5月11日から13日の3日間に渡り、東京ビッグサイトにてリードエグジビジョン主催の「Japan IT Week春2016」が開催されました。

10回目の開催となる本イベントは、Webマーケティング、セキュリティ、ソフトウェア、IoTなど、最新のITテクノロジーを提供する企業がブース出展しており、並行して各分野のプロによる講演も開催されています。

今回は、オープンエイト執行役員三上氏による「動画広告の今後」をテーマとした特別講演の様子をお届けします。

登壇者プロフィール

(株)オープンエイト執行役員 三上 真央氏

早稲田大学政治経済学部卒業。新卒で博報堂DYメディアパートナーズに入社後、テレビスポットの媒体営業を担当。その後、エンタテイメント部門に異動し、「Beast」「KARA」「イ・ビョンホン」などの韓流コンテンツのプロデュース及び、中国ドラマの投資案件などに従事。その後、マーケティングコンサル事業を展開する会社の創業メンバーとして活躍。2015年10月より(株)オープンエイトに執行役員として参画。現在は、主軸である動画広告事業を発展させるべく営業部門を統括している。

インターネットメディア収益化の鍵を握るのは「スマホ動画広告」

インターネットメディアの主な収益モデルは*「EC」「課金」「広告」*の3つです。
その中でも多くのメディアが収益の大部分を広告収入に頼っています。
しかし、広告取引が自動化したことで広告単価は下落し続けています。

昨年インターネット広告市場は初めて1兆円を超えており、テレビ広告に近づいてきています。

参考
2015年 日本の広告費 - ニュースリリース一覧 - ニュース - 電通

しかし、インターネット広告は質ではなく定量的な側面でのみ評価されてしまっているのが現状です。
どのメディアも、量(トラフィック数)が同じであれば同じ価値というわけです。

さらに、スマートデバイスの登場により市場は大きく変化しています。
スマートフォンの普及により、トラフィックはほぼスマートフォンに移行していますが、全体の売上構成比で見ると依然としてPCが圧倒しています。

これからのメディアの課題は、スマホの収益を最大化させることです。
スマホ収益の要となり得るのが、動画広告です。
オンライン動画広告市場の場合、昨年の段階でPC、スマホが半々の割合を占めており、今年以降はスマホの割合がPCを上回ると予測されています。

参考
サイバーエージェント、国内動画広告の市場調査を実施 | 株式会社サイバーエージェント

スマホ普及によって生じた広告主の新たな課題

メディア側の現状と課題についてお話ししてきましたが、広告主側にも新たな課題が生じています。
2015年の段階で、2,30代女性のスマホ普及率は92%(想定)を超えています。
メディア別接触時間においても、スマホ・タブレットの接触時間が全体の4分の1を超えており、テレビ(39.9%)に次いで高い割合となっています。

参考
メディア環境研究所「メディア定点調査2015」時系列分析|ニュースリリース|博報堂DYメディアパートナーズ

ユーザーのメディア接触の多様化により、広告主側の課題も出てきています。

【広告主が抱える課題】
・viewavility
・ad fraud
・ターゲティング
・リーチ

viewavilityとは、広告インプレッションのうち、実際にユーザーが見られる状態にあったインプレッションの比率を指します。
56%のインプレッションは見られていないというデータもあります。ですので、広告を出してもユーザーに届いていない可能性があります。

ad fraudは広告詐欺のことです。クリックを水増しする業者もいるので注意が必要です。
スマホの場合、ターゲティングも難しい部分があります。

safariはユーザーデータを取得できるcookieをデフォルトでブロックしているため、ターゲティングができません。
リーチに関しては後ほど詳しく解説します。

これらの課題を解決するためには、広告効果が高く、なおかつ価値あるサービスが必要です。これらの課題を解決するためにも、動画広告が有効です。

動画広告のKPI設計のポイントは3つ

では、実際に動画広告を実施する際、どのようなKPIを設計すればいいのでしょうか。
ポイントは3つです。

1.視聴率・完全視聴単価

ブランドセーフティを前提に、どれだけ動画が見られたかという軸で判断しましょう。

どの面、どのコンテンツに流れているのかも重要なポイントです。
能動的にアクセスしているユーザーのインサイトとしっかりマッチしているか。
インサイトとマッチしているからこそ、ユーザーとのエンゲージメントが高くなり、視聴率もそれに伴って高くなっていきます。
そこの完全視聴単価がコミュニケーションプランにマッチして設計する必要があると思います。
動画は尺が短い方が再生回数は多い傾向にあありますが、最近では長尺での引き合いも増えてきており、今後更なる検証が必要になってきます。

2.ターゲットリーチ

例えば、女性をターゲットにすると、全人口の半分に絞られます。
その中でさらに、20代で東京に住んでいて、就職している人となると、さらにパイは小さくなっていきます。

ターゲットを細かくセグメントしていくと、当然パイは小さくなっていきます。
これではターゲットリーチ曲線は描きづらくなってしまいます。

デジタルマーケティングで刈り取りを行うとするとき、セグメントは重要です。
重要ですが、動画広告においては必ずしもそうではありません。

私は、広告の本質は*「広く告げること」*だと考えています。

3.ブランドリフト(態度変容)

動画広告の接触者・非接触者で、態度変容にどれだけの変化が出たのかも把握しましょう。
動画広告により、ターゲットの認知がどれだけ変化したのかを追うために、Webアンケートなどの事後調査を行う必要があります。

テレビ、トレインチャンネル、スマートフォンなど、複数のメディアで同じ動画広告素材を使った場合は、それらのメディアをクロス集計し、どのメディアがどれだけブランドリフトに寄与したのか認知経路別や、重複接触での調査もするべきです。

つまり、動画広告の効果を測定する際に重視するのは「広告は見られたのか」「ターゲットにリーチしたのか」「ユーザーの心を動かしたか」の3つです。

まとめ

成長著しいインターネット広告の中でもスマホ動画広告市場の期待は高く、eMarketerの調査によるとマーケティング担当者の半数近くが、高い成長を遂げる広告手法として動画広告を挙げています。

参考
動画広告市場の盛り上がり | video-ad.net

通信インフラが整備され、通信速度が飛躍的に向上した結果、スマホでもスムーズに動画を閲覧できるようになりました。
テキストや画像よりも一度に受け取る情報量が多い動画は、ユーザーとの新たなコミュニケーション手段として定着しつつあります。

大企業が活用しているイメージの強い動画広告ですが、今後インターネット上でのプロモーションを行うのであれば避けて通れない分野であり、普及するにつれて導入ハードルも低くなるでしょう。

インターネット広告の運用に課題を感じている方は、動画広告の導入を検討してみてもいいかもしれません。