アメリカの大手IT企業4強は「GAFA(ガーファ)」と呼ばれます。同様に、中国の大手IT企業4強を指して「BATH(バース)」という通称が存在します。

この「BATH」は年々、世界のIT市場において存在感を増してきています。
そこで今回の記事では、ビジネスパーソンに向けて、中国大手IT企業4強の最新動向や、その力強さの背景をさまざまなデータや事例から解説していきます。

##「GAFA(ガーファ)」とは?「BATH(バース)」とは?それぞれの立ち位置は?

アメリカの「GAFA」とはそれぞれ、以下の4社を指します。

G=Google(検索エンジン)
A=Apple(デバイス販売)
F=Facebook(SNS)
A=Amazon(ECサイト)

一方、中国の「BATH」とはそれぞれ、以下の4社を指します。

B=Baidu(検索エンジン)
A=Alibaba(ECサイト)
T=Tencent(SNS)
H=Huawei(デバイス販売)

参考:GAFA(ガーファ)に匹敵?中国企業群「BATH」とは|ferret

「GAFA」は「BATH」の3倍の事業規模を誇る

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[図表]主要事業別「BATH」と「GAFA」の企業比較
※Huaweiは未上場のため時価総額不明
※CHN/USD換算2019年6月20日現在
出典:GAFAとBATHとは?売上・利益の比較、5G・AIの次世代の覇権は?|わかること!

この表から「GAFA」の2018年度総売上を足し上げると6910億ドル(74兆円以上)、純利益が1220億ドル(13兆円以上)となります。

一方、「BATH」の2018年度総売上を足し上げると2224億ドル(24兆円以上)、純利益が360億ドル(3.8兆円以上)となります。

つまり、売上や利益といった数字の面から見ると、2018年時点でGAFAはBATHの3倍強ほどの事業規模を誇る、ということが分かります。

ただ、時価総額の順位でいうと「T=Tencent」は、世界第7位をマークしており、中国のIT大手企業が世界市場の中で大きな存在感を見せているということは間違いありません。

コロナ禍で「GAFA(ガーファ)」の利益確保はどうだったか?

2020年7月30日、「GAFA」は2020年4月〜6月期の決算発表を行いました。

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[図]筆者作図 GAFAの2020年2Q決算
参考:
GAFA、3社が増益確保|共同通信

Alphabet決算、Google上場以来初の減収 コロナ禍による広告減で|IT media News

2020年2Q(第2四半期)、つまり4月〜6月とはまさにコロナ禍に該当する頃。そんな中でも「GAFA」のうちAmazon、Facebook、Appleは前年同期と比較して増収増益を記録し、特にAmazonに関しては過去最高の売上高を記録しました。

一方、Googleは売上高・純利益ともに前年同期と比較すると減収となりました。これは、コロナ禍による広告減が要因と伝えられています。

世界各国の人々が日々、利用する「Google」のサービスと言えども、昨今のコロナ禍にどう立ち向かうか、ということは安定した事業継続の上で大きな障壁となっていることが伺える結果となりました。

新型コロナウイルスに立ち向かう「BATH」の最新事情とは

それでは、「BATH」は昨今のコロナ禍においてどのような取り組みを進めているのでしょうか。
2020年1月以降、中国国内でもコロナ禍によって社会全体に大きな動揺が走りました。
そんな中、「BATH」が国内で大きな影響力を誇るプラットフォーマー、デバイス販売事業者としてどんな「強み」を活かしていっているのかを詳しく見ていきます。

Huawei:「5G技術に基づく病院ネットワーク構築標準」の制定作業を開始

Huaweiは、2008年のリーマンショック以降、中国内陸部の医療空白地帯に新設される病院や診療所向けにICT(情報通信技術)基盤を提供してきた実績を持ち、関連ノウハウを豊富に蓄積しています。

2020年に中国国内で新型コロナウイルスの感染拡大が起こった後も、COVID-19感染症専門病院建設プロジェクトにおいて、5G基地局設置を支援しました。

Huaweiはコロナ禍以前にあたる2019年9月、中国国家衛生健康委員会の指導下で、中国国内の病院、各種医療センター、携帯電話キャリア事業者などと連携しながら、「5G技術に基づく病院ネットワーク構築標準」の制定作業を開始したことを発表していました。

同年11月1日には、中国国内の携帯電話通信事業者各社が5Gサービスを正式に開始し、5G技術をフル装備した「スマートホスピタル」や「スマートヘルスケア」の社会実装が本格化しています。

