今、BtoBBtoCに関わらずリアルイベントの価値が見直されています。

同じプロダクトを利用するユーザー同士が集まる場をつくることで、コミュニティが生まれるだけでなく商品や企業へのエンゲージメントの向上も期待できます。

ただ、リアルイベントを開催するには会場をおさえたり来場者を募集したりとユーザーが主体となって企画・運営されるのであれば、企業にとってこれほど良いこともないでしょう。

今回は、ユーザー主体で運用される「自走するイベントが機能するメリットと実際どのように構築していけばいいのか」をテーマにした、AWS小島氏、サイボウズ伊佐氏、ソラコム片山氏、アジャイルネットワーク徳力氏の4名によるトークセッションの様子をお届けします。

登壇者紹介

小島 英揮氏

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アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 マーケティング本部 本部長

明治大学卒業後、電子フォーム/XML関連ソフトでのマーケティング責任者や、アドビシステムズでのPDF、RIAのエンタープライズ、デベロッパーマーケティングなど、一貫してITのマーケティング職を経験。アドビシステムズ在籍時にはFxUG(Flex User Group)、AWSではJAWS-UG(Japan AWS User Group)という全国規模のデベロッパーコミュティの立ち上げ&運用経験をもつ。2009年12月より現職となり、AWSクラウドの日本におけるマーケティングを統括。(http://backstage.tours/speakers/hideki-ojima/)

伊佐 政隆氏

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サイボウズ株式会社 kintone プロダクトマネージャー

004年サイボウズ入社。マーケティング、営業部門を経て、2011年より製品マーケティングを統括するプロダクトマネージャーに就任。2014年よりkintoneを担当し、広告宣伝活動のほかユーザーやエンジニアのコミュニティ形成に注力。実家は中華料理店。(http://backstage.tours/speakers/masataka-isa/)

片山 暁雄氏

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株式会社ソラコム プリンシパルソフトウェアエンジニア

株式会社ソラコムにて、ソフトウェアエンジニアとしてソラコムの提供するIoTプラットフォームの設計構築を担当。金融機関向けのシステム開発とAWS(アマゾン ウェブ サービス)を使用した資産管理事業を業務として行うかたわら、オープンソースのJavaフレームワークプロジェクトや、AWSの日本のユーザーグループ(JAWS-UG)の立ち上げに関わり、2011年にアマゾンデータサービスジャパンに入社。日本でのクラウド普及をミッションとし、AWSソリューションアーキテクトとしてAWS利用のアーキテクチャ設計サポートや技術支援、イベントやセミナーでの講演を行う。(http://backstage.tours/speakers/akio-katayama/)


徳力 基彦氏(モデレーター)

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アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 取締役CMO

NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。
ブログ以外にも日経MJや宣伝会議advertimesのコラム連載等、複数の執筆・講演活動を行っており、著書に「デジタル・ワークスタイル」、「アルファブロガー」等がある。(http://backstage.tours/speakers/motohiko-tokuriki/)

コミュニティは新たな顧客を呼んでくれる

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小島氏:
コミュニティの存在はマーケティングに非常に有効です。

AWSには「JAWS」というユーザーコミュニティがあります。
AWSサミットでは100セッションやってますが、ユーザーコミュニティが企画してるイベントでは50セッションぐらいやってるんですよね。

ユーザー自身で立ち上げて、Webサイトも作られています。
全国に支部があって、ほぼ毎週どこかの支部で勉強会をやっています。

これをまわしてるのがコミュニティです。
そもそもコミュニティってなんだという話ですが、私は粒度の問題かなと思います。
話の粒度が合う人が集まるところなのかなと。

コミュニティを形成することで、マーケターにとって何が良いのか。
まず、コミュニティが新しいお客様を獲得してくれるんですよね。

自分が好きなものってついつい語っちゃうと思うんですが、そこから派生して新規のお客様にリーチできる。
集客チャネルを使って自分でリーチしていくよりも、コミュニティを形成した方が良いんです。

これってBtoCビジネスでしか機能しなさそうなイメージがあるかもしれませんが、BtoBビジネスであるAWSでもうまく運営されています。

あとは、炎上ってたびたび話題になりますよね。
実際に被害が出ていれば真摯に対応するべきですが、誤解だったり噂だったりする場合も多いですよね。
でもコミュニティができていれば、正しい情報を流通して味方になってくれるんですよね。

コミュニティを通じて、より多くの方にリーチするという考えで形成していくと良いと思っています。

マーケターはコミュニティから得るものが大きい。

自走イベントの醸成に必要なのは、「商品力」と「企業からの働きかけ」

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徳力氏:
JAWSのような大きなイベントをユーザーがやってくれてるんですよね。ユーザーが自らがやりたいと思って動いたから1400名集まっちゃうという。

小島氏:
雪だるま式に来場者が増えていきますね。回を追うごとにどんどん会場が大きくなっていってます。

徳力氏:
普通逆ですよね。箱を借りて、そこを埋めるためにどう集客すればいいかを考えますから。
イベント主催者からすると、すごくうらやましい話ですよね。
そのような、自走するイベントを主催してもらうためのポイントはなんでしょう?

