いに贈り物をしたことがある全国18~99歳の男女300名に、ギフトカードを贈ることについての意識を問いかけたところ、60%が好意的、あるいは実際に「贈ったことがある」と回答したことが明らかになりました。

「良いと思う」理由としては、以下のように回答者の声が挙げられています。

・実用的で、好きなものを買えるから
 ・ギフトカードで相手の欲しいものを好きなタイミングで購入してほしいから。
 ・現金を渡されるよりも抵抗が少なく、自分の欲しいものを買えるから。
 ・現金だと受け取り辛いかなと思ったので。
引用元:誕生日のお祝いにギフトカード・商品券を|三井住友VISAカード

「ギフトカード」を「現金を贈る代わりに」と位置づけている人もいることが分かりますが、ここで注目すべきは*「相手の好きなものを、好きなタイミングで買える実用性」という側面でしょう。*

「儀礼ギフト」で感謝のしるしに特定の「モノ」を改まって贈ったら、実は相手の好みの品ではなかった、というケースも多々あり得ます。それよりも、もっと柔軟性を持って、カジュアルに抵抗感なく受け取ってもらえる、という点が「ギフトカード」の利点でしょう。

この「ギフトカード」の個人間贈答は、日本国内で伸長している、というよりは世界的に見てもこれからますます伸長していく、と言われています。

例えば、グローバルギフトカード市場のトップに数えられるものとして「iTunesカード」や「ニンテンドープリペイドカード」「Amazonギフトカード」「Visaギフトカード」などが挙げられます。これらは、日本全国各地のコンビニや、ドラッグストア、ショッピングモール、ディスカウントストアの店頭などでもよく見かけます。また、インターネット経由でも購入することができ、さらには額面に相当する「ギフトコード」をそのままインターネット経由で相手に贈るところまでできます。

今や、ギフトカードもいわゆる「オムニチャネル戦略」でオンライン、オフラインを問わずさまざまな場所から買うことができて、消費者にとって「モノ」よりももっと気軽に贈れるカジュアルギフトとして伸長していっているのだと考えられます。

参考:
ギフトカード市場の上昇傾向、需要、成長するビジネスチャンス2020〜2026|ラベルオンライン

主要メーカー別のビザギフトカード市場、需要および戦略的展望 アマゾン、ベストバイ、カルフール、eBay、iTunes|ラベルオンライン

「儀礼ギフト」よりも「カジュアルギフト」「プチギフト」

では、「儀礼ギフト」より「カジュアルギフト」が受け入れられている背景には、どういった側面があるのでしょうか。

若者は「コト消費」「つながり」を重視する傾向

[図4]豊かな暮らしに最も重要だと思うこと・もの(年代別)
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画像出典:【特集】若者の消費 | 消費者庁

図4は、消費者庁が2017年に発表した「若者の消費」に関する報告書から抜粋したもので、「豊かな暮らしに最も重要だと思うこと・もの」について示した図表です。

この中で、若者、特にこの回答データの中で最も若い世代に該当する「15-19歳」に顕著なものは「1位:お金(43.0%)」「2位:家族や友人とのつながり(30.9%)」であることが分かります。

先述した、お中元やお歳暮といった「儀礼ギフト」を贈っている高年齢層が「家族や友人とのつながり」を重視しているかと言うと、若年層と比較してそれほど割合が高くないことがこの図表からは読み取れます。

また、この消費者庁の報告書の中では、20歳代では交際費にお金を掛けている、今後もお金を掛けたい、人とのつながりを重要視した「コト消費」に重きを置いている点についても述べられています。

他に、「交際(飲食を含む。)」にお金を掛けていると回答した人の割合は、20歳代で45.2%と、全体の29.0%を大きく上回っています。今後お金を掛けたいとの回答の割合でも、全体が25.7%のところ、20歳代では39.4%であり、人とのつながりに軸を置いた「コト消費」を重視していることが分かります。
引用元:【特集】若者の消費 | 消費者庁

この消費者庁のデータと、先述した「儀礼ギフト」を贈るかどうかのデータを併せて読み解くと、若年層では個人間の交流・交際・つながりは高年齢層よりもむしろ重視している、交際費も掛ける、だが旧来の「お中元」「お歳暮」を贈る行動はしない、という実態が浮かび上がってきます。

カジュアルギフト市場の拡大

[図5]年間のギフト機会と、年間に贈る回数
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画像引用:データから見える、拡大していく「カジュアルギフト」市場|宣伝会議

[図5]は、大日本印刷(DNP)による「ギフト・コミュニケーション」に関する研究結果から一部抜粋したものです。

最右列の「平均実施回数(回)」とは、年間にギフトを実施する(=贈る)回数を示したもの。
注目すべきは、「日常的なプチギフト(※平均単価1500円):年間4.9回」「訪問時、外で会うときの手土産(※平均単価2700円):年間3.7回」というデータです。

「母の日」「父の日」「クリスマス」といったシーズナルイベントがいわゆる「ギフト商戦」だと捉えられがちですが、そういった機会を一回一回細かく捉えていくと、1人あたりの年間ギフト実施回数は、この図表でも示されているように伸びていきません。

しかしその一方で、比較的単価の低い「日常的なプチギフト」「手土産」といった機会にフォーカスすると、年間でギフト実施回数は増えていく可能性があるのです。

先述した、若年層では「つながり消費」「交際費」を重視する、というデータと併せて考えると、若い世代が「日常的なプチギフト」「手土産」をよく実施している、と推測することもできます。

相手のLINEだけ知っていれば贈れる「ソーシャルギフト」

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画像出典:ムードマーク

このような若年層のプチギフト、カジュアルギフト需要に対応すべく、大手百貨店の三越伊勢丹では2019年10月にオンラインギフトブティック「ムードマーク」をオープン。

お中元、お歳暮などの改まったギフトではなく、女子会、職場への手土産、親しい人への誕生日プレゼント、出産祝いなどに500円〜2000円ほどの予算で贈ることができるギフトを取り揃えています。

また、単に「ECで注文できるギフト」という側面だけではなく、「ソーシャルギフト」の機能もリリース。相手の住所を知らなくても、LINEかメールアドレスさえ知っていれば、相手がプレゼントを受け取るための案内フォームが届いて、受領まで完了する、という仕組みも取り入れています。

参考:三越伊勢丹/若年層のプチギフト需要対応したEC「ムードマーク」|流通ニュース

個人間でのギフト贈答の実態は、少しずつ様変わりしてきている

特に若年層では、改まった「お中元」「お歳暮」の風習は衰退し、それよりも、もっと日常的な「プチギフト」「カジュアルギフト」が重視される傾向にあることをデータから読み解かれました。

また、「プチギフト」「カジュアルギフト」は年間に1度きりのギフト機会ではなく、1人あたりのギフト実施頻度が多いことも見えてきました。このように、個人間でのギフト贈答の実態とは昨今、少しずつ様変わりしていることを、年間の企業活動展開のうえで理解していることは、新たなビジネスチャンス創出にも寄与していくかもしれません。