Huaweiが持つノウハウを、5G技術をフル装備した医療ネットワークに活かし、既に社会実装が本格化しているという点は、日本の通信・ネットワーク技術より一歩先を進んでいると言えるでしょう。

Alibaba:医療物資サプライチェーン支援プラットフォームの立ち上げ、中小企業支援

Alibabaは2020年2月6日、新型コロナウイルス感染症が直撃した中国国内における医療物資サプライチェーンを支援する「Alibaba Global Direct Sourcing Platform」を立ち上げたことを発表しました。

さらに2月10日には、コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた中小企業支援のためにグループ企業のサービスをフル活用して以下のような施策を打ち出しました。

  • プラットフォーム費用の削減または猶予
  • 低利子・無利子ローン
  • 配送要員やロジスティクス効率性改善への助成
  • 柔軟性のある人事採用の構築
  • デジタル化を加速させるツール
  • 遠隔業務管理

これらの施策内容すべてを併せて見ると、単にEC大手プラットフォーム事業者として短期的な危機対応支援施策だけにとどまっていないことが伺えます。

グループ内で蓄積しているフィンテック、HRテック、ロジスティックなどのノウハウまでもフル活用し、中国国内の中小企業を支援。そして、デジタルトランスフォーメーションを加速させる支援にも取り組んでいることが分かります。

Tencent:コロナ禍でゲーム部門増収31%

Tencentは、SNSサービスの他にゲーム事業も行っており、世界最大のゲーム・アプリ会社とも言われています。そのゲーム事業が、コロナ禍で増収31%を記録しました。
その結果、同社創業者のポニー・マー氏の資産総額は、アリババ創業者のジャック・マー氏を上回り、中国1位の富豪のポジションに。

しかしこの先、コロナ禍が収束するとしたらこのゲーム事業の好調は長くは続くないだろうと考え、既に「次の一手」を繰り出しています。収益源の多角化を目指し、オーストラリアのコーヒーチェーンやフィンテック企業に出資をし、決済事業での協業化を目指していると述べています。

Baidu:コロナ禍で広告収入低迷も、自動応答システムの開放で新型コロナウイルス対策支援に乗り出す

検索エンジンで知られるBaiduは、直近で広告収入が同社の収益の大部分を占めています。ところが、コロナ禍で「GAFA」のGoogle同様、減収に陥りました。収益の要である広告収入は低迷するも、一方で、2007年から注力しているAI事業では順調に成長す。しかし、このAI事業が総売上に占める割合は直近の決算発表でわずか9%と、多くはありません。

そのため、Baiduは「次の一手」として「自動応答システム」の開放で新型コロナウイルス対策支援、という施策を打ち出しています。中国全土の防疫機関に対し、この「自動応答システム」を無償で開放。各行政単位での新型コロナウイルスの感染状況の調査および注意の呼びかけなどの作業を自動化できる、というものです。このシステムでは、「電話ロボット」を活用してコロナウィルス拡散時の状況確認を、電話で確認していきます。特に、コロナウィルスの濃厚接触者、コミュニティ住民へ電話を掛ける際に利用され、並行して1秒1500通ものコールが可能とのことです。

参考:
コロナで売上好調の中国テンセント、ゲーム部門が31%増収|Forbes Japan

百度、コロナ禍で広告収入低迷 次の一手は?|36krJapan

バイドゥ 自動応答システムの開放で新型コロナウイルス対策支援|日経クロストレンド

【中国コロナ対策】BATHやAIユニコーンの無償支援サービスまとめ|SB cloud

新型コロナウイルスに立ち向かう中国デジタル大手、今も生きる経済危機の経験|MONOist

「BATH」が力強さを誇るキーポイントとは?

中国IT大手4強「BATH」と、アメリカIT大手4強「GAFA」の事業規模を数字から比較し、さらにはコロナ禍における「BATH」「GAFA」それぞれの動向を見てきました。どこの国の企業であっても言えることですが、自社の強みを改めて突き詰め、このコロナ禍での社会に求められるサービスにアップデートさせ、最新の社会課題解決に繋げ、生存・拡大戦略に取り組んでいくことが重要です。

特に中国「BATH」がコロナ禍に立ち向かう具体的な施策事例からは、そのような姿勢が色濃く読み取れ、プラットフォーマー、あるいはデバイス事業者としてパワフルさを誇っているキーポイントが浮かび上がってきます。今後も引き続き、「BATH」そして「GAFA」をめぐる動向に、世界中の注目が集まっていきそうです。

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