Uberが顧客体験価値を生むために取り組んでいることとは-Kaizen Growth Drive 2015-(UBER JAPAN 社長 高橋 正巳氏)
7月23日(木)、KAIZEN PLATFORM主催のマーケティングイベント「Kaizen Growth Drive 2015」が開催されました。
企業のマーケティング責任者を対象に開催された本イベントでは、企業のマーケティングを促進するためにはどのような組織づくりをすればいいのか、
という部分にフォーカスし、各方面のマーケティングのプロによるセッションが行われました。
今回は、UBER JAPAN株式会社の執行役員社長である高橋 正巳氏によるUberno顧客体験価値の創出方法についてのセッションをお届けします。
※2017年9月27日 本文中に一部誤表記があったため修正いたしました。
登壇者紹介
UBER JAPAN株式会社 執行役員社長 高橋 正巳氏
米国シカゴ大学卒業、ソニーに入社。テレビの新ブランド「ブラビア」を全世界で立ち上げるプロジェクトを牽引。2007 年パリ転勤、フランス国内のテレビ事業プロダクトマネージャーに。2011 年INSEAD でMBA を取得後、サンフランシスコに移り、ベンチャー企業の発掘、買収・投資・売却案件に従事。2014年7 月にUber に入社し、日本法人の執行役員社長に就任。
【インタビュアー】谷口 優氏
株式会社宣伝会議 マーケティング研究室室長 兼 宣伝会議編集主幹
Uberとは?
こんにちは。高橋と申します。
まずは簡単にUBERの説明をさせていただきます。
Uberの誕生秘話からお話しします。
創業者の2名が、ある時パリに行って、お茶を飲んで帰ろうとしたら全然タクシーが捕まらない。ポケットにはスマホが入っている。
このITの時代にモバイルの時代に、クラウドの時代に、なぜこんなに非効率なことが起きてるんだというところに着目して、サンフランシスコに戻って作ったのがUBERです。
最初は100人限定で使えるように作ったら、実際に使った方々が評価してくれて、口コミで広がっていきました。
Uberのコンセプトは「皆様のプライベートドライバー(Everyone's private driver)」です。
自分のお抱えの運転手がいるように、簡単に車を呼べて、目的地まで送り届けてくれるというものを目指しています。
Uber使い方は非常にシンプルで、開くと地図が表示されて、一番近くにいる車が迎えにくるので、何分かかるか表示されます。
一番近くにいるドライバーとマッチングが図られます。
ドライバーの名前や顔写真、評価、車種などがアプリ上に表示されて、ドライバー側にもお客様の情報が表示されます。
行き先もアプリ内で入力すると、ドライバーに送信されます。
目的地に到着したら、登録済みのクレジットカードで自動的に支払いが行われます。
最後にドライバーに対する評価をします。もう一回乗るには評価をしなければいけない仕組みになっています。
低い評価をつけた場合は、その理由を記載していただくようにしています。
この評価は高品質を維持するうえで非常に重要な制度になっています。
他にもドライバーに直接連絡が取れるようにしています。
例えば、ピンの位置を少し間違えたりとか、ちょっと待っててほしいとか言うときに便利です。
他ユーザーに予定到着時刻をお知らせできるようにしています。
領収書はEメールで届きます。大体、ドアを閉めた段階で飛んできます。
仮に、遠回りされた気がするという問い合わせがあった時、全ての記録が残っているので、
その時は走行記録を調べて、正規金額と差があるときは差額を返金します。
UBERの使い方は非常に簡単で、
・配車
・乗車
・評価
の3ステップのみです。
支払いも登録済みのクレジットで済ませられます。
最後にお客様に行っていただく「評価」が、品質を維持する上で重要な要素になってます。
あとはドライバーさんに直接連絡できたり、予定到着時刻をお知らせすることもできます。
領収書はE-mailで飛んできます。
顧客体験としては世界どこに行っても、設定1つ変えずに使えるんですよね。
FacebookやLINEも世界中どこでも使えますけど、O2O領域、バーチャルとリアルを組み合わせるようなサービスはなかなか無いですよね。
なぜここまでの勢いで展開できたかというと、お客様の利便性や安心、安全性を追求しただけでなく、運転手のハッピーも追求したからです。
データドリブンによって効率的な配車が可能になる。
お客様の利便性が高くなるだけでなく、ドライバーの収入もどんどんあがる。
そうすると周りにその情報が広まって、応募してくる人が増える。
配車が増えると顧客の満足度は上がる顧客にもドライバーにもメリットが大きく
良い循環が生まれます。
ここまで移動だったり、車の話をしてきたんですが、Uberの本質は、*「需給の超効率的なマッチングをしている」*ところです。
入社のきっかけはUberの顧客体験に感動したこと
谷口氏:
ご自身の入社のきっかけがUberの顧客体験が素晴らしくて感動したからと。
高橋氏:
僕が初めてUberを使ったのが2012年なのですが、サンフランシスコの音楽フェスに行った帰りにすごく人が多くて、タクシーが全く捕まらなかったんです。
そこで友達がこんなサービスがあると、ささっとアプリを操作すると数分後に黒塗りの車が来て。
その後自分でも使ってみようと思って使ってみたら、その配車から降りるまでの体験が非常に衝撃的で、全ての動作がシームレスでした。
どうやって「パーフェクトトリップ」を実現するかということを意識していいます。
需要は非常にシンプルで、目的地まで、快適に、安全に、できれば安く移動したいというのはほとんどの方のニーズなので、
それを如何にストレスフリーに行うのかというところを考えています。
谷口氏:
その実現のためにデータを活用しているという。
高橋氏:
そうですね。
パーフェクトトリップをいろんな要素があるので、そこをブレイクダウンして、
色んなところにKPIを設定して、常に改良してデータを活かして行っています。
顧客が本当に求めているものは何かを見極める
谷口氏:
シェアとかシェアリングエコノミーって抽象的でわかりづらいですが、どのように捉えれば良いでしょう?
