インターネットを通じて商品やサービスを提供するWebサービスは、ユーザーも企業側もお互いが直接向かい合わせることはほぼできません。
実店舗のようにお客様と対面し、直接話をしながら接客できない分、お客様の心理をできるだけ想像し、その心理に沿ったホームページ作りを行う必要があります。

今回は、ユーザー心理を理解するうえで役に立つ心理学用語を36語を解説付きで紹介します。

第一印象が肝心

1.アンカリング効果

人は一番最初に見た数字やデータをよく記憶しており、何かしらの意思決定を行う際、最初に見たデータを重要視する傾向にあります。これを「アンカリング効果」といいます。
アンカリング効果を応用し、ユーザーに対し「この商品はお得だ」「良い買い物ができた」と思わせるようにするための仕掛けを作ることもできます。(「数量限定」「期間限定」というふうにプレミア感をアピールする等)

2.ハロー効果

ある1つの目立つ特徴を最初に認識すると、その他の構成要素まで一番目立つ特徴に引っ張られて歪んで認識してしまうことを「ハロー効果(または認知バイアス)」といいます。
例えば異性を見るとき、容姿がさわやかな雰囲気であれば中身までもがさわやかで良い人だと思うのも「ハロー効果」です。
ホームページ上でも、ファーストビューでサービスの良い面を伝えられれば、サービスに対する印象を良い方へ良い方へと寄せることができます。

3.確証バイアス

対象を自分の先入観に基づいて判断し、新たに入ってくる情報も、無意識のうちに自分の先入観を正しいものにする情報だけを拾って、先入観は間違っていなかったとする人間の性質を「確証バイアス」といいます。
例えば、「アメリカ人は思ったことははっきり言う」という先入観を持った状態で1人のアメリカ人と対面するとします。そのアメリカ人がとても内向的な性格でも、「内向的」という情報は受け取らず、僅かな言動でも「思ったことをはっきり言う」という情報に変換してしまう状態は「確証バイアス」があるからです。
先入観は一度植え付けられるとそこから大きくイメージを変更するのは困難です。ユーザーとのファーストコンタクトは慎重に行うようにしましょう。

4.初頭効果

一番最初に受けた印象はなかなか変わらず、また一番記憶に残ります。これを「初頭効果」といいます。下記の「親近効果」とセットで語られる場合が多いです。

5.親近効果

初頭効果とは逆に、一番最後に見聞きしたものが一番印象に残りやすいことを「親近効果」と呼びます。「終わりよければ全てよし」という言葉があるように、最後に強烈に良い印象が残れば、それまでの過程がどうであったとしても大概好意的に見られます。

自分が思っている以上に周囲に影響されながら暮らしている?

6.バンドワゴン効果

「これが流行っている」と聞くと、人はその流行している物事を好意的に捉える傾向にあります。これを「バンドワゴン効果」といいます。
ホームページ上で「大流行」「大人気」という言葉を含むキャッチコピーを付けられた商品やサービスは不思議とよいものに見えてしまうことです。

7.同調現象

周囲の人間と同じ行動をしていると安心し、逆に自分1人だけが違う行動をしていると不安を覚えることを「同調現象」といいます。
ホームページ上で、例えば「30代男性の8割が使用」「◯◯地区の主婦は皆使っている」というように、商品のマジョリティ性がある場合はそこを最大限アピールすると効果的でしょう。

8.社会的証明の原理

他人の行動に自身の行動もつられてしまう性質を「社会的証明の原理」といいます。
Facebook広告にある「あなたの友達の◯◯が、このページにイイね!しています」というような広告は、社会的証明の原理を利用したものでしょう。

ユーザーへ繰り返しアプローチすることの有効性

9.単純接触効果(≒ザイオンス効果)

何かしらで接触する機会が増えると、その接触した相手に対して好意を持ちやすくなることを「単純接触効果」といいます。
Webマーケティングの場合、リターゲティング広告を利用して自社サービスを繰り返しユーザーの目に触れるようにすることで接触回数を増やし、好意を高める施策に当てはまります。似たような意味を持つ言葉に「ザイオンス効果」があります。

10.気分一致効果

その時の気分によって、取り入れる情報の種類が変わることを「気分一致効果」といいます。みなさんも、良い気分の時はポジティブな情報を、悪い気分の時はネガティブな情報が目につくという経験はあるのではないでしょうか。同じ情報でも、ユーザーの状態によって見え方が違うので、リタ―ゲティング広告等で、1人のユーザーに対して定期的にアプローチを続け、ユーザーの気分と自社サービスが一致するタイミングを窺うのもよいでしょう。