片山氏:
我々のサービスは出たばかりなんですが、ローンチする前にβ版を使っていただいたユーザー様ですごく良いと言っていただいた方をメインに形成されていったかんじですね。

徳力氏:
コミュニティ形成のために主催者側で誘導やサポートはしたんでしょうか?

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片山氏:
ユーザーグループを作りませんか、という提案はしました。それに乗ってくれた方に入っていただきました。
製品情報だけでなく、ユーザーが欲しいと思われる旬な情報を提供する場を作りました。

徳力氏:
宣伝したい気持ちをぐっとこらえてユーザーの役に立つことを優先するわけですね。
そもそも、ユーザーの発火点はどこなんでしょう。やはり商品の魅力でしょうか?

片山氏:
我々が重視しているのはそこですね。
実際に使っているユーザーが欲しいと言っていた機能を追加したり、魅力的と思ってもらえるようアップデートしていくことが重要。

小島氏:
みなさんが欲しい情報、欲しい場を提供していくというのが重要ですね。
ユーザーのメリットになっていれれば、より自分ごととして感じてくれる。
企業側のメリットを押し付けているのではうまくはいかないですよね。

徳力氏:
Amazonを利用しているユーザーがたくさんいるからうまくいくと思っていたけど、実はそうじゃないんですね。
むしろサイクルを回し続けていったからこそコミュニティを醸成できた。

自然発生に任せるというよりも、まずは企業が誘導して、ユーザーとの双方向性を持ちながら形成していくものなんですね。

イベント開催にはコミュニティ基盤の形成が大前提

徳力氏:
最近イベントが見直されているのって、ソーシャルで事前のコミュニケーションができたり、単発で終わらないような仕組みを作れるようになったというのもありますよね。

小島氏:
そうですね。大きな流れの中にイベントがあって、ソーシャルがあって、その中でユーザーサイドが主役になるような場が増えているなと思います。

徳力氏:
これからユーザーコミュニティーを作ろうと思う企業が、おそらくぶつかるであろう最大の課題とは?

片山氏:
ユーザーグループにいる方々の中に新しいサービスや価値を提供し続けることと、企業の人間もユーザーグループに呼んでいただけるような意識はもたないといけないなとは思います。
逆に面白い部分でもあるんですけどね。

徳力氏:
そういう方が社内に1人いるかどうかは大きいかもしれないですね。
どうすれば喜んでくれるかを考え続けることですね。

ただメッセンジャーではなく、ユーザーの意見をしっかり受け止める人がいると

小島氏:
役割が分散していてはだめですね。1人顔になる人間をおいておくことが必要。

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伊佐氏:
自走が理想とすると、「世代交代し続けられるか」という部分も課題だと思います。
長くやればやるほど、メンバーって固定化されやすくなるんですよね。

ある時期まではうまくいくんですが、その人たちがブランドを守りたいという気持ちが強くなったり、新しい人を受け入れなくなったりすると自走は難しくなる。
まずは理想を共有できるリーダーを見つけるのが重要です。

徳力氏:
でも、最初にそう思ったリーダーが実は全然違う考えをもっていたなんていうことはないんですか?

伊佐氏:
Kintoneカフェのユーザー事務局をやってくれている方が4名いますが、意外と齟齬はないですね。
あとは、上下関係をつくらないというのは意識しています。
リーダーはみんなが楽しくできているかどうかを確認する役割で、上も下もないという共通認識を持たせています・

徳力氏:
最後に、自走するイベントの価値を分かってくれない人を味方にするには?

小島氏:
価値の証明は難しいですけどね。
この話にのるかのらないかは、これからの社会でうまくやっていけるかどうかに関わってくるかなと思います。

まとめ

ユーザー自ら企画・運営する「自走イベント」は、多くのユーザー数を抱えるサービスでしか実現できないというイメージが強いかもしれません。
しかし、今回登壇された片山氏が所属するソラコムは、2015年9月から正式にリリースした比較的新しいサービスであるにも関わらず、既に自走イベントを展開しています。

登壇者の方々が話しているように、重要なのは知名度やユーザー数ではなく、商品力ときっかけ作り(コミュニケーション)でしょう。

ユーザーを惹きつける商品があることが前提です。