高橋氏:
概念としてはシンプルで、部屋や車など余っているものを必要としている人とマッチングすることです。
そこで重要なのがコミュニティです。
普通、見知らぬ人から家に泊まらないかとか、車に乗って行かないと言われても抵抗あるけど、
プラットフォームを介することによって安心して利用できるようになる。
人々のニーズもどんどんシフトしていて、20世紀型の大量生産・大量消費から、実際のニーズを満たす方向にいっているなと。
シェアリングエコノミーのレポートにあった「私はドリルが欲しいんじゃない。私は壁に穴が欲しいんだ」という言葉が印象的だったんですが、
モノを買うというんじゃなくて、安全に移動したいとか、穴を開けたいとか、そういうことを安全に実現するのがシェアリングエコノミーかなと。
谷口氏:
企業からしたらドリルの精度を上げる方に行きがちですけど、ドリルの穴=顧客体験を追求するべきなんですね。
高橋氏:
そうですね。例えば、10ドル払って、その場で穴を開けてくれるようなサービスが主流になるかなと思います。
顧客体験を高めるための組織づくり
谷口氏:
組織づくりで意識していることは?
高橋氏:
意識しているのは、個人がオーナーシップを持ってやるということですね。
まずやらなければいけないことは、
・問題がどこにあるのかをデータを使って発見する。
・それを解決できるようなアイデアを出す。
・それを実行に移す。
この3つをしっかり行うことを意識しています。
それぞれのメンバーにオーナーシップをもって動いてもらいます。
うちではメンバーに短いプレゼンをさせてます。
そこに対して色んなツッコミをいれられるところで、普段は考えないようなところを深堀りしていく。
谷口氏:
消費者のオンラインにおける満足できるレベルが高まっていますよね。
既存のビジネスをやられている企業はどのようにテクノロジーを取り入れていけばいいのでしょうか。
高橋氏:
ちゃんとデータを取れるような仕組みにするのは重要ですね。
全てのタッチポイントのデータを記録しておけるような体制に。
顧客満足度でいうと、フィードバックシステムは非常に有益です。
それをどこかの段階でしっかりお客様に触れるように。
しかも極力シンプルなものを組み込むようにしましょう。
谷口氏:
データは多岐に渡ると思うんですが、データ解析する担当者がいるということでしょうか?
高橋氏:
全員ですね。全員データは毎日見ています。特にマーケティング担当は。
私が唯一怒るのは、自分の担当領域のデータを把握していなかったときですね。
未達だったことはそこまで重要ではなくて、その理由をデータとして把握して、それをベースに次どうするのかというところを意識していますね。
谷口氏:
UBERの方にお話を伺うと、皆さん社会を良くするという志を持っているということを感じます。ただお客様のためだけではない、そのようなビジョンをグローバルで共有しているんでしょうか?
高橋氏:
交通って根本的なインフラですが、何十年も変わっていなかった業界に変革をおこしていることにやりがいを感じていますし、
評価システムによるフィードバックを通じて、実際に人々の生活を変えていると実感できています。
海外では当たり前になりつつあるシェアリングエコノミーやオンデマンドサービスが日本で普及してほしいですし、日本発のサービスも出て欲しいですね。
まずは知る、知って使うきっかけづくりをできればと思っています。
まとめ
これまでほとんど変わらなかった交通インフラの仕組みを根底から覆そうとするUber。
ユーザー視点を考慮するだけでなく、従業員であるドライバーにとっても、会社にとってもメリットの出る好循環を生み出し、まさしく「三方良し」を実現したことが、短期間でここまで急成長できた秘訣だと高橋氏は述べられています。
その好循環を生み出すために、メンバー全員にオーナーシップを持つように意識させ、さらにメンバー全員が徹底したデータドリブンを行うことで、顧客の体験価値を向上し、感動するようなサービスを提供するという流れは、今後O2Oビジネスに取り組む企業のロールモデルになるのではないでしょうか。
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