11.ウィンザー効果

一次ソースから得た情報よりも、第3者を介して伝えられた情報の方が影響力が大きくなる傾向にあることを「ウィンザー効果」といいます。
インターネット上は間接的に伝わる情報が氾濫していますが、その中でもネット上の口コミに関しては、信憑性に欠ける面もありつつもその影響力は絶大です。

特別感を演出する

12.バーナム効果

よく占いで利用される手法ですが、誰にでも当てはまるような曖昧な内容の表現でも、「あなたは◯◯な人ですね」と指摘されることで、本人は自分のことを正確に言い当てられた、と思ってしまうことを「バーナム効果」といいます。
ホームページ上でも、ターゲットユーザーに対して「自分のことをわかっている」と感じてもらうことができればコンバージョンの確率が高くなります。

13.スノッブ効果(≒希少性の法則)

入手困難なものほど需要が増大し、気軽に手に入れるものほど需要が薄れていくことを「スノッブ効果」といいます。
わざと品薄にして入手困難な印象をアピールすることで、常に一定の需要を喚起するというのはよく使われるテクニックです。同じような性質を指す言葉に「希少性の法則」があります。

14.カクテルパーティ効果

カクテルパーティーなどで、様々な雑音や会話が入り交じる中で、不意に自分の名前を呼ばれたり、興味・関心の向く話題が上がるとそこだけ際立って聞こえてくることを「カクテルパーティー効果」といいます。
人は無意識のうちに自分に関係のある話題・無い話題を選別し、関係のある話題だけをキャッチする傾向にあります。
ユーザーへのアプローチも、「あなたに向かってアピールしてますよ!」というイメージを強く打ち出す(メルマガにユーザーの名前を入れる等)ことで、ユーザーの関心は引きやすくなるでしょう。

15.ヴェブレン効果

ブランド物のように、高価格でそれ自体が価値を持つ商品を手に入れることで顕示的消費欲を満たすことを「ヴェブレン効果」といいます。
ルイ・ヴィトンやシャネルなどの数十万もするバッグがよく売れるのは、バッグそのものの品質も勿論ですが、そのブランドのアイテムを手に入れたことに対する満足感が高いから、というのも大きな要因です。高価格帯のものを売りたい場合は、ヴェブレン効果を意識すると良いでしょう。

選択の余地を提供しつつこちらでコントロールするには

16.保有効果

人は手に入れたモノに対し、入手する前よりも価値を感じる傾向にあります。これを「保有効果」といいます。
更に、一度手にしたものに対して愛着心や執着心のようなものが湧くのか、再び自分の手から離れることを嫌います。
この心理を活用しているのが「返金保証制度」です。「気にいらなかった場合、◯日以内であれば返品可能」と打ち出すことにより、購入のハードルを限りなく下げることができます。実際購入した後は、保有効果により人は自ら積極的に手放そうとはしません。
ほとんどの「返金保証制度」は実際の返金率が低くなることを見込んで設置されています。

17.損失回避の法則

人は利益を獲得することよりも、損失を出さない方を重要視します。これを「損失回避の法則」といいます。これは保有効果と密接に関係しています。
これをホームページ上で応用するのであれば、

この化粧水を使わなければ歳相応に老けていく
この育毛剤を使わなければ頭髪は薄くなっていく一方

というように、自社サービスを利用しないと損をしてしまうイメージを沸かせると良いでしょう。

18.マッチングリスク意識

商品やサービスを購入する前、ユーザーは「効果が出なかったら…」と不安を持ちます。これを「マッチングリスク意識」といいます。
このような不安を解消するには、お客様の声や口コミコーナーを設置する等の手段が有ります。上記「保有効果」で紹介したような返金保証制度も、不安解消の手段になり得るでしょう。

19.決定回避の法則

人は、選択肢が増えるとその中から選択・決定することが困難になります。これを「決定回避の法則」といいます。
ホームページ上でユーザーに対しあまり多くの選択肢を与えることは、リスクに繋がる場合もあります。
商品点数が多い場合は、商品ごとに「このような方にオススメ」というようにターゲットを絞った紹介をしましょう。また、診断コンテンツを設置し「◯◯タイプのあなたにはこの商品がオススメ」というように選択の余地を限りなく無くしてしまうのも1つの手です。

