「儀礼ギフト」よりも「カジュアルギフト」「プチギフト」

では、「儀礼ギフト」より「カジュアルギフト」が受け入れられている背景には、どういった側面があるのでしょうか。

若者は「コト消費」「つながり」を重視する傾向

[図4]豊かな暮らしに最も重要だと思うこと・もの(年代別)
image2.png

画像出典:【特集】若者の消費 | 消費者庁

図4は、消費者庁が2017年に発表した「若者の消費」に関する報告書から抜粋したもので、「豊かな暮らしに最も重要だと思うこと・もの」について示した図表です。

この中で、若者、特にこの回答データの中で最も若い世代に該当する「15-19歳」に顕著なものは「1位:お金(43.0%)」「2位:家族や友人とのつながり(30.9%)」であることが分かります。

先述した、お中元やお歳暮といった「儀礼ギフト」を贈っている高年齢層が「家族や友人とのつながり」を重視しているかと言うと、若年層と比較してそれほど割合が高くないことがこの図表からは読み取れます。

また、この消費者庁の報告書の中では、20歳代では交際費にお金を掛けている、今後もお金を掛けたい、人とのつながりを重要視した「コト消費」に重きを置いている点についても述べられています。

他に、「交際(飲食を含む。)」にお金を掛けていると回答した人の割合は、20歳代で45.2%と、全体の29.0%を大きく上回っています。今後お金を掛けたいとの回答の割合でも、全体が25.7%のところ、20歳代では39.4%であり、人とのつながりに軸を置いた「コト消費」を重視していることが分かります。
引用元:【特集】若者の消費 | 消費者庁

この消費者庁のデータと、先述した「儀礼ギフト」を贈るかどうかのデータを併せて読み解くと、若年層では個人間の交流・交際・つながりは高年齢層よりもむしろ重視している、交際費も掛ける、だが旧来の「お中元」「お歳暮」を贈る行動はしない、という実態が浮かび上がってきます。

カジュアルギフト市場の拡大

[図5]年間のギフト機会と、年間に贈る回数
image5.jpg

画像引用:データから見える、拡大していく「カジュアルギフト」市場|宣伝会議

[図5]は、大日本印刷(DNP)による「ギフト・コミュニケーション」に関する研究結果から一部抜粋したものです。

最右列の「平均実施回数(回)」とは、年間にギフトを実施する(=贈る)回数を示したもの。
注目すべきは、「日常的なプチギフト(※平均単価1500円):年間4.9回」「訪問時、外で会うときの手土産(※平均単価2700円):年間3.7回」というデータです。

「母の日」「父の日」「クリスマス」といったシーズナルイベントがいわゆる「ギフト商戦」だと捉えられがちですが、そういった機会を一回一回細かく捉えていくと、1人あたりの年間ギフト実施回数は、この図表でも示されているように伸びていきません。

しかしその一方で、比較的単価の低い「日常的なプチギフト」「手土産」といった機会にフォーカスすると、年間でギフト実施回数は増えていく可能性があるのです。

先述した、若年層では「つながり消費」「交際費」を重視する、というデータと併せて考えると、若い世代が「日常的なプチギフト」「手土産」をよく実施している、と推測することもできます。

相手のLINEだけ知っていれば贈れる「ソーシャルギフト」

image3.png

画像出典:ムードマーク

このような若年層のプチギフト、カジュアルギフト需要に対応すべく、大手百貨店の三越伊勢丹では2019年10月にオンラインギフトブティック「ムードマーク」をオープン。

お中元、お歳暮などの改まったギフトではなく、女子会、職場への手土産、親しい人への誕生日プレゼント、出産祝いなどに500円〜2000円ほどの予算で贈ることができるギフトを取り揃えています。

また、単に「ECで注文できるギフト」という側面だけではなく、「ソーシャルギフト」の機能もリリース。相手の住所を知らなくても、LINEかメールアドレスさえ知っていれば、相手がプレゼントを受け取るための案内フォームが届いて、受領まで完了する、という仕組みも取り入れています。

参考:三越伊勢丹/若年層のプチギフト需要対応したEC「ムードマーク」|流通ニュース