ソフトウェア業界で誕生したカスタマーサクセス

そもそもカスタマーサクセスという理念は、ソフトウェア業界で生まれました。
それでは、いかにして「モノの買い切りモデル」から「コトの体験モデル」への変化が起こり、カスタマーサクセスという理念が生まれるに至ったのでしょうか。

①SaaSの流行

きっかけは、SasSの流行でした。SaaSとは、ソフトウェアをインターネット経由でサービスとして利用できる提供方法のことです。これまでソフトウェアは利用者側に導入していましたが、クラウドの登場により提供者側で稼働させて、利用者がインターネット経由でサービスとして利用することができるようになりました。

SaaSは、

  • 購入時の大きな出費を逃れられる、毎月平準化した支払いになる
  • 買った後もずっとプロダクトの価値が最新・最適化され続ける
  • 定期契約でその期間は制限なく利用できる
  • 不必要だと思えばいつでも辞められる

といった理由から、利用者にとって非常にメリットの大きい提供方法でした。
そのため、SaaSは瞬く間にソフトウェア業界における有力なサービス提供方法となりました。

②サブスクリプションにより顧客に主導権が移行

多くのSaaSが、その相性の良さからサブスクリプションという支払い方法を取るようになりました。

サブスクリプションとは、サービスの利用期間に応じて支払いが発生するビジネスモデルのことです。サブスクリプションビジネスでは、最初の販売でコストを回収することはできません。顧客に継続的に利用してもらうことで、初めてコストを回収し利益を上げることができます。「ワンタイムバリュー」よりも「ライフタイムバリュー」が大切なのです。

しかし、顧客に選ばれ続けるハードルはどんどん上がっています。その要因は主に以下の二つです。

一つ目は、顧客の手元に多くの情報が集まるようになったことです。インターネットデバイスの普及により、消費者はこれまでにないほどの情報を手に入れることができるようになりました。もはや企業は、情報を自分自身でコントロールすることはできません。消費者は、数ある選択肢をフラットに比較し、最適な手段を選ぶことができるのです。

二つ目は、SaaSの解約のしやすさです。SaaSでは、顧客は自分自身のソフトウェアを持ちません。ハードウェアも買う必要がありませんし、データセンターの設定や運営をする必要もありません。単に提供者から全てが含まれたパッケージをリースするだけで良いのです。つまり、顧客はやめたいと思ったらいつでも解約することができます。

③カスタマーサクセスが必須になる

こうして顧客は、自身の成果につながらないプロダクトから迷うことなく離れていくようになりました。「顧客の成功」を実現することでしか生き残れない、シンプルにしてシビアな世界になったのです。

企業が顧客を惹きつけ繋ぎ止めるためには、「顧客の成功」を実現するしかありません。SaaSの流行によって、顧客の成功が自社の成功につながるようになり、カスタマーサクセスという理念が生まれたのです。

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最後に

前編では、1.そもそもカスタマーサクセスとは何か、という点と、2.「モノの買い切りモデル」3.「コトの体験モデル」というビジネスモデルの概要を説明しました。

「モノの買い切りモデル」から「コトの体験モデル」へとビジネスの潮流が変化したことでカスタマーサクセスという理念が誕生したのですが、その最たる例がソフトウェア業界です。そして、この変化がソフトウェア業界を超えて及んでいるというのは、「モノ売りモデル」の代表格である機械産業の最大手、GEの事例を見ていただければお分かりいただけると思います。

後編では、「モノの買い切りモデル」から「コトの体験モデル」へというビジネスの潮流の変化が、あらゆる業界に及ぶ理由と、「コトの体験モデル」とカスタマーサクセスの結びつきについて解説したいと思います。

コミューン株式会社 金谷颯太郎