20.現状維持の法則

「選択肢が広がりすぎた場合、普段と変わらない選択をしてしまう法則を「現状維持の法則」といいます。決定回避の法則とセットで語られることが多いです。
ホームページで新規ユーザーにサービスを訴求する場合、この現状維持の法則をどう破るかが重要になってきます。上記で書いたような施策に加え、「自社サービスを選択する理由」も十分にアピールしましょう。

21.松竹梅の法則

人は複数の選択肢を与えられた時、一番無難な答えを選ぶ傾向があります。これを「松竹梅の法則」といいます。
例えば、コーヒーショップでドリンクを頼むとき、サイズがS・M・Lと合った場合、とりあえずMサイズを選択する方は多いのではないでしょうか。このような習性を利用し、ホームページ上で一番売りたい商品を一番無難なように見せるのも有効な手段でしょう。

22.テンション・リダクション効果

何か大きな決断をしたり、困難な目標を達成した直後、緊張が緩んだ状態になることを「テンション・リダクション効果」といいます。このテンション・リダクション状態にある時は、販売側にとってはチャンスとなるタイミングでもあります。例えば、数百万円の車を購入した直後に、オプションサービスとして2,3万円程度のサービスを勧められると、緊張が緩み、判断力が少し低下した状態であれば、「数百万円に比べれば2,3万円なら良いか」という感覚が先行して購入してしまうことがあります。
そのような大きな買い物でなくても、飲食店で料理を頼んだ際「セット価格で100円で飲み物がつきますがいかがですか?」と聞かれてついついドリンクも付けてしまったという方は少なくないでしょう。
ホームページにおいても、商品を購入直後に、付随してその商品より安い商品をオススメしてみると良いかもしれません。

表現を工夫するだけで大きな効果が得られる可能性あり

23.カリギュラ効果

禁止されると、人はかえって禁止された行為をしたくなってしまいます。これを「カリギュラ効果」といいます。童話でも、「鶴の恩返し」や「浦島太郎」でこのような人の性質が描かれています。
キャッチコピー等に応用する場合は

「本が大好きな方以外はこの本を買わないでください」
「本気で痩せたいと考えていない方はこの先のページは見ないでください」

と言ったような見せ方があります。

24.フレーミング効果(≒リフレーミング)

見方や基準を変えることで、同じ物事でも全く違う印象を持ってしまうことを「フレーミング効果」といいます。
以下の文章は同じ現象を表していますが、受ける印象は正反対になるのではないでしょうか。

・大腸がんを患った患者の3割は死亡します
・大腸がんを患っても7割は生存します

少し表現を変えるだけで、受ける印象はマイナスにもプラスにも転換させることができます。自社サービスも、普段と少し違った見方をすれば新たな切り口が見えてくるかもしれません。

25.文脈効果

隣り合う情報の意味がお互いに影響しあい、意味が形成されることを「文脈効果」といいます。
例えば、ホームページで基礎化粧品を販売する際、ターゲットが女性であれば、ピンクやオレンジなどを基調とした柔らかく女性的な印象のホームページデザインに仕上げるのが一般的ですが、男性向けの場合は黒やグレーなどシャープなデザインにする場合が多いでしょう。このように、同じ基礎化粧品でも、周囲の情報を変えると、途端にその商品が誰向けなのか、どのような価値をもっているのかで変わってきます。

26.ストループ効果

異なる情報を同時に受け取った場合、その情報を処理するまでに時間がかかることを「ストループ効果」といいます。例えば、赤色で「黄色」という文字を目の前にして「その文字は何色?」と問われると、一瞬、赤なのか黄色なのか判断に迷ってしまいます。
そのような人の特性を把握したうえで、ホームページ上でどうしても強調したい部分が合った時は、ストループ効果を使って視線を留めるようなデザインにするのも良いでしょう。

27.シャルパンティエ効果

大きさや重さの単位を変換することで錯覚が起こることを「シャンパンティエ効果」といいます。例えば、10kgの鉄と10kgの羽毛布団を比べた時、重さは同じなのに羽毛布団の方が軽そうだと感じてしまいます。シャルパンティエ効果はキャッチコピーによく使われる手法で、「ビタミンC1g」より「ビタミンC1,000mg」と表記されていた方が大量のビタミンCが入っているような印象を受けます。
少し表記を変えるだけでユーザーに与えるインパクトは大きく変わります。

複雑なユーザー心理

28.ディドロ効果

自分が理想と考えるモノが手に入り、その他の身の回りのものがそれと適合しなかったとき、新しく手に入れたモノに合わせてその周囲のものまで変えていくことを「ディドロ効果」といいます。
例えば、自分の好みの花瓶を購入し、部屋に飾った時、部屋の雰囲気がその花瓶にそぐわなければ、人はその花瓶に合わせた部屋作りを始めます。

29.ブーメラン効果

相手に対して説得しようと試みた際、全く逆の方向に相手の気持ちを動かしてしまうことを「ブーメラン効果」といいます。自分の意図したものと反対の結果に陥ってしまう現象は避けるべきです。ホームページ上でどのような訴求をしているか、良かれと思って書いていることもユーザーの感情を逆撫でする要素になっていないか確認してみましょう。

30.ツァイガルニク効果

既に完了した物事よりも、未完了のものの方を記憶に留めやすいことを「ツァイガルニク効果」といいます。CMなどで一時期多用されていた「続きはWebで」はわざと情報を分断し、ユーザーの「続きを知りたい」という感情の喚起を促しています。
例えばホームページ上でも、連載ものの企画を用意し、常に「未完了」のコンテンツがあるという印象を根付かせることができると、ユーザーの興味をひきやすくなります。

31.権威への服従原理

人は権威のある者の言動には無意識に従ってしまいます。これを「権威への服従原理」といいます。専門家として紹介された人物のアドバイスであれば、ほとんどの人は無条件にその内容を信頼し、受け入れます。例えば基礎化粧品を販売する際も、「皮膚科医が開発に協力」したとアピールできれば、一般的な基礎化粧品よりも印象は良くなるでしょう。

32.一貫性の原理

一度決めたことは無意識のうちにやり通そうとする人の性質を「一貫性の原理」といいます。「決めたこと」というと大げさな感じもしますが、つまりは自分で「やりたい」と思ったことをやろうとする性質のことです。例えば、ダイエット食品のランディングページの場合

「夏までに痩せたいですか?」(→痩せたい)
「堂々と水着を着られるカラダになりたいですか?」(→なりたい)

という風に、このページを見ているであろうユーザーの欲求を刺激し、少しずつイエスを取ったうえで

「この商品を使えば理想の身体が手に入ります」

と訴求することで、ユーザーは痩せたいという欲求を満たす為にその商品を購入する、という流れが起きやすくなります。

33.返報性の原理

人は無償で施しを受けた時、何かしらのお返しをしなければいけないという心理が働きます。これを「返報性の原理」といいます。
この原理を応用したものだと試食販売がポピュラーでしょう。インターネットの場合、ホームページに訪れたユーザーに向けて無料プレゼントや無料相談を実施し、その後の購買につなげるという手法もあります。

34.認知的不協和

自身の中で、矛盾する2つの感情を抱え、不快感を感じることを「認知的不協和」といいます。例えば「タバコは吸いたい。肺に悪いことはわかっている」という状態は「認知的不協和」といえます。
多くの人が潜在的に抱えているであろう認知的不協和に対して、解決策を提示できるようなサービスであれば、悩みを抱えている人は強い関心を示すはずです。
「痩せたいけどついつい食べ過ぎてしまう」という悩みを抱えている人に対し、その認知的不協和が起きている状態を解消するためのサービスはこちらです、という訴求ができればコンバージョンに至る可能性が高いでしょう。

コンテンツ作成時の参考に

35.ベビーフェイス効果

「丸顔」「大きな瞳」「広いおでこ」など、幼児のような顔立ちを持つ人は、内面まで幼児のように純真無垢なんだろうという印象を抱かせることを「ベビーフェイス効果」といいます。ホームページの印象を柔らかいものにしたい場合は、TOP画像や記事内画像に意識的にベビーフェイスの人物画像を使うと柔らかいイメージが強調されます。

36.フォールス・コンセンサス

人は「ほとんどの人は自分と同じ考えに違いない、自分の感覚は一般的だ」と思い込む傾向にあります。これを「フォールス・コンセンサス」といいます。
ホームページを構築するときやコンテンツを作成する時、つい自分の感覚がユーザーの感覚と同じだと思ってしまいがちですが、完全に同じだということはありません。自分にとっての常識がターゲットユーザーにとっても本当に常識なのかを常に疑うことを心がけましょう。

まとめ

マーケティングはユーザーの心理を理解する所が出発点となります。
長い年月をかけて体系化された心理学は応用性が非常に高く、ご自身が納得できればすぐにホームページに応用できるでしょう。

ホームページに心理学の要素を取り入れていないというWeb担当者様は、是非この機会に覚えてみましょう。
1つだけでも覚えておくと成果改善に役立ちます。